1705年 ???9
次の日からは訓練と座学が1日のスケジュールになり俺達はユウキに語学を教わることになった。
ユウキはクロエからヨーロッパの様々な国の言語を教わったという。
俺とダコスタ、他の乗組員達も同様にユウキの講義を受けている。
ただ、語学というのは才能が必要なんだろう。
俺はイタリア語とフランス語は理解ができるようになったが北欧の言葉は全くセンスがないようだ。
ダコスタは英語やロシア語は得意のようだがフランス語は全くと言っていいほど理解できていなかった。
ただ、この講義はイタリア語を重点的に行われていた。
そこに意図があるのだろう。
戦闘訓練と語学講義が始まって2月が経った。
乗組員もそれぞれに得意な語学ができ戦闘も上達した。
特にダコスタは時にマグナやユウキと互角の戦いをできるようになっていた。
そんなある日の早朝、俺とダコスタはクロエに呼ばれた。
「ルイス君、ダコスタ君。君達はこの短期間に十分な力を身につけることができたみたいだね」
「おかげで今がいつなのか分からなくなってしまったよ」
「そうかい。それでだ、君達を外の世界に戻してあげようと思うんだけどどう思う?」
「そらまた急だね。いきなり俺達に興味がなくなったのかい?」
「いいや、最初の契約のとおり僕の理想のために働いてもらいたいんだよ。んで君達にはジェノヴァに行ってほしいんだ」
「ジェノヴァ?あの偏屈ばかりがいる街に行けっていうのか?」
「行くんじゃない。そこに住むんだよ。商人の『バッティストーニ』としてね。君ができる世界平和の為の道しるべだ」
「相変わらず話が突飛でついていけないよ。…そこで俺がすべきことを教えてくれないか?」
「簡単だよ。ジェノヴァに住みジェノヴァを繁栄させてほしい。それだけだ」
終始笑顔のクロエだがその奥の思慮を読む。
「つまりイタリアをスペインの戦争に首を突っ込ませないためってことか?」
「ご名答。今の状態でヨーロッパがごちゃごちゃになっているのにこれ以上イタリアや他の国が手を出したらそれこそ世界中で戦争になっちゃうだろ?根底には心の貧しさから争いは生まれると僕は思っている。そこを解決すれば面倒な事っておきないと思うんだよね」
「なかなかなご高察でございますな。俺等が自由になった瞬間あんたを裏切るかもしれないぞ」
「それは大丈夫。マグナもユウキも一緒だから。まぁマグナは故郷に帰るから途中でいなくなるけどユウキはしばらく一緒にいてもらうよ」
「そうかい分かった。行くことにするよ。それで、いつから出発するんだ?」
「今日だよ。君達の船で行くことになるからちゃんと整備しておいてね」
…それにしても急だな。
俺達2人は乗組員に話し、出航の準備に取り掛かった。
拿捕されてから半年以上。
俺達は目的を変え新たな船出を迎えた。




