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18話 神だからか、あるいは

「そんな! 何を適当な事を……!」

「うん、今のは嘘」

 あまりにもあっさりとそう白状した。


「嘘?」

 からかわれているのだろうか。そうでなければなぜそんな嘘をついたのか分からない。

 そんな僕の心を読んでいるかのようにその人は言った。

「なぜ嘘をついたのか、なんて事を考えているなら君はやはり理解していない」

「僕が理解していない? 何を?」

「今の話だけど、君はどうして嘘だと思った?」

 ……そんなのは愚問だ。

「それはだって、あまりにも有り得ないから」

「君は暗い中を歩いていたのにいつの間にかここに辿り着いた。そうなることが想像出来たかい? 有り得るかどうかなんて物差しには全くの価値がないんだよ」


 僕はそう言われてはじめて、自分があまりに考えのない発言をしていたことに気付いた。

 ……確かにその通りだ。あの時僕はこうなるなんて全く想像もしていなかった。


「つまり君が今嘘だと思ったのはそうだと思いたくないからだ。自分が悪いことをしていると考えたくない。まして悪事に加担しているなんて知りたくない。こんなほのぼのとした場所なのにそんなのは有り得ない。……だから嘘であって欲しいと思った。嘘であると決めつけた。わがままな子どもだよ君はただの」

 反論などできるはずも無い僕は黙って聞いていた。悔しいけど、この人の言葉は事実であり、正論だ。

「要するに君が信じたければ信じるし、信じたくなければ嘘だと吐き捨てるわけだ。そんな人間に誰が話してあげると思う? これが二つ目の疑問の意味。分かったかい? お坊ちゃん」

「……確かにそうですね、全部その通りです。全て正しい」

 そう、この人が言うことは痛いほどに正論だ。それでも僕はその正論には従えない。


「でも僕は、ただ鵜呑みするなんてことは出来ないし、したくない。自分の目で見て、聞いて、そして考える。その果てに得た答えが違っていても僕にとっての真実はそこにしかない。……だから教えなくても良いです。確かにあなたの言う通り丸投げでした。学ばせてもらいましたよ」


 目の前の僕は何も言わず、静かに聞いていた。怒りでもなければ哀れみでもない。落ち着いた表情をしている。

 少しして、やれやれとでも言わん様子でため息をついた。


「はぁ、気が変わった。視野を広げるためにはより広い世界を知るべきである。これはどこかの偉い人、もしくは僕の言葉だ。今の君の役に立つだろう。……それにしても、こんなにサービスしてあげるなんて優しすぎると思わない?」


 僕はそう言われて、ここに来た時にサービスとか言っていたことを思い出した。


「助言する事がサービスと?」

「いや、それは気が変わって偶然そうなっただけ」

 それ以外となると、まさか。まさかとは思うけど……もしそうだとしたら、なんと傲慢なんだ。

「前回より長く会話した事?」

 僕の言葉に目の前のそれは驚いていた。驚きたいのはこっちだ。


「え? それ以外ある? 君みたいな頭の悪いガキと話してあげる事がサービスではないと? その上、懇切丁寧に説明してあげたというのに」

 そう言って大袈裟に頭を抱えた。

 やはりウザいタイプであるという認識は間違っていなかったらしい。色々言いたいことはあるけど、長居は良くないのでそろそろ帰る事にする。だがその前に僕は一つ聞かなくてはならないことがあったのを思い出した。


「あ、そういえば。前回ここに来た時、あなたはあの後起きることが分かっていたんですか?」

「ん? それはね……」

 瞬間、不敵に笑う。何を考えているのか分からない、ただどこか恐怖すら覚えるような、そんな笑顔で。


「神だからか、あるいは……?」


 その言葉を最後に視界が黒に包まれ──

 

 そして僕は戻ってきていた。この表現が適切なのかも分からないが、どちらにせよ前回と同じく僕の前からあの人は消えていた。

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