友達再び
寝落ちって怖いですね。
リリィたちと別れてから数時間がたった頃。
「お前か?うちの商品逃したのは」
突然現れた男。強面で筋骨隆々な狼の獣族。
「何のことかな?」
「惚けんな!うちの檻から森霊族の2人を逃したのはおまえだろ」
あ、この人あれだ。奴隷商人だ。後ろにさっきの人たちがいるから、偉い人?たぶんあの鼻だよね。あれで追ってきたんだよね。
「まあ、そうだね。私たちだよ」
「よくもやってくれたな!あれはいい値がついてたんだよ!それを台無しに………」
「いやーなんかごめんね。でもさぁ、奴隷商売とか良くないと思うんだよね。いくら儲かるとはいえねぇ」
「てめぇよ。ふざけてんのか?さっきからヘラヘラしやがってよ」
「いやいや、ふざけてなんかないよ。真面目だよ」
「てかこの際そんなこと、どうでもいいんだよ!問題は今回の損失をどうしてもらうかなんだよ!」
相当怒ってらっしゃるようで。今にも襲われそうな勢いで話してくるから、ちょっと怖い。見た目もあれだし。
「私たちにどうして欲しいの?」
「あの商品を連れ戻す。もしくはお前たちが代わりになる」
「その2択?それはできないかな。せっかく助けたのに戻れとか言えないし、私は奴隷とかなりたくないし。どっちも嫌です!」
「どっちか選ぶんだよ!できないってんなら、強引にやらせてもらうぞ。おいてめえら!行け!」
やっぱりこうなる。でもさっきの人たちだし、問題はないでしょ。
問題なかった。残すは偉い人?だけなんだけど。
「おじさんもやる?手加減しないよ」
「舐められたもんだな。こいつらが弱いだけなんだよな!!」
速い!さすが獣族、身体能力が高い。でも、追えないわけではない。
「おじさんできる人だね」
「上から目線がイラつくんだよ。経験の差を教えてやるよ」
確かに、蹴りもパンチも全部ガードされて、攻撃パターンも読まれてる。
「さっきから、そこの人魚はなんもしねえな。役に立たせてやるよ!」
「いや、離して!痛い!」
しまった。セラのこと忘れてた。
「人質とは卑怯な!」
「卑怯で結構。こうやって、平和的に解決できるんだ。へへ、どうだ?やる気になったか?」
ぐぬぬ。変に断るとセラに何されるかわからないし。ここは……
『ワシノ出番ジャナ』
『うん、どうにかして』
『見タトコロ、セラヲマッタク警戒シテイナイ。ナラバ、セラニヤラセヨウ』
なにさせる気だろう。
『シルフィーニ合図送ルカラ、セラニ攻撃サセルヨウニ言ッテクレ』
『わかった』
ん?アイコンタクト?なになに?グラントが何かするから、おじさんに攻撃をして。あれでも試してみようかな。
『身体能力強化。サラニ強化』
力が湧いてきた、気がする。よし、これでいけるかな。せーの!
グラントが何かかけた。私はおじさんの注意を引けばいいかな?
「おじさん!私にはやっぱり選べない!ていうか選びたくない!」
「ではこの人魚はどうなってもいいんだな?」
「よくない!セラは渡さない!」
セラが動く。身体の鱗の部分がキュッと縮んで、硬くなっているようだ。そのままヒレを前に出して……。
バチンッ!ドカーン!!
セラのヒレでおじさんが吹き飛んだ。セラってあんなに強かったっけ?
「うぐぁ、なんだ、なにが起きた?いきなり、人魚が……」
「人魚族だからって、甘く見ないでください!」
そのままおじさんは気を失った。
その後、兵隊さんにおじさんを渡して今回の件は丸く収まった。
宿にて
「ねえセラ。さっきのやつどうやったの?」
「うんとねえ。私って鱗があるでしょ?この鱗って硬さを変えられるのよ。それで、最大まで硬くしてから振ったの。一瞬でできるから隙は少ないと思うよ」
「それだけで強力になっちゃうんだから恐ろしいよ」
「人魚族のヒレは元から強くできてるからね。あとグラントもいたし」
「それでもだよ。あのおじさん肋骨数本折れてると思うよ」
「いいじゃない。あんな奴どうだって。それよりシルフィーに怪我がなくてよかった」
「パパよりは弱かったからね」
「バレットさんって何者なんだろう」
「竜族のドラゴン型と引き分けだったってママが言ってた」
「竜族と闘ったんだあの人。シルフィーの家族って飛び抜けた実力の人たちだよね」
「そうなの?みんな同じじゃないの?」
「そんなわけないでしょ。私の家族はみんな平凡……じゃないわね」
「もしかしてジーブさん?」
「うん。お父さんも竜族のドラゴン型の水龍と闘ったって」
「うちは飛龍だって」
どうやら私たちの家族は他人から見ると異常らしい。
『雑談スルノハイイガ、レージュノ所ニ行クンジャロ?』
「そうだった。早く行かなきゃ」
「シルフィー、全力出していいからすぐに帰ってこようよ」
「いいの?セラ影に入れて行くけど」
「構わないよ。同じ道をゆっくり何度も見ても変わらないわよ。この街の先にも行かなきゃだし」
「そっか。じゃあそうする。ここからだと1時間で着くよ」
「ねえ、夜で影薄いけど入れるの?」
「グラントがいるじゃない」
『ワシニ1時間同ジ場所ヲ保チナガラ移動シロト!?」
「木の実いっぱい出すから」
『ヨシ引キ受ケタ』
グラントの中で木ノ実ってどれくらいの価値なんだろう。
「それじゃあ出発しよう。今日中に戻るからね」
「うん、よろしく」
感覚で言ったけど、本当に1時間で着いてしまった。
「やあ、レージュおじいちゃん。無事に終わったよ」
『オオ、戻ッタカ。ヨクヤッテクレタ。アリガトウ』
「ねえ、私頑張ったよ。何かないの?ねえねえ」
『オオウ、ソレハ困ッタナ。何カアッタカ……』
『マタ加護デイインジャナイカ?』
『加護カ。ウム、人ノ名前ト性別、種族ガワカルヤツハドウカナ?』
「正直いらない」
『即答デ断ラレタ。デハ何ガイインダ?』
「そうだね〜。植物、動物が食べられるか食べられないか。毒を持つか持たないか。がわかるようになるやつで」
『ソウキタカ。マアイイ、ヤッテヤロウ』
「やった〜。レージュおじいちゃんすごいね」
『ドウッテコトナイ。コノ前ト同ジヨウニシナサイ』
この前?ああ、触ればいいのか。
『汝ラニ加護ヲ』
すごい省略されてる気が…。
『近クノ草ヲ見テミナサイ』
「おお〜わかるぅ〜。ありがとうレージュおじいちゃん」
『礼ヲシタノハ我デアルノニ感謝サレルトハ』
これで旅の途中の食料調達に問題はなくなる。もうお腹壊さなくていいんだぁ。
「あの、私までありがとうございます」
『イイッテコトヨ』
「それで?そこで何してんの?出てきなよ」
「え?誰かいるの?」
「リリィでしょ?そんなとこに隠れて」
「なんで見つかったの?ちゃんと隠れてたの」
なんでってチラチラ見えてたし。
「で、リリィはなんでここにいるの?」
「あのね。リリィはシルフィーとセラ姉と一緒にいたいの。パパとママはいいよって言ってくれたの」
「うん、まあ来るとは思ってたけど…。早かったね」
「頑張ったの」
「よく許可されたわね」
「うん、助けてくれた恩人なら問題ないって」
『私モツイテイルノデ、大丈夫デス』
絶対帰りがけの馬の上での話だよね。じゃないとこんな早くに来れないし。
「うん、いいよ。一緒に行こう」
「よろしくねリリィ」
「よろしくなの!」
『ヨロシクオ願イシマス』
リリィとリムが仲間になった。
『賑ヤカニナルナ』
『我モ行キタイ』
『動ケナイダロ。アト、レージュガ仕事放棄シタラバランスガ崩レル』
『ソレクライ知ッテル。チョット言ッテミタダケダ』
『割ト本気デ言ッテイタヨウナ』
『ダッテ、羨マシインダモン。変ワレヨグラント』
『嫌ダ。ワシハ縛ラレタクナイ』
『我ダッテ好キデ縛ラレテルワケジャナイ』
『面倒ジャノオ』
レージュおじいちゃんに挨拶して宿に戻った。本当に今日中に戻れた。さすがに疲れたよ。
「もう寝よう。疲れた。おやすみぃ」
「あ、もう早いなあ。仕方ないか」
「リリィ、お風呂行こうか」
「シルフィーは大丈夫なの?風邪引かないの?」
「大丈夫よ。起きたらお風呂に行かせるし、体調崩したとこあまり見ないし」
「そうなの?でも、心配なの」
「リリィも風邪引かないか心配なんだけど」
「セラ姉の心配を増やしたくないの。お風呂先に行ってるの」
「え?そんなつもりじゃ……行っちゃった」
『リムヲ見テマスノデ、ユックリ来テクダサイ』
『ワシモ風呂ニ行ク』
「みんな行っちゃった。ってことはシルフィーと2人っきり?え、どうしよう。シルフィーは寝てるし、こうなったらなかなか起きないし。何してもいいのかな?いやいや寝込みを襲うとかないない。でも、…ね。ちょっとだけなら……」
チュッ。
きゃあ〜2回目しちゃった〜。唇にしちゃった。柔らかかったなあ。はぁ〜なんでシルフィーって可愛いのかしら。寝顔がたまらないのよねぇ。ああ〜顔が熱い、ドキドキが止まらない。どうしようニヤニヤしちゃうぅ〜。こんな顔みんなに見せられないよぉ〜。
「セラ、何してんの?」
はっ、見られた?今の全部見られた?
「あはは。な、なんでもないわよ。これからお風呂に行くとこなの。シルフィー疲れてるでしょ?明日の朝お風呂に入ればいいから寝ていいよ」
「そうなんだ。いってらっしゃい。おやすみ」
「おやすみ〜」
よかった〜。気づいてなかったぁ〜。別にバレても構わないけど、そうなると恥ずかしいから…とにかく助かった。お風呂行こう。
やっと行った。寝たふりしたらセラがいきなりキスして来るから焦ったよぉ〜。2回目奪われちゃった。思い出したら恥ずかしくなってきた。触れた時ちょっと動いちゃったんだよね。気づかれてないよね?目瞑ってると触覚が敏感になるからピクッてなっちゃって。いつものセラもいいけど、あんなセラも可愛いよね。悶えてるセラも良かった。ニヤけてなかったかな?暑い。なんか急に火照ってきた。寝られないかもしれない。起きてお風呂に行こうかな。でもどうしよう〜。
などと考えて2人とも眠れませんでした。
やあ皆元気かな?私か?私は最初の1ページにいた私だよ。いやー友達のぬるま湯が出てって言うから仕方なく来たんだけど。皆楽しんで読んでくれてるかな?私は言ったとおり登場しないけど、これからここで喋らせてもらうからよろしくね。言っておくけどレージュじゃないよ。ん?長い?ごめんごめん。じゃ、あと一言だけ。これからもよろしくね!




