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「紅葉を探しに行くの?」
灰田さんから白石さんについての"推測"を聞き終えた後。
こうしちゃいられないと立ち上がった僕に、灰田さんが尋ねてくる。
「うん。今の話が本当なら僕は白石さんとちゃんと話さないとだし」
そう言うと、灰田さんの表情に少し不安の色がさした。
「……今回の件は紅葉が悪いと思う。でも、あの子は別に悪い子というわけではなくて、私みたいな変わり者ともずっと仲良くしてくれてるような子で……。その、叶うなら、紅葉が泣きながら謝ったワケを汲んであげてほしい。あまり追い詰めるようなことはしないでほしいと、幼馴染としては思う……」
おずおずと、そんなことを言われる。
他人に興味がないように見えていた彼女は、身内にはかなり甘いらしい。
そんな様子を微笑ましく思いながらも、僕は灰田さんの勘違いを訂正する。
「えっと、灰田さん。僕は怒ってないというか、そもそも白石さんが悪いとも思ってないよ。灰田さんの話を聞いた今でも、白石さんに対する印象とか気持ちとかは全然変わってないし。だから、白石さんにはそれを伝えに行くだけ」
僕がそう告げると、安心したように灰田さんは微笑んだ。
初めて見る彼女の笑顔に内心驚きつつ、それじゃあ行ってきますと放送準備室のドアに手をかける。
「ありがとう。それと頑張って、冴島先輩」
扉が閉まる直前、いつものように淡々とした、けれども優しい声でそう励まされた僕は、白石さんを探すべく駆け出した。
「はぁはぁ……やっと見つけた……!」
「…………」
しばらく探し回った末、白石さんをようやく見つけることができた。
屋上前の踊り場。僕が白石さんのお願いを一度は断った場所。そこに彼女はいた。
僕が思いつきそうな場所は避けるだろうと考えつつも、一応と思って確認してみたらいたのでちょっと驚いている。
こちらに気づいた白石さんはゆっくりと顔を上げた後、くしゃりと顔を歪ませてまた俯いてしまった。
一瞬見えた表情や涙の後に、胸が締め付けられるような気持ちになった。
どうしたものかと迷った挙句、ふさぎ込んでいる白石さんの横に座り込む。
人1人分くらいの間隔をあけているとはいえ、隣に腰を下ろした僕に一瞬びくりとした白石さんだったけど、立ち去るつもりはないみたいだ。
かといって何かを口にするわけでもなく、自分の膝に顔をうずめているままだった。
気まずい沈黙。
どういう風に話を切り出そうか逡巡していると、白石さんの方が先に口を開いた。
「その、先輩。ごめんなさい……」
彼女の口からこぼれたのは、またもや謝罪の言葉だった。
「白石さんは、いったい何を謝ってるのかな」
「それ、は……」
「僕のちょっと暗めな過去に踏み込んだこと?」
「……」
「勉強会を途中で抜け出したこと?」
「……」
「それとも、勉強を教えてほしいって口実で……僕に時間を割かせ続けたこと?」
そう言った途端、白石さんの肩が目に見えて跳ねた。
さすがというべきか、灰田さんの推測は当たっていたらしい。
白石さんは伏せていた顔を上げ、目を見開いてこちらを見ている。
「なん、で……?って、ああ。沙枝ちゃんですか……」
力なく呟く白石さん。
その表情が痛ましくて、僕は「正解!」と冗談めかしていった。
「灰田さんすごいよね。あれ絶対名探偵になれる器だよ」
わかっていたことだけど、僕に軽口のセンスは皆無らしい。
場を和ませようと思った言葉はただ滑っただけで、白石さんはいまだに苦しそうな、思い詰めたような表情のままだ。
「その様子だと、沙枝ちゃんからいろいろ聞いちゃってます、よね」
「それに関しては本当にごめん。灰田さんはあくまで推測だし、本来は白石さんの口から聞くべきことだって言ってたんだけど。僕が不甲斐ないせいで灰田さんに頼ることになっちゃって」
「先輩が謝ることは何もないです。沙枝ちゃんが言う通り、本当は私の口からお話ししないといけないことなのに、私が逃げ出しちゃったのが悪いんです。だから、先輩。今更って感じですけど……答え合わせも兼ねて、私のお話、聞いてもらえませんか?」
弱々しい声でされたそのお願いに、ノーと言えるはずもなく。
白石さんは、突然涙を流した理由、そして僕と彼女の接点である放課後の勉強会の真相について語り始めた。




