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君の為なら神さえも。  作者: 塩砂糖
第1章『異世界転移編』
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第39話『お金を稼ぐ方法』

 普通、興味がないなんて言われたら距離を置きそうなものだが、ユキはそうではないらしく、興味がないと言われたのをいいことに、リウスと接する時の距離感を考えなくなった。

 側からみれば、グッと距離が近づいたように見えるだろう。

 しかし、それは当然信頼からくるものではない。

 例えるなら、ライオンと相対すれば大抵の人間は恐怖ですくみあがるだろうが、柵一つ隔ててしまえば、途端に見て楽しむことが出来る。

 同様に、リウスとユキの間には透明な壁があるのだ。

 絶対に破られることのない、透明な壁が。

 ユキが信頼しているのはリウス自身ではなく、その透明な壁の方というわけだ。



 ◇◇◇◇◇



 正直、ユキとの添い寝を経験して、これより対応に困ることはそうそうないだろうと思っていたリウスだが、早くもその考えは改める必要がありそうだった。


「……ダメ?」


 上目遣いで尋ねてくるユキを見て、距離感を間違えたかと思わずにはいられない。

 そもそも、リウスは自分の本心を知られれば、ユキは自分を拒絶――までは言わないまでも、避けるようになるだろう、ぐらいのことは思っていた。予想とか想像とか理想とかそういう話ではなく、事実としてそうなるのが現実であると思っていた。

 しかし蓋を開けてみれば、ユキは自分に興味がないのをこれ幸いと捉え、好きなようにリウスを使い始め、それをリウスが拒絶しないのを良いことに、段々(だんだん)と遠慮がなくなってきた。

 頼めば何でもしてくれる都合の良い人とでも思っているのだろうか。

 もしそうなのであれば早急に正さなければならないと考えている理性とは裏腹に、まあ良いかと諦めている自分もいるのだから、こうなってしまった原因はリウスにもあると言えるだろう。


「……別に、良いけど」


「やったっ」


 ユキがリウスにしていたお願い事。それは、手を(つな)いで歩きたい、というものだった。

 既に添い寝した仲なのだ。手を繋ぐぐらい何を今更と思うかもしれないが、添い寝は2人きりでしか行われないのに対し、手を繋ぐという行為は公衆の場でも行われる。

 それを恥ずかしいと思う感性をリウスは持ち合わせていないが、問題はそこではなく、リウスとユキの2人が手を繋いで歩くと、ひたすらに目立つのだ。

 リウスの容姿は異世界においてそこまで目立つものではないが、ユキは人目を引くといって差し支えない整った容姿をしている。しかし、それだけならまだ良かった。本当に問題なのは、ユキが獣人であるということだ。

 街中に獣人は少なくない。頭から角を生やした人もいた。しかし、そういった者たちは皆一様に同じ種族同士で固まっていた。

 この世界において、種族の異なる者たちがどのような関係性を築いているのかは分からない。獣人が人間の店から物を買うのは珍しくなく、その逆も(しか)りだろう。

 だが、異種族同士が手を繋いで歩くほど仲が良い――リウスとユキの関係を仲良しと形容して良いのかはさておき――のは、この世界では珍しいらしい。


 いや、この世界でも、というべきだろう。

 異端、異質、異常、異形。周囲と違うものは迫害され、排除される。そして、馴染(なじ)み深い自分と同じものに囲まれて、安心感を得る。それは、どこでも、誰でも同じだ。

 人間だろうと、動物だろうと、変わらない。だから、異世界だろうと変わらないのだろう。


 ……なんて、リウスがネガティブなことを考えたのも数秒のこと。


「それじゃ、早く行こ?」


 自然にリウスの右手を左手で握ったユキは、目的地へと歩き始めた。

 二人がどこへ何をしに向かうのか。

 ことの発端は、数十分ほど前に(さかのぼ)る。


 ◇◇◇◇◇



 自分たちの家を買う。という目標を立てたリウスとユキだが、今すぐどうこうなるものでもない。適当に見つけてきた家を選んではい決定、とは当然ならないし、何よりリウスとユキはこの世界のことを何も知らない。

 ではどうしようかと二人で話し合った結果、住みたいと思えるような土地を探すため、そして何よりこの世界のことを知るため、世界各地を旅することとなった。目的というにはあまりにも大雑把(おおざっぱ)で、行き先すらも明確に決まってはいないが、それで構わない。何せ、時間だけは余るほどある。せいぜい好きなだけ見て回ることに決めた。

 しかし、目的を達成する手段を選び終わったことで、細かな問題も浮上した。

 いくつか浮かび上がった問題の一つ。もっともこれは、浮かび上がるより早く(すく)い上げていたというか、今更すぎて問題として捉えていないというか、そもそも家を買うという目的を設定する理由になった問題というか、そういうものだった。

 要は、金銭問題である。

 家を買おうという話になったのは、元を辿(たど)れば宿泊代が(かさ)むからだ。

 では宿泊代節約のため、住む場所を探す旅に出ようと決めても、その旅にだってお金はかかる。

 さらには、住みたい土地が見つかり家を買おうとなったとして、そこでも当然購入する以上はお金がかかる。


 地獄の沙汰も金次第。この言葉の意味を改めて実感させられるところだ。

 今のところ、当面の生活に困らないだけの金はある。

 しかし、収入がないままひたすら出費していけば、いずれ底を突く。

 つまり、家を探すにしても、買うにしても、旅をするにしても、まず解決しなければならないのは、収入のない現状というわけだ。


 そこで、リウスとユキの二人は冒険者ギルドにやってきた。といっても、ただ上の階にある宿から降りてきただけだが。


 冒険者ギルドは、様々(さまざま)な役割を持つ複合組織だ。この世界で最も大きな組織と言っても過言ではない。

 ここの冒険者ギルドの二階から上が宿になっているように、宿屋をはじめとして、飲食店や武具屋、道具屋などを経営しているほか、銀行としての役割も持つ。

 そして何より、冒険者ギルド最大の業務は、外部から持ち込まれる仕事を依頼として他者――主に冒険者――に斡旋(あっせん)する仲介業だ。


 リウスたちは収入源として、冒険者ギルドが仲介する依頼達成の報酬に目を付けた。

 今日は、依頼とはどんなものなのかを体験するためにここへ来たのだ。

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