シルフィーと精霊契約
これから忙しくなるので投稿が2、3日に1話になると思います。が、頑張れば1日1話できそうですが…。
あれから数日
私はとある街の外れの丘に来ている。パパの仕事の手伝いで。理由は簡単。パパの仕事は力を使うから身体能力強化に適している。それだけ。
「パパ、もう出ていい?」
「いいぞ」
ズズズズ……よいしょっと。
「木材どうする?」
「全部出してまとめておいてくれ」
現在パパは依頼された家の設計図を覚えているところ。造っている間は見ないらしい。
ズズズズ………ドスン!
こうなると思って移動中にまとめておいたんだよね。
「じゃあ、今度はそれを手前に10、奥に20、真ん中に10で置いて来てくれ」
「わかった」
「1本ずつだぞ、楽するなよ」
相変わらず設計図を見たままだ。まあ、トレーニングと手伝いできて、一石二鳥だよ。役に立ってる。
「シルフィー、危ないからヘルメットするんだぞ」
「もうしてる。大丈夫だよ」
「気をつけるんだぞ。怪我をしないこともそうだが、木材に傷をつけないようにな」
………結構きつい。持ち上げる、走る、置く、走る、の繰り返し。時間はかかっていないけど、普段使わない筋肉が痛い。
「ありがとな、少し休め。水分補給して少し寝るといい。そこの木の下がいいだろ」
「うん、そうさせてもらう。15分後に戻るね」
「ちゃんと目を覚ましてからこいよ?」
「じゃあ、行ってくるぅ〜」
「ふあぁ、よし!時間通り」
どこまで進んだか…な?さっきまで木材だけだった。今は骨組みがほぼできている。早くない?早すぎない?
「戻ったよぉ〜。何すればいいの?」
「そこの木材1本投げてくれ」
これかな?せー……の!
「さんきゅ」
届いた。よかったぁ〜。今日はずっとこれかな?木材はあと15本。つまり15回投げることになる。肩痛くなりそう。
「よし。じゃあ、いつも通り頼むぜ」
そう言ってパパは木の実を取り出し精霊に渡した。
『リョウカイシタ。マモレ!タエヨ!』
何をしているかというと、骨組みの耐久性と木を食べる生物を寄せ付けない効果を与えている。これがパパの仕事のいいところ。精霊ってなんでもできそう。でもなんでもはできないらしい。
『オワッタ。コレデイイカ?』
「バッチリだ。ありがとな」
「この後はどうするの?」
「今日は骨組みを特殊な布で隠して終わりだ」
「わかった」
家に帰り、昼食を済ませ気分転換に森を散歩していた。木々の間から差し込む日の光がぽかぽかして気持ちいい。いつもと違うとこに行ってみようかなぁ。
『ダレジャ。ソレイジョウ、チカヅクナ!』
「うわぁ、いきなり大きな声出さないでよぉ〜」
『オンナカ。エルフダガ、エルフデハナイナ』
「うん。森霊族と吸血族の娘だよ。見た目は吸血族だけどちゃんと森霊族の血も流れてるよ。証拠は、あなたと話せる」
『メズラシイナ。ナニカヨウカ?』
「散歩してただけ。あなた何やってるの?」
『ナニモシテハオラン」
「普通精霊は用があってこっちに来るよね?」
『ソウダナ。ワシハチガウガナ』
「何かあったの?帰れないとか?」
『ハナセバナガクナル、キイテクレルカ?」
「いいよ。聞いたげる」
『ソウダナ、ドコカラハナスカ…。」
『トイウワケダ』
「つまり、力が強大すぎて異端として精霊界を追放された。合ってる?」
『ウム』
この精霊、使える効果が多すぎて追い出されたらしい。風、雨、雪、火、雷など、まだまだある。こんなに使えたら精霊界のバランスが取れなくなるんだって。パパの精霊は防御や回復の効果が使えるけど異端じゃない。
「で?これからどうするの?」
『ワカラナイ。アテモナク、サマヨウダロウナ』
そんなことできない。精霊は力が極端に弱い。木の実を取ることができないくらいに。だから森霊族と関係を築いて生きてきた。精霊は1人では生きていけない。
「ねぇ。私と契約しない?」
『ワシトオマエガ、ケイヤクダト?』
「そう、ちょうど私は契約する精霊を探しているの。木の実は提供できるし、お話もできる。どお?」
『ソンナノ、エルフハミナデキルゾ」
「そっかぁ。足りないかぁ」
『トキニオヌシ、バレットヲシッテイルカ?」
「うん、知ってる。パパの事だよね」
『ナント!ソウデアッタカ。ムスメデアッタカ」
「知ってるの?」
『ムカシ、タスケラレテナ。オンガエシガシタイノダ」
「それなら娘の私でも、恩返しをしたことになるんじゃない?」
『ミカタヲカエレバ、ソウジャナ』
「私ね、旅をするのよ。そのための条件に精霊との契約があるの。あなたの知識と力は私に必要。私のできる限りのことをするから、契約しない?」
『フム、タビカ。オモシロソウジャノ。バレットヘノオンガエシニナルナラバ、シテヤッテモヨイゾ』
「ほんとに?」
『ウソ、ツクヒツヨウガアルカ?セイレイハ、キョウミノアルモノニ、ツイテク。ワシモ、ソノセイレイ』
「つまり受けてくれるのね。ありがとう」
『デハ、ハジメヨウ』
「でも私やり方わかんないや」
『オシエヨウ』
「我、シルフィー・フォン・ヴァレスフィアの名において、汝との契約を開始する。汝、名を申せ」
『グラント』
「汝グラントよ。我シルフィーに従うと誓うか」
『チカウ』
「汝の全てを貸し与えると誓うか」
『チカウ』
「我も誓おう。これより互いの血を飲み契約完了とする」
飲むと言ってもたった一滴口にするだけ。
「契約完了」
「これでいいの?ちょっと恥ずかしかったんだけど」
『ケイヤクハセイリツシタ。コレカラ、ヨロシク。アルジサマ』
「シルフィーでいいよ。よろしくねグラント」
『バレットニアイタイ』
「いいよ。こっちだよ」
「ただいまぁ〜。パパいる?」
「バレットは部屋で寝てるわよ」
「わかった」
「パパ起きて」
「んあ?シルフィーか…どした?」
「グラントって覚えてる?精霊の」
「ああ、グラントがどうかしたのか?」
「連れてきた」
『ヒサシブリ、バレット。オンヲカエシニキタ』
「おお〜、元気してたか?久しぶりだなぁ」
2人きりにしてあげよう。話したいこともたくさんあるはずだしね。
「なにぃ!?シルフィーと契約したのか?何があったんだ?」
『セツメイシタトオリジャヨ』
「娘の成長が早すぎて落ち着けねぇや」
『バレットノムスメダ。トウゼンジャロウ?』
「誇ればいいんだよな。娘に抜かれていく日はそう遠くないな。そういえば、恩返しとか言ってたな。娘と契約するのが恩返しなのか?」
『ケイヤクシテカラモ、オンガエシ」
「ありがたいな。知らない奴と契約されるよりマシだよ。ありがとなグラント」
『バレットヨ。シルフィーハ、チシキガタリテナイ』
「わかってる。グラントに頼んでもいいか?」
『ソノツモリ』
「よろしく頼む」
「終わった?」
「ああ。シルフィー、ちょっといいか?」
「なに?」
「グラントに勉強を教えてもらいなさい」
「え?なんで?」
「旅に出るんだろ?知識がないと恥をかくぞ?グラントは長いこと生きてるから、教えるのに適してるんだよ」
「うん、じゃあよろしくねグラント」
『ショウチシタ』
新登場の精霊グラントですが、軽く500年は生きてます。口調がおじいさんですが年老いた訳ではなく、元からです。