表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

後編

予想以上に長くなった。


「後2時間でつく、朝一番に行こう!」


「うん、ありがとう」


なにもない草原に寝っ転がって星空を眺める。


「綺麗だね」


「アイリの方が綺麗だよ」


「ぷっくく、あはははははははっ」


急に笑い出したアイリに僕は首をかしげる。

確か本にはこう言えば女性は喜ぶと書いてあったのだが


「今時、そんなキザなセリフ言う人初めて見た」


「ダメだった?」


「いや嬉しいよ、ありがとう」


アイリは僕に顔を近づけて来る。


「アイリ、な——」


「ん」


僕の口がアイリの口によって塞がれる。


僕は思考停止した。

口の中に甘さが広がる。


「えへへ、キスしちゃったね」


「キス、接吻?」


「そうだよ、人間の愛情表現」


「なんか全身の温度が上がってきた、オーバーヒート? 故障?」


戸惑う僕の様子をアイリは笑いながら見守っている。

あぁ、この気持ちが——。


「見つけたぞX1」


頭上から声が聞こえた。

見上げてみるとそこにいたのは8機の軍事ロボット、エックスが所属していた隊だ。


「隊長?」


「なにをしているこんな所で、破壊されていないならなぜ戻ってこなかった?」


「僕には他にやることがあります、そこを退いてください」


「この先は国境だぞ……そうか亡命ということか、それがどういう行為かわかって言っているのかX1!」


「隊長、僕はX1じゃない、僕の名前はエックスだ」


「貴様、壊れたか、全機に告ぐ、X1に欠陥が判明、情報を隠滅すべく破壊する、やれ!」


瞬間夜空から魔法の雨が降り注ぐ。


「アイリっ!」


すぐさまアイリを抱えその場から離脱。

全速力でブースト一瞬で数キロ先まで移動するがそこは同じ軍事ロボ、すぐさま追いかけてくる。引き剥がせる距離ではない。このままではいずれ追いつかれる。


撃ってくる魔法を避けながらなんとか進む。


「エックス……」


アイリは心配そうにエックスの名を呼ぶ。


「大丈夫、僕が必ず君を守るよ!」


急降下し地面にアイリを下ろす。


軍事ロボット達も距離を開けて降りてくる。


「観念したか、今戻って来れば許してやる、戻ってこいX1」


「ARシステム 対人戦闘システム起動」


全身に魔力を纏う、膨大な魔力がエックスの体から発せられる。

これがエックスの答えだった。


「なるほど、やはり貴様は失敗作だったか、せっかくの博士が作った進化計画の第1成功例だが仕方ない、やれ!」


「ARシステム起動」


全ての兵器ロボも全身に魔力を纏う。


9対1、明らかにエックスに勝ち目はないがそれでもエックスはアイリの前に立つ。


「アイリここからは歩いていける? アイリの足でも1日で小さい村に着くからそこの人に助けてもらって? これも持って行って」


アイリに渡すは小さな金の塊だった。

若干小ぶりだがこれだけあれば家一軒買うことができるほどだ。


「これで薬も買って、生きて!」


「嫌だよ、私はあなたと一緒にいる、エックスと一緒じゃなきゃ生きてる意味なんてない!」


「ここにいたら本当に死ぬよ?」


「上等! 今更命なんて惜しくないわ、あなたがいない世界なんて私には必要ない」


「……そっか、困ったなぁ」


エックスは笑う、初めて笑うその顔はとても優しいものだった。


「これは壊れるわけにはいかなくなった、僕はアイリを守るって言ったからね、なら約束は守らなきゃ」


「隙だらけだ」


無数の魔弾がエックスに直撃……する前にエックスの防御壁によって防がれる。


「なっ!?」


エックスは急上昇する。


周りのロボも魔弾を放ちながら後を追う。


そっからは激しい空中戦になったがエックスは敵を撹乱しながら時に敵を盾にし時に敵を攻撃し上手く立ち回っているおかげで消耗しているのは数で勝る敵の方だった。


「何をしている、いくらあいつが優秀だからって性能は変わらないはずだ、固まって一斉に打て!」


隊長が叱咤するが一向に攻撃はエックスに当たらない


不思議だ、今までに感じたことのないくらい動きが冴えてる、攻撃がよく見える、敵がどこから攻撃してくるか完全に把握できる、目の動きまでしっかり見える。


「アイアス」


複数の魔法陣が辺りに展開される。


「ロックオン シュート」


高密な魔力のレーザー光線が放たれる。


直線上にいた四機は避けようと動くがその動きに合わせてレーザーも湾曲し直撃する。

直撃した四機は機能停止し落下して行く。


「追尾だと? なんだそれはそんな機能その魔法にはなかった筈だ」


「魔法式を改造した」


なんてことのないように言うがそれはとんでもないことだ。

完成されている魔法式、それは何千年と掛けて先駆者達が作り上げてきた式。

今までそれが変えられてないのはこれ以上変えては魔法が発動しなくなるからだ。

それをエックスはいとも簡単に常識を覆した。


「いったい、一体何個の魔法式を追加したんだ!」


「300」


「この、化け物め!」


「「「「アイアス・テーゼ」」」」


隊長含めた残りで魔法を発動する。


「これで終わりだ、X1、アイアスに風属性を付与させたアイアス・テーゼ+4、いくらお前でも受け切れまい!」


「なら良ければいい」


「させないさ」


隊長は狙いをアイリに変えた。


「アイリ!?」


「っ!?」


「あの女を狙えばお前は嫌でも受けなければならない」


夜空に容赦なく降る魔法。


アイリは来るであろう痛みに目を瞑る。

死ぬのならせめて願おう、いるかどうかわからない神ではなく——貴方に


「エックス、生きて」


しかし数秒たってもなにも来ない、目を開けてみるとそこにはエックスが立っていた、左半身がなくなっていながらもなんとか立つエックスがこちらを向き笑った。


「良かった、無事で」


「エックス……」


なんでとは聞かない、だってエックスはそう言う人だったのだ。

いつもこちらからの願いなんて気にもせず私を守ってくれる、そんな優しい人。


「ねぇ、アイリ」


「なに……?」


「応援してほしいな、本に書いてあったんだ、人は応援されるといつも以上に強くなれるって」


「エックス……やっちゃえ、私のエックス!」


「了解」


「させるか、アイアス・テーゼ」


トドメを刺そうとまた流星のごとく夜空から魔法が降って来るを

しかしアイリは今度は目を瞑らない、しっかりと前を見る。


エックスの手に真っ白な綺麗な魔法陣が出現。


「グレイル・オン・アーデ」


それは圧倒的冷気 全てを凍らせる魔法、それは魔法・・ をも凍らせる。


凍った魔法はあっという間に砕けてその魔の手は頭上にいる隊長達まで及ぶ。


「なっ!?」


叫ぶ間もなく全て凍り落下していき地面に衝突する前に砕けて消えて言った。


「……終わったよ」


そう言った瞬間崩れるようにその場に倒れた。


「エックス!?」


「大丈夫、魔力がなくなっただけ、時間とれば動けるようになるよ、そうすれば飛行魔法も使えるから少しだけ待ってね」


「それより修理しなくちゃ、大丈夫なの!?」


「大事な部分は無事だったから動作には問題ないよ、でもこれは直すの大変だろうな」


「大丈夫よ、私が直してあげるから」


「僕の体って国家機密なんだけどな」


「今更でしょ、こんなことしちゃったらもう私たち国家反逆罪の犯罪者だよ」


「そうだねごめん、僕のせいで」


「違うよ、エックスのせいじゃなくてエックスのおかげで私は生きられるんだよ、ねぇエックス、私が無事に治ったら子供作ってみようか?」


その驚愕発言にエックスは思考停止に陥った、数秒後には復帰するがしかし言葉の意味は分からなかった。


「僕ロボット、子供作れる体じゃない、と思う」


「そんなのやって見なくちゃ分からないじゃない」




朝日が昇ってから二人は出発し無事に薬も手に入れることが出来た、そのかわりに二人は国家反逆罪の犯罪者として国から追われることになる。

そして彼らは国の根幹に関わる問題に巻き込まれていくのだがそれはまた別のお話。

このお話はただの少女と軍事ロボットが出会い恋をするまでのお話。













評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ