1話:音の嵐に、手を惹かれて
皆さんこんにちはるあです。
新しく小説を書きました。
中学生まで吹奏楽部経験していましたのでそれも参考にしてあります。
今書いているのと平行線で書きたいと思います。
ノートに書いて小説なろうに書いているので更新が止まってしまう恐れもありますが気ままに待ってくれると嬉しいです。
カタヨムにも書いてあります。
鵜ノ宮中学校の3年間、どうにか波風立てずに《なみかぜ》やり過ごしたい。
それが、引っ込み思案な私の、ささやかで切実な願いだった。
私の名前は、倉田恋々菜。
今日から、この新調されたばかりの少し大きめのセーラー服を着て、中学生になる。
校門をくぐると、真新しい制服に身を包んだ新入生たちとその保護者で溢れかえってた。
誰もがこれからの新生活に期待を膨らませた明るい顔をしている。
そんな中、私は一人周囲の熱気に押し潰れそうになりながらクラス分けの掲示板へと向かった。
人混みの後ろから恐る恐る背伸びをして自分の名前を探すと、私は【1年1組】の所にそれを見つけた。
周りの子達が
「やったー!同じクラスだ!」
「一緒になれてよかった!」
と抱き合って喜ぶ声を遠くに聞きながら、私は小さく息を吐き、自分の教室へと向かったこれから始まる新しい環境への不安で胃のあたりが少し重い。
教室への硬い木の椅子に座りながら、私はこれからの学校生活の計画について考えていた。
中学生生活を平穏に乗り切るために、どうしても入らなければいけないものがある。
ー部活だ。
(……やっぱり、部活は何か入っておかないと駄目…だよね。)
本当は、放課後になったら、真っ直ぐ家に帰って大好きな本を読んだり、自分の部屋で静かに音楽を聴いたりしていたい。
集団行動も、大声を出すのも苦手は私にとって、部活動という場所は考えただけで少し気が重くなる。
だけど、現実はそう甘くない。
高校受験の時に【部活を何もしていなかった】というのは内申点で不利になる、と近所のお姉さんから脅されるように聞いたことがある。
つまり、私の第一の目的は、【内申点】だ。
高校に行くための、アリバイ工作作りのようなもの
3年間そこそこ真面目に出席して、問題を起こさずに引退できればそれでいい。
でも、どうせ3年間という貴重な時間を投資するのなら、一つだけ譲れない条件があった。
(クラシック音楽に関われる所がいいな…)
私は家でこっそりクラシックピアノのCDを聴くのが大好きだった。
鍵盤から溢れ出す繊細なメロディーや、オーケストラが織りなす重厚でドラマチックな響き。
引っ込み思案で、自分の気持ちを言葉にするのが苦手な私にとって、音楽だけは自分の心を自由に解放してくれる誰にも邪魔されない特別な場所だったの。
運動部で泥だからけになって大声を出すのは絶対無理だけど、大好きな音楽の側なら、私でもいられるかもしれない。
「ーそれでは、時間になりました。1年1組から順に、体育館へ向かいます。前との間隔を歩いてください。」
担任の先生は少し緊張した声で、思考が遮られた。
緊張でガチガチに固まった体をどうにか動かし、前の人のセーラー服の背中を追って廊下に出る。
上磨きの音が、ペタペタと冷たく校舎に響いていた。
やがて、大きな体育館の、重い木製の扉が開かれる。
静かだった廊下から、一歩体育館の空間に足を踏み入れた。
その瞬間だった。
ードォォォォーッ!!!
お腹の底を、巨大な見えない拳で直接殴られたような、凄まじい衝撃が走った。
心がドクンと大きな音を立てて跳び上がる。
体育館の広い空間を、文字通り【埋め尽くす】ような音の嵐が吹き荒れていた。
「……っ!?」
流れていたのは、スピーカーから流れる平らな音楽なんかじゃない。
今この場所で、何十人も人間が同時に息を吹き込み、叩き魂を削って奏でている。
本物の生の音楽だ。
体育館のステージ横に、一糸乱れる制服を着た集団が並んでいた。
天井のライトを反射して金色や銀色にキラキラと輝く大きな楽器、一斉に波打つように上下する木管楽器の指先、そして空気を引き裂くように鋭く、けれど心地よく刻まれるパーカッションのリズム。
ー吹奏楽だ!
鳥肌が腕から首筋にかけて一気に駆け上がった。
ただの【学校の部活】だと思っていた目の前で演技されている。
私の想像を遥かに超える、圧倒的な圧力と、一糸乱れぬ演奏力を誇っていた。
強烈な音圧が波のように押し寄せてきて、私の鼓膜そして制服の生地を通して皮膚をビリビリと震わせる。
何十個もの楽器の音が一つに溶け合い、体育館の天井を激しく揺らしている。
その音の渦に圧倒されながら、私は胸の奥がじわじわと熱くなっていくのを感じていた。
(すごい…何、この音…!)
内申点のためとか、受験で不利にならない為とか、家で静かに聴くのが好きだとか、そんなちっぽけで冷めた理由は一瞬にしてその音の嵐に吹き飛ばされてしまった。
指定されたパイプ椅子に腰を下ろしても、私の視線はステージの横の吹奏楽部から一歩も離れられなかった。
煌めく楽器を持った先輩たちの姿、信じられないほど眩しくて、かっこよくてたまらなかった。
楽器を構える凛とした姿勢、指揮者を見つめる真剣な眼差し、そのすべてが特別な世界のものに見えた。
(私も、あの音の中に入りたい)
(あの圧倒的な世界の一部に、なってみたい!)
校長先生のお祝いの言葉も、新入生代表の引き締まった挨拶も、今の私の耳にはほとんど入ってこなかった。
私の心は既に、あの煌びやかで力強い音楽の虜になっていた。
入学式を終わりを告げる退場行進曲が、再び体育館を震わせる。
その力強いリズムに合わせて歩きながら、私は誰にも気づかれないように、小さく拳を握り締めた。
引っ込み思案な私の、これが人生で初めての自らの意思による大きな決意だった。
(よし。私、絶対に吹奏楽部に入るー!)
倉田恋々菜
引っ込み思案
ダークブラウン、長めなので一つ結びにして登校している。
家族構成
父、母、弟




