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どっと疲れたものの一応交渉成立と言うことで、灰田さんのドラマ撮影に協力する時期について尋ねてみた。
曰く、撮り始めるのはまだ先で、しばらくの間はやってもらうことはないとのことだった。
これが今すぐとかだと白石さんの勉強を教える時間が削られて本末転倒だったのでありがたい。
というか、了承する前にその辺は確認しておくべきだったと、抜けている自分にちょっと凹んだ。
話が一段落ついて余裕が出てくると、とあることが気になってくる。
「ところで、この部屋を使っていいってことだったけど、僕たちが使える場所あるかな……?」
今までは初対面で言動がエキセントリックな灰田さんに気を取られがちだったので気づかなかったが、今いる第一放送準備室はさして広くない。おまけに機材や本、ディスクなどが散乱していて、かなり雑多なありさまだ。
一か所だけ机とパソコンが置いてある比較的綺麗なスペースがあるが、そこは灰田さんが使っている場所なのだろう。
正直、使っていいとは言われたものの僕と白石さんが勉強をできるようなスペースはないように思える。
「それに関しては心配いらない。来て」
灰田さんに促されるまま部屋の奥に進むと、入り口からは死角になっている部分にもう1つ扉があった。
灰田さんがその扉を開けると、そこにはこれまた狭い部屋が1つ。
とはいえこちらはあまりモノが置かれておらず、ぱっと目に付くのは向かい合わせになるよう設置された2組の椅子と机、そしてその上に鎮座しているマイクくらいだろうか。
「ここは……?」
「映像に使う音声とかを録音するための部屋。しばらく使う予定はないから自由にしていい。マイクは邪魔だったら適当な場所にどかしておいて。あと、そっちの棚に扇風機があったと思うから暑かったらそれも自由に使っていい」
「おお……!」
中に入って部屋を見回してみる。
狭いとはいえ、この部屋であれば2人で勉強をするだけなら十分だ。机と椅子、それに加えて扇風機まで完備されているらしいし、これはかなりいい場所を提供してもらったんじゃないだろうか。
あ、でも確認したいことが1つだけ。
「僕たち結構話したりするかもしれないんだけど、灰田さんの邪魔になったりしないかな?」
バカ騒ぎをするつもりはないが、それでも勉強を教えるというのが主目的である以上、多少の会話は発生するだろう。
そうなると、ここで部活をする灰田さんの迷惑にならないかが心配だった。
しかし、それはどうやら杞憂らしい。
「心配いらない。さっきも言ったけどここは録音のための部屋。防音は結構しっかりしている。だから、もしあなたと紅葉がここで乳繰り合っても私にはばれないから安心していい」
「「そんなことしないから!!」」
ノーモーションで爆弾発言を放り込んできた灰田さんに声を荒げる僕と白石さん。
白石さんは顔がうっすら赤くなっているし、僕も似たようなものだと思う。
灰田さんめ、ただでさえよくわからない僕と白石さんの関係が気まずくなったらどうしてくれる。
抗議の意味を込めて灰田さんを半目で見つめてみたものの彼女はどこ吹く風で、「それじゃ、ごゆっくり」なんて言いながら僕たちを残して扉を閉めた。
「え、えーっと……それじゃあ、勉強する……?」
「そ、そうですね……!」
ぎこちない雰囲気をぬぐい切れないまま、なんとか空気を変えるために本来の目的である勉強を提案してみる。
白石さんも同じような気持ちだったのかあっさりと乗ってくれた。
「あ、勉強するにしてもなにをしようか?どの教科をするとか決めてなかったよね」
そういえば、どの科目をどれくらいするみたいな具体的な勉強のプランは立てていなかった。
「1日1教科とかでいいんじゃないですか。国数英理社の順で毎週回していく、みたいな感じで」
「えらくざっくりしてるね」
「ひとまずそれで様子を見てみて、状況に応じて変えていけばいいかなと」
「それもそっか」
「んーじゃあ今日は授業があったのでちょうど教材も手元にありますし、国語ってことでいいですかね?」
「問題ないよ。ただ即席で教えるには限度があるから、今週は授業の進度とかテスト範囲の確認も兼ねながらやっていく感じでいいかな」
「おっけーです」
そんなこんなで、ゆるーく僕と白石さんの第1回放課後勉強会は始まった。




