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普段より睡眠をとったおかげで体調はいつもよりいいものの、やっぱり憂鬱なことには違いない月曜日。
白石さんからの連絡がいつ来るのかとそわそわしつつ、学校にいる時は滅多に開かないスマホを休み時間のたびに確認して過ごしていた。
『こんにちは、先輩。例の勉強する場所の件なんですけど、ちょっと予想外の展開になりまして。私だけで話を進めるわけにもいかない感じなので、放課後ちょっと時間くれませんか』
そんな連絡が届いたのが昼休みの終わりごろ。
おっ!!と思ったのも束の間、文面から漂う不穏さに戸惑う。
一体どういう事態になっているのかとても気になるけれど、昼休みはあとわずかだし、放課後時間をくれと言っている以上直接話をしたいのだろうと考え、尋ねるのはぐっと我慢して『了解』と返す。
続いて送られてきたメッセージには、放課後ここへ来てほしいと場所が指定されていたのだけど……それは少し意外な場所だった。
「第一放送準備室……ここか」
放課後、僕はメッセージで伝えられた場所を訪れていた。
中学校の校舎、理科室や家庭科室のような普通教室以外の部屋が集まっている棟の最上階にその場所はあった。
教室名が書かれたプレートや扉は古びていて、歴史を感じさせる外見だ(オブラートに包んだ表現)。
こんな部屋が存在している理由はその名が示す通り放送準備のためなのだろうけど、白石さんがどういう経緯で僕をここへ呼んだのかは想像もつかなかった。
「失礼しまーす……」
軽くノックをした後、恐る恐るといった様子で入室する。
すると、中で待っていたのは2人の女の子。
1人は言わずもがな白石さん。なぜだかわからないけど微妙に気まずそうな雰囲気を漂わせている。
そしてもう一人は、制服を着ていなければ小学生かと思ってしまうほど小柄で、黒の髪を目にかかりそうなくらい伸ばした、こちらをじっと見つめている女子生徒。
ネームの色を見るに多分白石さんと同学年だと思うんだけど――
「ど、どちら様でしょう……?」
ぶっちゃけ知らない子だった。
「えっとですね、この子は灰田沙枝ちゃんといいまして、私の幼馴染兼同級生です。放送部に所属してるんですけど、以前第一放送準備室を部室として1人で使っているというのを聞いていたので、私たちにも使わせてくれないかと頼んだ次第でして……」
僕の疑問に白石さんが答えてくれる。
どうやら灰田さんは、僕たちに場所を提供してくれるかもしれない人物らしい。
「あ、そうだったんだ。初めまして。高校1年の冴島です。どうぞよろしく」
いろんな意味で第一印象を損ねてはならないと、対人モードでなるべくさわやかな雰囲気を心掛けて自己紹介をしてみたものの、灰田さんのリアクションは無言。
相変わらずじっとこちらを見つめたままだ。
これはもしや不興を買ったのではないかと内心冷や汗をかいていると、白石さんが間を繋いでくれる。
「その、先輩にわざわざここへ来てもらったのはですね。沙枝ちゃんからはこの部屋を使うこと自体は構わないけど交換条件があると言われておりまして……それが先輩的にはどうかなーっていうのを訊きたくてですね」
「なるほど条件……」
白石さんが昼に送ってきたメッセージはこのことだったのだろう。
確かに、無償で場所を提供してもらうというのはあまりにムシがいい話だ。
この部屋を使わせてもらうための条件とは一体どんなものだろうか。
それを白石さんに尋ねようとしたところで、今までずっと閉じられていた灰田さんの口が開かれた。
「私が作るドラマに出てほしい」




