雨の街・プレガーレ
都合により遅くなってしまいました。いつもより長く書きました。
あれから休憩と移動を続けて予定通りに街に着いた。
「ここがプレガーレかぁ。想像と違うね」
「雨が降ってないの」
雨の街と言われるくらいだから、ずっと降ってるものだと思ってた。でも、実際は雨は降っていない。いや違う、この街の真ん中と外側は降っている。
『雨ノ街ジャッタヨ、昔ハナ。ホレ、ソコニ雨止ミノ花畑ニアッタ花ガ咲イテルジャロ。コノ街ノ者達ハ花ヲ同ジ場所ニズット咲カセルコトニ成功シタンジャヨ』
なるほど、それで雨の降るところ、降らないところに分けているのか。花畑と違って一面に咲かないから真ん中に水もたまらない。考えたなぁ昔の人。
「で?居場所を教えてくれる変態さんは?」
『奴ハ日没後ニシカ姿ヲ見セナイ。今行ッテモ会エナイゾ』
「そっか、じゃあ宿を探そうよ。一休みしたいし」
「そうね。見える範囲だと全部泊まれるわ。種族も関係ないみたい」
「あの、リリィはお金持ってないの」
「大丈夫よ。私達が出してあげるから」
「いいの?」
「もちろん」
「ありがとうなの!」
「とりあえず探しに行こう」
「1部屋3人で泊まりたいんだけど」
「お1人様銀貨6枚です」
どの宿もだいたいこれくらいだった。
「はい、銀貨18枚ちょうど」
「確かに。朝食と夕食は用意します。お風呂は大浴場だけです。人魚族の方も楽に移動できる水路を設置しているので、見てのとおりとても広い造りになっています。迷わないように気をつけてください」
「ありがとうございます」
「終わった?」
「うん。広いから迷わないでね、だって」
「リリィはリムがいるから大丈夫なの」
「そんなに複雑じゃないと思うよ。水路も中央から各部屋の前まで流れてるみたいだし」
「まあ大丈夫でしょ。それじゃあ、部屋に行こう!」
「お~!なの」
「気合い入れなくてもいいわよ」
部屋は広くてとても居心地が良い。ベッドもふかふか、久しぶりだなぁ〜。
「セラ、リリィ、お風呂行こうよ。汚れを洗い流してからゆっくりした方がいいよ」
「そうね。行きましょうか」
「お風呂行くの。リリィお風呂大好きなの」
「お2人は?」
『ワシハイツモ通リデ』
『リムハ、リリィノ面倒ヲ見マス』
「わかった。よし!レッツお風呂!いざ、大浴場へ」
と言って来たのはいいんだけど……大浴場すぎる。とにかく大きい。それと、昼だから人が少なくてほぼ貸し切り状態。泳げるよ、思いっきり。泳がないけど。
「ここまで広いと落ち着かなくなるね」
「全然人がいないわね。ラッキーだわ」
「リム、広いよ。大っきいよ。初めて来たの」
『ソンナニハシャガナイデ。転ビマスヨ。マズハ身体ヲ洗ッテカラデス』
「わかってるの」
「ふう〜。あったか〜い」
「だねぇ〜」
「さいこうなの〜」
今までの疲れが取れていく。目の前には大きなプレガーレの風景画が描かれている。
そして、隣にはお湯に浮かぶ二つのたわわ。……幸せ。
「こら、また変な目でこっち見て」
「変な目じゃないよ。真剣な目だよ」
「どっちもこの場合は一緒よ」
セラのガードが少し硬くなった気がする。そのうちなくなるだろう。それよりも今は私の前にいるリリィだ。
「リリィって胸どれくらいあるの?」
「いきなり揉まない!?シルフィー、成長したのね。もしかしたら頭を打ったとかかもしれないけど」
「失礼な。普通よ、女の子同士のなんてことのない会話だよ」
「胸?リリィはそんなにないよ。よかったら触ってみる?なの」
「え?いいの?」
「平気なの」
やった。あっさりと触らせてくれるらしい。
「じゃあ、ちょっとだけ」
フニフニ
うわ、なにこれ。硬くもなく柔らかくもない。そしてなにより………私よりある!
「うわぁぁん!リリィに胸の大きさで負けたよぉ〜。私のが年上なのにぃ〜」フニフニ
「ちょっと!私の胸に顔を埋めないでよ」
「ごめんなさいなの。よくわからないうちに成長?してたの」
「セラはいいよね。大きくて」
「なりたくてなったわけじゃないんだけどなぁ」
いいもん。これからいっぱい触って、いっぱい揉ませてもらうんだから。
「また良くないこと考えてるわね」
「今日はもういいわ。これ以上はメンタルが持たない」
「今日は諦めが早いわね。逆に気持ちが悪い」
「そんなこと言わないで!」
それから色々あって
「日が沈むね。準備しないと」
「準備といっても何も変わらないんだけどね」
特殊な道具が必要でもないし、たぶんお金だけだろう。
「済ンダヨウジャナ。デハ、奴ノ所ヘ案内スル』
「よろしく、グラント」
「よろしくお願いしますなの」
宿を出て10分くらい経つ。私達の目の前には、小さな小屋が1つだけ。ここにいるらしいけど、本当にいるのかな。
「お邪魔しま〜す」
「待っていたよ、随分と長かったね。さあさあ、入りたまえ。今お茶出すよ」
変態さんは想像と違ってしっかりしていた。とても変態とは思えない。でも、顔は見えない。薄い見えるか見えないかくらいの布で隠している。前見えてるのかな?髪型も手も何もかも隠してて、一切わからない。
「僕は知っている。君達が望むものの場所を……」
「話が早いね。で?どこにいるの?」
「おやおや、タダで教えるとでも?そんなわけがないだろう」
「なにが必要なんですか?」
「そうだなぁ、金貨2枚。それと、霊草の実を5つ」
「それなら払える。これでよろしく…」
「ちょっと待って欲しいな。僕はまだ言い終えていないよ。最後の条件は僕とゲームだ」
「ゲーム?なにするんですか」
「トランプという物をご存知かな?」
「知ってるの。やったことあるの」
「おお、ではね…このトランプを使って……」
「使って?」
「1対1のババ抜きをしてもらいたい」
「ババ抜き?そんなのでいいの?」
「いいとも。そちらは3人、3回できる。3回中1回でも僕に勝てたら教えてあげよう」
「簡単よ。すぐに終わらせてあげる」
「負けたら、罰ゲームだからね」
「いいよ。早くやろう」
「では、ルール説明から」
トランプは2組使用する。
1、カードをよく混ぜて均等になるように配る。
2、交互に相手のカードを1枚引く。
3、同じマークの同じ数字が1組揃えば捨てられる。
例ハートの6とハートの6
4、どちらかが最後の1枚だけになったらゲーム終了。ジョーカーを手にしている方の負け。
「以上だ。カードをそこの人魚さんに託そう。配ってくれ。もちろん細工などしていない。確認してもらって構わない」
セラは念入りに確認した。なにもなかったみたい。1番目はリリィ。ババ抜きは誰でもやったことのある単純なゲーム。最初は運任せでもいいけど、後半は手札の読み合い。集中できればなんとかなるかも。
「では始めよう。お先にどうぞ。さあ引きなさい」
「これなの!……やった揃ったの」
「1枚目で揃うとはな。どれ、僕は…と、ハズレだ」
「次はこれなの」
「ハズレだな。これはどうかな?おお、アタリ」
とまあこんな感じに進んでいって、変態さん3枚、リリィ4枚になった。ここからだね。
「そろそろ勝ち負けが決まる頃だな。アタリ」
「リリィこういうの苦手なの。アタリなの」
「さて、こっちだな。ハズレ」
「うぅ、2枚のうちどっちかがハズレなの。右、左右左……」
「どちらかな?右でいいのか?本当に?」
変態さん余裕そうだな。これはリリィ負けたかも。リリィが勝てば楽なんだけど。
「わからないの!直感で、こっちなの!」
「残念ハズレだ」
「待つの。今シャッフルするの。…………はいなの」
「こっちか?それともこっち。右、左、みぎ、ひだり……うむ。君はとてもわかりやすい。すまないな、僕の勝ちだ」
「負けたの。悔しいの〜!」
「ハッハッハ、やはりゲームは楽しい。このドキドキ感たまらんな。では罰ゲームだ。そうだな。今から帰るまで語尾にニャをつけるだ」
「よくわからないなの、ニャ。話しにくいの、ニャ」
可愛い。また今度やってもらおう。さあ次いきましょ次。
変態の意味がわかった気がする。
次はセラの番。配るのはリリィ。
「お願いします。私は後からがいいですね」
「そうなのか?ではまずはこれかな」
「あらハズレですね。では、……アタリです」
「君も1枚目からアタリか運がいい」
「偶然ですよ。たまたまです」
「僕はまたハズレなんだがな」
「私はアタリですよ」
早い。引いたら引く、引いたら引く、とにかく少なくなるまで引き続ける。開始2分で変態さん2枚、セラ1枚まで減った。あとは、セラの実力次第。頑張れセラ。
「あなた、さっきから右ばかり見てますね。何かあるんですか?……ハズレ」
「引っかかったな。右だけ見て注目させる作戦成功」
「そうですか、ならこちらも」
セラが残り2枚をテーブルの上にシャッフルして見ずに置いた。自分が分からなければリアクションはない。完全に運勝負。
「僕は運に自信があってね。操れてるんじゃないかなって思うレベルなんだけど………残念、アタリ」
「負けました。で?なにをすればいいのですか?」
「君はここに来てから1回も笑ってないよね?だから20秒間最高の笑顔をお願いします」
「え、笑顔?わ、わかりました。いきます」
ニコッ☆
1、2、3、4、……………18、19、20。
「しゅ〜りょ〜!お疲れ様です。最高のスマイルでした」
「恥ずかしい。もう〜シルフィー!絶対勝って!」
「えぇ〜、私これすっごい苦手だったんだけど〜」
「知らないわよ。挑戦できるのシルフィーだけなんだし、やるしかないのよ」
「わかってるけど。勝てるかな〜」
「ゲームは楽しんだ者が勝つんだ。楽しみ方は違うだろうが、勝とうと思えば勝ちから遠ざかるのはよくある話」
「楽しむのは得意だよぉ〜」
「さあ、僕を楽しませてくれ」
「私からいくね。えい!ハズレだぁ」
「ハッハッハ、リアクションがゆるいねぇ。アタリ」
「よく言われる。アタリ」
「君は何を考えているのかわからない時があるな。ハズレ」
「そんなことないと思うけどぉ。アタリ」
「今のそれだよその時、不思議な子だよ。アタリ」
おしゃべりしながらアタリハズレとどんどん減っていって、変態さん3枚、私2枚。ここからだ。
「ねぇ、次私ジョーカー引くね」
「おお、宣言するか。どれ、引いてみせよ」
「えーっとぉ、これ。ほらね、ジョーカー」
「すごいな。宣言通りに引いてしまった。ならば私も……」
「ええーつまんないよ。2枚同時とかどう?」
「ハッハッハ、本当に読めない。いいだろう、後悔するなよ」
「しないよ。だって、ハズレ引くもん」
「では、これとーっ、……これだ!」
「ね、引いたでしょ。じゃあ私こっち」
「まてまて、シャッフルがまだだ」
「シャッフルを待つルールはない」
「あ、取られた。僕の負け……」
「ルールに相手が引いてから何秒待つとかなかったもんね。あったらやらなかったけど」
「ハッハッハ、やられたな。ルールの穴を突いて勝つ。見事だ。確かに明記していなかった」
「ルールの穴を突いても、変態さんの気を引くのは難しかったよ」
「変態さん!?だれが変態だと?僕はただゲームが好きなだけだ!」
「詳しくはレージュおじいちゃんにでも聞いてみて」
「あの年寄りめ!」
「さ、罰ゲームは語尾にぞなもしをつけるで」
「それだけ?シルフィーもっとあるでしょ」
「いいよ何でも」
「わかったぞなもし」
「ありがとなのニャ!これで場所がわかるのニャ」
「シルフィーならやると思ってたけど、案外普通だったわね」
「派手にやると怒るんだもん」
「まあいいわ。それよりも場所よ」
「わかっているぞなもし。さて、奥の部屋に入ってくれぞなもし。そこで行うぞなもし」
奥の部屋は壁一面に夜の星空を投影したようにキラキラしていた。なにが光ってるのかわからないけど、とても神秘的。
「ここに水晶を置いてっと。さあ始めようかぞなもし」
「お願いします」
「お願いするのニャ」
「では、リリィと言ったなぞなもし。お前の望むものを強く思い描けぞなもし」
「リリィは………」
水晶にぼんやりと何かが映し出される。
「もっと強く、思い出でもいい、なんでもいい、より鮮明に!ぞなもし」
さっきより鮮明になった。男と女の1組が檻の中にいる。女は泣き、男は誰かを睨みつける。
「目を開けてよい。この2人で間違いないか?」
「間違いないのニャ。リリィのパパとママなのニャ」
「2人はこの街の外れ、東の海岸の洞窟……違うな。もっと近いぞなもし。この街の地下水路から特別なルートを行ったところだぞなもし」
洞窟から行く方法と地下水路の2種類あるのだろう。
「しかし、厄介だな。地下水路とはぞなもし」
「何かあるの?」
「地下水路からの道は警備が厳重で逃げ場もないぞなもし」
「それは大丈夫だと思います。行き方と詳しい地図とか警備の配置とかわかるだけ教えてください」
「僕が教えるのは場所だけぞなもし。教えるけど、その後は責任を持たないぞなもし」
「構わない。場所がわかれば十分」
「そうか。そっちで待っててくれぞなもし」
ぞなもしうるさくなってきた。
「できた。持って行きなぞなもし。今日のゲームは楽しかったぞなもし。お礼に料金と霊草の実はいらないが代わりにまた、遊びに来てくれないか?ぞなもし」
「遅くなっても、いつでもいいなら」
「もちろん、なんならこっちから行くかもな。ぞなもし」
「来ても名前がわからないと拒否するかもね」
「普段は名乗らないからな、ヴェルノだぞなもし」
「シルフィーだよ。セラとリリィは知ってるよね」
「そこの精霊2人も久しいなぞなもし」
『フン、5年前ニ会ッタダロウ』
「僕にとってはとても長いぞなもし」
『霊樹トノ付キ合イノ延長デス。ゲーム脳」
「相変わらずだ、そこがいいんだけどぞなもし」
「ヴェルノって何なの?」
「ただのゲーム好き、場所特定は仕事だぞなもし」
「そういう意味じゃないんだけど」
「今日は帰って休んだ方がいいと思うぞなもし。明日は動くんだろ?ぞなもし」
「そうだね。ありがとヴェルノ。またゲームしようね」
「次は勝ちます」
「ありがとうなのニャ」
「頑張れよ、応援してるぞなもし」
「私達が帰ったらぞなもし言わなくていいよ」
言ったはいいけどすごくうるさい。失敗したかも。途中から楽しんでたし。楽しむの上手なんだね。
その後宿に帰り、夕飯、お風呂と済ませて、作戦会議をしようとして寝落ちした。
いやー忙しい忙しい。都合により投稿ペースが1週間で1話になることを伝えておきます。最近はよく睡魔と闘っていますね。負けるんですけど。ここまで読んでいただきありがとうございます。これからもよろしくお願いします。




