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8話

ちょっと短いですが切りの良い所で。

検証をする前に、運転席から降りてきた月影に捕まった。


「ご主人様がそのような格好で人前に出られるとは、何と嘆かわしい」


そう言いながら泣かれたので、まずはちゃんとした格好をしないとな。

羽織ったままだったパンツァージャケットを着ようとすると、月影と望月に脱がされる。


「いや、あの」


「これはメイドの仕事です。ご主人様はそのままでいて下さい」


「しかし……」


「ご主人様は私どもが不要と仰るのですか?」


「そんなことはないけど」


「でしたらわたくしめの仕事を取らないで下さい」


月影って、こんなに押しの強いキャラだっけか。

炊事洗濯掃除家事全般に万能で、ハウスメイド長兼補給中隊長だから役職的には間違っていないんだが、こう……何というかその、もうちょっと物柔らかなあらあらうふふ系お姉さまキャラとして設定したつもりだったんだけどなあ。

月影の隣でコクコクと頷いている望月も、こっちの服をはぐのを手伝っていないで、助けて欲しい。


個人収納からアートルムス帝国のゲシュペンスト乗りといえばこれ、という黒のパンツァージャケットとズボンを引っ張り出したのだが、月影にダメ出しをされてしまった。


「確かに魔法素材のお陰で、この砂漠地帯でも暑くはないでしょうが、TPOというものがございます」


「TPOって……Tactical Panzer Operationの略」


「何ですか、その適当に知っている単語寄せ集めただけの用語は! 大体英語とドイツ語がごっちゃで、全然だめです」


「でもほら、あの戦車アニメのタイトルだって……」


「何のことを仰ってらっしゃるのか理解不能ですが、とにかく却下です」


「えー」


却下された、不本意だ。

余談だが、TPOはTime、Place、Occasionの頭文字を繋げた和製英語で、外国人に言っても通用しないらしい。


月影に個人収納に入っている服を全部出すように要求されて、ガチャで手に入れた服も含め全部出す。

まあ、あるわあるわ、どんだけ自分課金したんだか。

各国軍装に礼服から各種戦闘服、ウェディングドレスにモーニング、バニーガールにチアガール、バスローブにサンタ衣装、日本だけのスペシャル衣装のアニメコラボ衣装に浴衣セットとか巫女服とかバスタオルセットとか学生服とかジャージとか某カロイドとか、大量の衣装が装甲指揮車マーシャルの床に積み上げられた。


「まあ、よくもこんなにたくさん……」


流石の月影も絶句している。

いやまあ、ダブり分とか使わなそうなアイテムは、格納庫の倉庫に入っているから、その辺りも出すともっとあるんだけどさ。


「……まず必要なのは整理整頓ですね」


あ、立ち直った。

凄い勢いで服を整理し、クローゼットにしまっていく。


「……ふむ、下着類が足りません。どこかに隠しておりませんか?」


いや、このゲーム裸にはなれないから、下着というかインナーしか無いんだよ。

インナーも脱げなかったから予備はないし。

まあ、水着をベースに改造したのはあるけどさ。

ゲームだと気にならなかったけど、今だと素材的にちょっと問題だよな。


真銀ミスリル糸と大姫蜘蛛アラクネプリンセスの糸、神蚕絹ゴッドシルク金剛山羊織ダイヤカシミア金綿羊バロメッツ辺りの素材は結構な量が、格納庫の倉庫に入っているから、それを使えば下着でも何でも作れると思うけど。


「そんな超絶素材ではなく普通ので結構ですから、布を頂けますでしょうか。現状を共有致しましたが、清潔に保つためには全員に一定数の着替えが必要となります」


「分かった、じゃあ作っておくよ」


「いえ、わたくしめが作らせて頂きます」


「え、でも」


「……ご主人様が採寸して下さるのは大変光栄ですが」


月影がちょっと顔を赤くして俯く。

ああ、そうか、下着を作るためには採寸が必要なのか!

えっ、下着ってことは裸にならないと……むーりー、それはむりー。

一応、全員のメイド服を作った時にサイズは図ってあるけど、それで作って……とは言えないしなあ。


「私は平気」


望月がそう言うなり、ガバっとメイド服を脱ぎ始める。


いや、それはちょっと……。


「私はご主人様のもので、私の唯一の存在意義はご主人様に仕えること。この体の全てもそう。なので別に恥ずかしくない」


普段無口な望月が、珍しく長文を話したのにも驚いたが、いやそれ以前にゲームだと定型台詞しか無かったのに、こんなに話すとは……今更だけどやっぱりゲーム世界じゃないんだな。

いや、それより望月、服着てくれーー。

ばいんばいんな月影に対して、スレンダーな望月とはいえ、下着だけで仁王立ちされると、その……目のやりどころに困る。

しかも、ゲーム標準仕様の武骨なインナーに手を掛けて……。


「はい、そこまで」


「敷嶋!」


音も無く入ってきた敷嶋が、望月をホールドして動きを止めてくれた。


「助かった、敷嶋」


「助かったと言いつつも、視線は固定されておりましたね」


「……まあ、そりゃ僕も男だし、興味はあるから」


「そう言って頂けるとは光栄です。私どもに興味が無いのかと心配になっておりました」


いや、あるに決まってますが。

でも、距離感を測りかねているんだよ、今までゲーム内のキャラだったのが、急に普通に会話してきて、メイドとして恭しくかしずいてくれるなんて。

それが義務なのか、プログラミングなのか、何なのか分からないじゃん。


迷っていると、やや腰をかがめて上目遣いで敷嶋がこちらの顔を覗いてきた。


「お望みなら私ども全員、ご主人様に採寸して頂くのはやぶさかではございませんが」


思わず、慌てて後ずさる。


「いやいやいやいや、それはこっちが無理です」


下がった先に待機していた月影に抱き留められ、更に耳元で囁かれる。


「確かにそこまでご主人様の手を煩わせるわけには参りません」


その月影の様子を見ると、敷嶋が背筋を伸ばしきりっとした表情を浮かべる。


「月影中隊長、補給中隊にて、ご主人様の被服を最優先に、次いで現在活動中のメイド隊、最終的には総員の用意を」


「了解しました、メイド長殿」


ぴしっと背筋を伸ばして、頭を下げる月影。

おお、何か軍隊っぽい。


「では、まずご主人様の採寸を行いますので、全て脱いでいただいて」


ええーーー、そっちかい!

緊急事態宣言のせいで本業がちょっと隙間が空いて時間ができたのと、延長になってイラっとしたので書きたい物を書きたいように書いていましたが、そろそろ忙しさが戻りそうな感じです。

本業では好き勝手書けないのと、手を動かしていないと物書きスキルが落ちるので、その練習も兼ねていましたが、本業が忙しくなりそうな気配がするので、更新は不定期になるかもしれません。

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