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21/28

21:エルフ、勝利を祝う(1)

セクハラ部長の逮捕。


その身内で取締役の両親の解任&懲戒解雇処分。


フロア内は歓喜に包まれた。


社長には、今後の上司の適任として誰を選べばいいのか尋ねてきたので「貴方が信頼できる人を採用してください。まだあの元部長がいなくても仕事は回っていけるので大丈夫です」と答えた。


さらに、その後に社長がフロアにいる社員一同を呼び出した上で、皆に現金5万円が入った封筒を手渡してきた。


「……二糖元部長によるセクハラ行為を止めることが出来なかったのは私の責任でもある。これは迷惑を掛けたフロアにいる社員全員に渡したい。もし、二糖元部長に性的関係やセクハラ行為を強要された事があれば、遠慮なく私に相談して欲しい」


これは社員一同もビックリ。


まさに圧倒的な勝利。


インターネット掲示板や、動画投稿サイトでこの話の内容を披露すればそれなりにバズって広がるレベルだろう。


俺は()()()()()()()魔法を使っただけだ。


魔法も使い方によっては毒にも薬にもなる。


俺と田城のコンビネーションがうまくいったのだ。


これには喜びを爆発させて思いっきりハイタッチをしてあげた。


「やったな土江!これであの憎きセクハラ野郎の顔を拝まずに済むぜ」

「全くだ田城……ところで、ドエロって呼ばないのか?」

「ああ……何というか、()()()()で、ドエロって呼ぶとこっちがセクハラ野郎みたいな感じになるからな……ちょっと正直言いづらくなった」

「そういうことか……ああ、まぁお前がそう言うのであれば好きにしていいさ」


今更ながら、エルフの身体になってからかなりハイテンションに物事を進めている気がする。


多様性のある社会と言われているので、エルフがいても多様性の内に入るから問題なさそうだな。


とりあえず、社長が仕事に励むようにと一連の騒動から労いの言葉を掛けられたのが、午後4時10分……。


あと2時間で定時だ。


いや、もう時間の流れが早いねホント。


セクハラ野郎の机から堂々とパクッてきた2杯目のコーヒーを手にとってきた田城。


俺にも一杯渡してきてくれた。


コーヒーはブラックに限る。


一口、コーヒーを口に含んで飲んだ後、田城が尋ねてきた。


「それで……どうするんだ?土江?」

「ん?何が?」

「今日は疲れただろ?飲みにでも行かないか?臨時手当も入ってきたし」

「おいおい、今日はもう超過勤務手当が欲しいぐらいだよ。あのセクハラ野郎が俺に丸投げした書類も片付けないとな」

「あー、それだったら俺が半分やっておくぞ?そうすれば作業工程も半分で済む。俺もアイツを追放させた共犯だからな」

「ははは、違いない。でもいいのか?仕事が増えるぞ?」

「勿論、土江の仕事を俺が半分やれば定時に上がれそうか?」

「うん、何とかできそうだよ」

「分かった。俺に半分はまかせろ」

「コイツ、飲みに行きたいだけだろ?」

「ハハハ、バレたか。でもいいじゃないか。終わったら飲みに行こうぜ」


仕事のうち、半分を田城に渡してからやってもらうように頼んだ。


ここにセクハラ野郎がいないだけで本当にフロアの空気は変わった。


皆が生き生きとしている。


特に、二糖元部長が逮捕されてパトカーにドナドナされた後に、女性社員から何度も感謝された。


「ありがとう土江君!あの人がいなくなって本当に良かったわ」

「いえ……私はただ何も……」

「そんなことはないわ、あの人って権力を振りかざして色々やっていたでしょ?それがいなくなって本当に良かったわ」

「そうそう、これで会社の空気も一気に変わることができるといいわね」


女性社員からかなり非難轟々だった辺り、奴は相当セクハラ行為に手を込んでやっていたようだ。


彼女たちから感謝された後、俺の気分は有頂天になりそうになったほどだ。


とはいえ、飲みに行くとしても少人数だけでいい。


大人数だと、どんちゃん騒ぎになって、いろんな人に気を遣わないといけないようになる。


その点、少人数であればさほど問題ない。


仕事をあと少しでやり終える頃に、今度は小田さんが後ろから声をかけてきた。


「あの……土江さん……ちょっといいですか?」

「はい、小田さん……?どうかしましたか?」

「えっと……仕事が終わった後に、時間は空いていますか?」

「そうですね……これで仕事が終わったら田城と飲みに行く予定ですけど……」

「もし……よろしかったら私も一緒に同席してもいいでしょうか?」

「えっ?!」


これは想定外だ。


まさかの小田さんが参戦するだと……。


一体どうして……?


不思議に思ったが、特に断る理由もない。


小田さんの事は「あまり目立たない女性社員」「眼鏡を掛けて大人しくしている」という事ぐらいしか知らない。


偶々近くを通りかかった田城に小田さんが飲み会に参加したいがいいか尋ねたところ、田城は「おお、小田さんが飲みに行きたいなんて初めて聞いたけど、俺はいいよ!」と快諾した。


俺も特に断る理由もなかったので、俺、田城、小田さんの三人で仕事が終わったら飲みに行くことになったのである。

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