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420通りの空  作者: かふぇいん
2章:開戦
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23/23

集合

「三番空域の模擬戦は終了、指示を待つ」

 無線を入れると、しばらくして上官機からの通信が返ってくる。

「了解。三番空域を飛行中の、5、7番機は四番空域を回避して、五番空域へ来い。向こうはまだ終わってない」

「アイ、サー」

 同じようにピーターも返事をして、揃って南西へ針路を取る。まだ模擬戦が行われているという四番空域を避け、はじめはやや東寄りに進んだ。二番空域は終わっているらしい。

「四番空域って誰と誰だったっけ? フリッツわかるか」

 近距離の解放無線に、ピーターの問いが入る。引いたくじと同じなら、まだ戦闘を続けているのは、おそらく。

「ユウとライナーだったと思うぞ。どうなってんだろうな」

「そうなのか! じゃあ、そこが今回一番面白いところだろうなぁ。ライナーはもちろんだし、ユウちゃんって未知数だもんな」

「ん、ライナーって何かあるのか」

 隊の中でも一番に小柄な青年。大柄なジャックスの傍にいるのもあるし、童顔な性もあってライナーはひと際小さく見える。今のところ印象と言えばそんなところか。訊ねて、それは、とピーターが答えようとした時、レーダーにも視界の隅にも、機影をとらえた。五番空域に入ろうというところ、二番空域でやっていた二機のようだ。

「三番空域の奴か、誰だ?」

 近距離の無線が入る。ジャックスの声だ。名乗って近づいて、2番の数字を確認する。もう一機のナンバーは4、ピーターの並びだと考えると、あの三人のうちの誰かか。

「リー! どっち勝った?」

 ピーターが4番機に寄っていって訊ねる。リー、というとあの3人の中の黒髪で細身の男か。負けちまったよ、と言うのが聞こえて、フリッツはジャックスの機に自機を寄せた。

「勝ったのか」

「あー、まぁな。アカデミーが同じだしな、知った飛び方だったからだろ」

 特に誇った様子もなく、ジャックスは答える。自分とユウ以外は、みな同じアカデミーの航空科だったと聞いた。振り分けられた先でも元々顔なじみだから、顔を覚えなければならないのはフリッツだけだ。

「そう考えりゃ、あの三人は同じ配属で良かったよな。学科はそれなりに人数いただろ?」

 問うと、ジャックスはそうだな、と答えてすぐ、いや、とそれを濁した。

「俺やライナーやグランツも一緒ってのはな。ここまで癖のある奴ばっかりてのも妙だ、隊長が何かしたってのが本当だろうな」

「どこまでも鶴の一声ってわけか。上を押えつけてんだか、気に入られてんだか」

 短く息をつき、フリッツは片頬だけで笑う。

「まぁ、俺は学科の教官に嫌われてたからな。こうやって引っ張り上げてもらえりゃ助かる。はみ出しもんは居づらいもんだ。……お前もそういうクチだろ」

 無線の向こうで、ジャックスが笑うのがわかる。同意を込めて小さく笑い返し、応える。

「それでも、俺は上が文句言えなくなるまで自力でやったさ」

 そうだろうな、と返事が返ってきて、その後、揃った四機で編隊を組む。いくらもしないうちに上官機が見えるだろう。曲者ばかりを選んだとしたら、きっと当人も相当の曲者なんだろう。

 数分もしないうちにひとつの機影が見え、四機はそれに接近した。が、よく見ると上官機ではない。ナンバーは6、自分のひとつ前だからグランツだ。

「来たか。隊長は、今、隣の八番空域でエドウィンとやってる」

「エディが? 隊長と」

 リーがグランツの言葉に問い返す。グランツは編隊の中に入り、それに応える。

「ああ。みんな揃うまで、だそうだ。これで、あと来ていないのは四番空域だけか。次、誰か決めておくといい。もう、隊長たちは戻ってくるだろうから」

「お前はいいのか、グランツ」

 ジャックスが問うと、グランツは笑み崩したように答えた。

「俺はいい。後で結果が見られればな」

 ピッと電子音が鳴り、近距離の会話に上から被せるように上官機の通信が入った。

「五番空域で待機中の五機。模擬戦闘中の四番空域からまだ連絡がない、よって到着まで、高度2000フィートを保ち、そのまま待機せよ。……こっちは今終わった。誰か――来るか?」

 誰でもという意味の、ただ一人を示す問い。五機の間にお互いを確かめるような沈黙があって、フリッツは近距離の通信を入れる。

「俺が行く」

 ああ、と他の四機の同意があって、フリッツは上官機へと通信を入れた。

「7番機、これより八番空域に向かう」

 それに応えるように、応答がある。

「了解、八番空域にて『Hawk』待機」

 フリッツは南へと機首を向けた。燃料その他、機体に問題はない。グッと加速をかけ、八番空域へと向かう。風が少し荒くなっていて、出がけのユウの言葉通りになりそうな雲行きだ。これ以上風が強まれば面倒だ。空域が変わる頃、入れ違いに3番機が帰ってくるのを確かめ、フリッツはさらにその先に進んだ。お手並み拝見。きっと、向こうもそう思って、こちらを待っているはずだ。

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