第20話『ギルドカード』
「――はい。記入漏れはありませんね。それでは、記載された情報を元にギルドカードを作成させて頂きます。発行料として銀貨が一枚必要ですが宜しいですか?」
やっぱり発行料はかかるんだな、と思いつつリウスはアイテムボックスから銀貨を二枚取り出し、ミュエに手渡した。
「それでは、少々お待ちください」
書類を持ってミュエは後ろのドアに消えていく。
「……はぁ」
特に何かした訳ではないのだが、妙な疲れを感じて静かに息を吐く。
――コミュニケーション能力はそんなに低くない筈なんだけどな。
まだ知り合いと言えるユキ相手であればここまで気疲れはしないのだが、完全に初対面の相手との会話は、人と関わること自体が久しいリウスにとって精神的に体力を使う行為だった。
そういう意味では、今のこの環境はいいリハビリになるかも知れない。何も分からないこの世界では、嫌でも人と会話する必要が出てくるだろうから。
「ねぇ、リウス。この後はどうするの?」
ミュエを待つ間、リウスとユキは今後について話し合うことにした。
「お金が使えるなら、急いで仕事をする必要はないよね?」
「まぁ、今の所はね。取り敢えずは何処かで宿を取ろうと思ってるけど――」
そんな会話をしていると、リウスの想像よりも大分早くミュエが受付に戻ってきた。
「お待たせしました。こちらがギルドカードになります」
そう言ってミュエが二人に一枚ずつカードを渡す。手渡されたそれは、名刺ぐらいの大きさで、淡い緑色をした鉱石で出来ていた。
「これが……ギルドカード?」
ユキが疑問の声を漏らすのも無理はない。
渡されたそれは、確かにカードの形をしていた。しかし、それだけだ。
特別何かが描かれている訳でも、先ほど用紙に記入した情報が載っている訳でもなく、ただカードの形をしているだけだ。
「はい。ギルドカードは登録者の魔力を流すことで初めて記載された情報が確認出来るようになっています。
現在そのカードは発行されたばかりですので、使用者の登録がされていない状態です。試しに魔力を流してみて下さい」
言われて、リウスはギルドカードに魔力を流す。
森で一度魔法を使った為か、魔力を流すという珍妙な行為を難なくこなすことが出来た。
感覚としては、冷たい飲み物を飲んだ時、ひんやりしたものが喉を流れていくのが分かるあの感覚に近いかも知れない。実際は特に温度は感じないのだが、体の中を何かが通っていく感覚は正直あまり心地良いものではない。鳥肌が立つのを抑えるのは慣れるまで難しそうだ。
魔力を流されたギルドカードに文字が浮かび上がる。夜光石が発する様な淡い白色の光で浮かび上がる文字は、確かに先ほど用紙に記入した情報と一致していた。
ギルドカードの裏面には、冒険者ギルドの紋章なのだろうか、剣と盾のマークが浮かび上がっていた。
ふと、リウスが横にいるユキに目を向けると、未だにギルドカードを睨みつけながら――容姿の所為で愛らしさが勝ってしまっているが――四苦八苦していた。
「リウス……魔力を流すって、どうやるの……?」
「えっと……魔法の使い方は分かるよな?」
「い、一応」
「だったら魔法を使う……まではいかなくても、発動直前ぐらいまでやれば体の中の魔力を認識しやすくなると思う」
「な、なるほど……ちょっと、やってみるね」
ユキが自分のギルドカードに魔力を流せる様になったのは、それから約一時間後のことだった。
さて、今回で第20話ですがまだまだ第1章の終わりは見えてきません。
もうちょいテンポよく進めていきたいですねぇ。




