この気持ちは恋にはならない
コンテストに出したくて書きました!
さくさく転載していきます!
日頃よく知った自分の寝室ではあれど、否、だからこそ、そこに親しくもない他人と二人きりでいることに、違和感を覚えた。
ましてや、畳に二つ並べられた布団はもっと見慣れない。布団の脇で膝を畳んだ夜着姿の男を見るに至っては、これは現実なのかと疑わしくさえ思えてくる。
「……聡子嬢。分かっていると思うが、俺が君に恋情を向けたりすると思うな」
晴臣は、眉間に深々と皺を刻んでいた。
せっかくの整った顔を歪めて、いかにも不機嫌そうに「お前なんかが愛されると思い上がるな」と言ってのけるのは、なかなか言い争いの種になりそうな所業である。
「この婚約は必ず解消する」
苦虫を噛みつぶすような唸り声が、全力で彼の不本意さを表していて、聡子は思わず声を立てて笑ってしまった。
もしも聡子が彼に対して何かの想いを抱いていたなら、誤解のしようもない明らかな拒絶を受けて、悲しんだり傷ついたりしたかもしれないけれど。
だが、彼と聡子との間に、そういう感傷は必要ない。――『お前なんか願い下げ』なのはお互い様だ。
「ええ。私も、そうなることを願っています」
今、二人に必要なのは、確固たる約束と、その約束を遵守すること。
互いの目的を達するまで、誠実に協力すること。
(家族だから、とか、恋人だから、とか。いつまで続くか分からないものに振り回されるのは、もうごめんだわ)
利害の一致で手を結ぶ方がよほど信頼できると、その時の聡子は思っていた。
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