シルフィーと影
忙しくても隙間時間に書けばいけるものですね。
「今日は、影の中で身体を操る特訓ね」
昼食後の満腹感と眠気で少し横になりたい。食後すぐは動けないよ。
「うう〜……と言われてもねぇ〜。どうやるの?」
「あら、いつもやってるじゃない。影の中から話したり、視覚と聴覚の共有をしたり。あれの延長よ」
「あれは、操ると言わないんじゃない?」
「自分の意のままに動かすことが操るという訳じゃないのよ?味覚、嗅覚、触覚、やろうと思えば五感は感じることができるの。これも立派に『操る』なのよ?」
「ママで試せばいいの?」
「バレットで試しなさい、私も入って指導してあげる」
「パパいないけど」
「ちょっと待ってね」
ズズズズ……ドサッ。
「いてて、嫌だ!あれだけは絶対に嫌だ!」
「シルフィーのためよ?つべこべ言わないで協力してあげなさい?」
なんかママの笑顔が怖い。パパの顔を見る限り、過去にママに何かされたんだろうなぁ。
「大人しくしなさい!」ズズ…。
「うぐ、い、いやだぁぁ!」
ママが影に手を入れた瞬間にパパの動きが止まった。ママがパパの自由を奪った、が正しいのかな?
「さあシルフィー、入りなさい」
「パパごめんね」
「やめてくれぇぇ!」
「ママ、操るって感覚を共有すること?」
「そうよ。バレットと私は一心同体、全ての感覚を共有し合っている。そう考えればいいのよ」
「やってみる」
試しに腕を動かしてみよう。私の腕はパパの腕。パパの腕は私の腕。なんとなく繋がった気がする。動くかな?
「ぐぐぐ、いつになっても気持ち悪い。身体をモヤモヤしたものが走り回るような……。ぞわぞわする。動きより感覚の共有の方がましだ!」
動いた。ぐーぱーぐーぱーちょき。ブンブン!
「腕だけやったのね。少し重く感じない?」
「うん、いつもよりちょっと重いくらい」
「それがバレットの抵抗よ。抵抗がなくなると普段と同じ軽さで動かせるわよ」
「面白いね。ママ全身縛ってるでしょ?代わってくれない?」
「難しいわよ?抑えられなかったら、逆にシルフィーがバレットの動きをすることになるわ。そうなると失敗ね」
「大丈夫。コツは掴んだ…気がする」
「じゃあ、やってみなさい」
「ん?縛り方が代わった?もしかして今シルフィーが縛ってるのか?」
『そうだよ。違いがあるの?』
「ぞわぞわした感覚がないな。縛りは強いが不快感がない」
『へぇー、ママと何が違うんだろう。こうかな?』
「うわぁ、やめろ再現するな!気持ち悪い!」
『ママ、できた。いつもこんな感じなの?』
『ええそうよ。縛られてるバレットの表情がたまらなく可愛いのよ』
「そんなことをシルフィーに言うなぁ〜!」
変なことを聞いた気がする。気にしないでおこう。次は走ってみようかな。念のためにさっきの縛り方で行こう。
「なんだ?走るのか?お願いだから転ばないようにしてくれよ?ぞわぞわが消えた。優しいなシルフィー」
『私が優しくないみたいな言い方ね』
「そんなこと言ってないだろ」
走れた。ジャンプ、蹴り、うまくできる。
「ママ、これ以上何すればいい?」
「十分よ。理解が早くて驚いたわ。次は難易度が上がるから覚悟してね」
「がんばる!」
「と言っても、今日はおしまいよ。しばらくこれをいろんな人で試して、慣れなくちゃね」
「次は、シルフィーなら簡単かもね」
「霧化?影の遣い?」
「影の遣いよ。私が見せた影鳥以外にもできるわよ。想像して、影として具現化する。例えば……。」
ズズズ……。
いっぱい出てきた。犬、猫、猪、馬、鳥、蛇まだまだ出てくる。
「実際にその動物を見るのが早いのよねぇ。そうだ。人族の店にいいところがあるわ。そこに行くわよ」
「え?今からどうやって?」
「影を移動して。これも特訓よ。使えるものは使わなくちゃね」
影の移動は簡単だった。影を水だと思えば、あとは泳ぐだけ。実際には泳ぐ動作はしてないんだけど。
「ここよ」
「なに?ここ、どうぶつえん?」
「そうよ。人族が飼ってる動物たちを見せ物にしてる娯楽施設よ。と言っても、中はその動物が住んでる場所を再現してるから自然体の姿を見られるわ」
「へぇ〜。いっぱいいるね。さっき見たの以外にもたくさんいる」
「しっかり見て、記憶しておくのよ。だいたい具現化して動くようになったらこの特訓は終了だから」
「覚えられるかな?」
「覚えるじゃなくて、この場所を楽しめばいいのよ。楽しい記憶はずっと残るものなのよ」
「そっか。じゃあ、あっちから見て回ろう!」
「あらあら、走っちゃダメよ?」
人族は動物を飼うのが上手だとグラントから聞いた。今もグラントの説明を受けながら見て回ってる。
「あれは?鳥でもいろんなのがいるけど」
『ペリカン、トヨバレテイル。クチノヨウリョウガ、オオキクテ、タベモノヲタメテ、コドモニトドケタリデキル』
「へぇ〜。なんでも知ってるね。グラントと契約できて良かったぁ」
『ナガクイキテレバ、シゼントチシキモ、フエルモノサ』
「じゃああれは?こっちは?」
『イッペンニキクデナイ!ジュンバンニ、セツメイシテヤル』
「はあ〜、楽しかったぁ」
「良かったわ。影の遣いは記憶と想像で生み出せる。鮮明なほど本物に近づくわ。練習してできるようになったら見せてね」
「うん。すっごいの見せてあげるよ」
「楽しみだわ。さあ、帰りましょうか」
その夜
「ねえグラント。勉強もいいけど睡眠も大事だと思わない?」
『ネルマエニベンキョウシテ、ネテルアイダニ、ジョウホウノセイリヲスル』
「そうすれば身につくって言いたいんでしょ?」
『ソウダナ』
「その睡眠時間を減らしても意味ないと思うんだよね」
『ジュウジニ、ネレバイイ。マダクジダ。ガンバレ』
「うわ〜ん。グラントの鬼ぃ〜!」
『ヨワネハイテドウスル』
「いってみただけよ」
動物園はシルフィーたちの家から西に5キロメートルくらいのところにあります。




