FILE9:中枢サーバ
うっそうと茂る森。
これは現実世界で表すとどこかね?
多分山奥か何処かの遺跡が見つかりそうな場所だここは。
「悪者が現れるなんて好都合じゃない! 私たちが退治するのがシナリオよ! 」
どうでもいいが,メロンちゃんってこんな性格だったか?
「いつもはもっとおとなしいんだよ。だけど一度スイッチが入っちゃうとこのテンションなの。運動会でもこう」
妹は猫耳をぴょこぴょこ動かしながらそう言っているが,そういやお前の姿もすっかり慣れたな。
案外お気に入りか?
「こらアツシ! 」
今時 こら と怒られるのもどうかと思うが。
と,言いつつもこいつは案外戦闘では強かった。
現実世界での運動神経の音痴さが嘘のように敵の攻撃をかわし攻撃。
いわゆる当て逃げ。
レベルが上がるにつれて回避能力も高くなっていたようだし。
俺ものんびりしてられないねぇ。
メロンちゃんが掲示板などで情報を調べている間,俺たちはレベル上げをしていたわけだが正直妹は強かった。
もちろん俺,ながやんもそれなりにレベルは上がったし,技も覚えたが。
猫耳は優遇されてるのか?
開発スタッフは猫耳属性なのか?
そんなくだらない事を考えていると目の前に見えてきたのは大きなドーム。
恐らくこれが中枢サーバだろう。
だが俺はここでふと思い出したのだ。
ログイン前の注意を。
中枢サーバの門番がいて,そいつはプレイヤーじゃ勝てない。
とかいってたような気がする……んですが。
「でも誰かは侵入したんでしょ? 本当は勝てるのよ! えぇそうなのよ! 」
メロンちゃんの根拠無しの自信は何処から来るのか。
少し俺にその自信をくれと言ってみたい物だ。出来るなら。
「まぁそっと覗いて周りの様子を確認するくらいはしようぜ。一瞬で全滅はもうこりごりだ」
ながやんの名づけてザ・覗き見で調査大作戦を決行するためにとりあえず木の間に隠れるという原始的な方法で調査を開始した。
にしてもこいつのネーミングセンスをどうにかしてくれ。
が,このながやん命名の作戦は特に意味が無かった。
その門番らしき獣。
まぁ例えるなら犬だろう。
そいつは中枢サーバの入り口でのびていた。
どうやら誰かに既に倒されてしまったようで,ピクリとも動かない。
「わんちゃん? 起きてよぉ」
近くまで小走りで歩み寄った俺の妹は勇敢にもその犬を揺さぶってる。
いや,起きてもらわなくて良いんだが。
「これは大チャンスよっ! 今こそ乗り込むときよ! 行きましょ,アツシにながやん,アイ! 」
わざわざ全員の名前を呼びずんずんと進んでいくメロンちゃんはきっと怖いもの無しだろう。
なんで彼女が回復系ジョブなんだろうか。
勇者とかの方が似合いそうな気がしてきた。
とりあえずメロンちゃんに続いて入ったその中枢サーバはいかにも近代科学的な内装で青い光が壁を伝っている。
そして入って早々,とある人物が出迎えてくれた。
「またお会いしましたね」
もう三度目になる。
「と,言っても今回はそちらが来ることを分かっていた上での再開。と言った所ですが」
推理好きの魔道士さん。