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君の為なら神さえも。  作者: 塩砂糖
第1章『異世界転移編』
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第19話『年齢』

「お待たせしました。ご用件は冒険者登録でお間違いありませんか?」


「あ、はい。それで大丈夫です」


「では、こちらの用紙に必要事項の記入をお願いします」


 先ほどのサラという受付嬢とは比べ物にならない手際の良さだ。とは言っても、ただ用紙を用意しただけなのだが。


「代筆は必要ですか?」


 問われたリウスは差し出された用紙を見つめながら思考する。


 言葉は通じた。文字も読めた。しかし筆記はどうなのだろう。


 読み書きは基本的に一括りにされることが多いが、イコールで繋ぐことが出来るものではない。


 例えば、アルファベットが書けるからと言って英語が読めるとは限らない。漢字を読めるからと言ってその漢字を書けるとは限らない。


 それは、この世界でも同じなのだろうか。


 文字が読めて、単語の意味が分かり、文章を理解出来ても、それが文字を書けることの証明にはならない。


「いえ、大丈夫です」


 結果としてリウスは、この世界の「システム」に身を委ねることにした。


 言語というものに関するこの世界の仕組みが、筆記にも適用されることを願って。


 用紙と共に渡されたペンは羽ペンほど古風なものではなかったが、ボールペンに慣れたリウスたちからすれば古さを感じてしまう、筆記の度にペン先にインクをつけなければならない金属で出来たペンだ。


 用紙の記入要項は「名前」「年齢」「性別」「魔術が使用可能か否か」の四つ。


 案外記入項目が少ないことに驚くが、考えてみれば日本で同じような用紙を記入する際に必須記入だった電話番号やメールアドレスがこの世界には存在しない。多少少なく感じるのはある意味当然か。


 ペンを握って紙に向かう。ここまで来てもあまり文字が書けるイメージが湧いてこないが、物は試しだとペン先をインクに浸け、紙にペンを走らせる。


 結果としては、文字を書くことは出来た。

 だが、何故書けるのかは分からなかった。


 感覚としては、うろ覚えの英単語を勢いで書いてみたら偶々スペルが合っていた、という感じか。


 だが、書けるのであれば今はそれでいい。誰かに文字を教えようという訳ではないのだから。


 名前はこの世界で名乗ることにした「リウス」

 年齢は実年齢の「26歳」

 性別は当然「男性」

 魔術は使用出来るの項目に丸を付けておいた。


 記入した項目に間違いがないことを確認したのち、リウスは用紙をミュエに手渡し、使っていたペンをユキに回した。


 ペンを手にしたユキは、勝手に手が文字を記していく不思議な感覚に首を傾げながらも、必要事項を記入していった。


 ユキが記入していくのをなんとなしに眺めていたリウスは、特に意識するでもなく口を開く。


「ユキって、23歳なんだな」


「うん。意外だった?」


「まぁ、正直に言えば。もう少し若いと思ってたから」


「そ、そうだったんだ……ちなみに、何歳ぐらいだと思ってたの?」


「何歳に見えるって考えたことはないけど、イメージは20歳ぐらいだったかな。下手したら未成年って線もあるんじゃないかと」


「それは流石に言い過ぎだよ。お世辞入ってるでしょ?」


「そんなつもりはないんだけどな……」


 お世辞として流されてしまったことに苦笑いするリウスは、用紙記入の為に下を向いていたユキの顔が紅潮していることに気づくことはなかった。

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