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第56話 じいちゃんと十手 ①


 タッタッタッタッタ……


「うぉぉー!!! ジュンジー!! カノコー!!」


 正面から軽やかな足取り、ものすごいスピードで、マサオがジュンジとカノコ、きよちゃんの横を通り過ぎていった。


 マサオの背で、カツヒロは愛する子供たち二人の名を叫んでいったのだった。


「う、嘘でしょ!? 父さーん!!!」


 カノコは通り過ぎていくマサオとカツヒロを体ごと振り返り確認すると、自然とその後を追った。


「あっ、カノコ! 待って!」


 あっけにとられたジュンジも慌てて走り出す。


 きよちゃんもカノコとジュンジの後に続いた。


 カツヒロを背負ったマサオは、ピタリと立ち止まる。


 公園の入り口の脇、外の歩道側を向いて立っている女神像の前だった。


「じいちゃん! 父さん!」


 肩で息をしながら、後ろから走ってきたカノコが二人に声をかけた。


(カノコか、久しぶりだな。父さんを頼んだぞ)


「えっ? あっ、はい!」


 カノコは脳内で直接、話しかけられた。すぐに祖父であるマサオの言葉だとわかった。


 ドサッと鈍い音がして、亀甲縛りのカツヒロは地面に落とされた。


「いっ……痛いよ、父さん……」


 地面に転がった父のもとに、カノコは急いで駆け寄った。


「父さん、大丈夫!? ん? なんかちょっと……」


 臭いよ、と言いかけて思いとどまる。夏の汗と体臭と下水の混ざった匂いだろうか。この状況でそんなことを言うのはあんまりだろう。




「じいちゃん、何してんだろう……」


 地面に転がったカツヒロを起こすカノコの横にやって来たジュンジは、顔をしかめた。


 マサオは女神像の足元を、何者かに憑りつかれたように、一心に素手で掘っている。


「友愛の女神像、その足元には伝説の十手があるのよ」


 ジュンジの横に立ったきよちゃんが言った。


「伝説の十手……?」


 ジュンジは目を丸くして聞き返す。


 地面に座る形で話を聞いていたカノコとカツヒロも、きよちゃんを見上げた。


「そう。十手に呼ばれた者だけが、その十手を見つけ出すことができ、その力を使うことができるのよ。マサオさんは十手に選ばれたのね」


 その時、薄暗いオレンジの外灯の中で、マサオは右手を天に突き上げた。


 握りしめているその手には、きよちゃんが言った通り、十手があるように見える。


「本当だ! 時代劇とかで岡っ引きがよく持ってるあれだよね!? あっでも、あれってどうやって使うんだろ?」


 十手を見て興奮するジュンジだったが、実際にドラマで使われているシーンなど、具体的に思い出せない。


(こうやるんだよ……マサオ流だ!)


「えっ? あっ、はい!」


 マサオはジュンジの脳内に直接、話しかけた。


 力強く、マサオの右手は振り下ろされる。


 ビニール袋がピーッと裂けるように、空間は切られた。


「まぶしっ!!!」


 真っ白な光が夜の闇を一瞬、消し去った。


 その場にいた全員が、目をぎゅっと固く閉じるのだった。


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