第29話 ジシャコウを卒業して ②
驚きすぎて固まり、声の出ないジュンジに代わって雅親が聞いた。
「おっ、おばあさんは何者なの? きよちゃんのことまで知ってるなんて……」
「あんだのこともちゃんと見えでるがらの。別に死期は近ぐないがな。まぁ、遠くもねぇがの。そこのちっこい羽のも分がっでるがらな」
「えっ、俺のことも知ってんのか……なんか怖いな」
リュックの陰から顔を出すノブオは小声でつぶやいた。
「あぁ、そうだ。オレが何者がって聞いたんだったな。オレは今日、ここさ講習受げに来た、ただの婆様じゃ」
雅親の質問を思い出した婆様は答えた。
「ただの婆様? 絶対違いますよね? なんか騙そうとか、陥れようとかしてないですよね?」
ビビりまくるジュンジはやっと口を開いたが、内容は疑心暗鬼の塊だった。
「それはどうかの。たいして何もないかもしれんがの。どうじゃ、オレはあと少しで講習が終わるがら、俺の車さ乗っで、お茶でも飲みに来ないが? 会わせたい奴もおるんでの」
「会わせたい人が? 僕らにですか?」
警戒心がマックスになっているジュンジは、眉をひそめながら聞いた。
「そうだぁ。オレの車さ、後で乗っでげ。じゃ、そこで待っどげよ」
婆様はそう言って、自動ドアから校舎へと入り、どこかへ行ってしまった。
取り残されたジュンジとその肩に乗るノブオ、その横に立つ雅親は、あっけにとられていた。
「どうする? 婆様を待ってみるか? っていうか、待ってないと祟られそうだよな……」
ジュンジの首元に引っ付くようにして、ノブオは言った。
「そうですよね。きよちゃんのことまで言い当てたしなぁ……それに、僕らに会わせたい人がいるって、いったい誰なんだろう?」
ジュンジもザワザワとする不安を感じていた。
「あの婆様、ガチな能力者かもな……とりあえず、婆様に従って待ってみた方がいいかもな」
雅親は珍しく真面目な顔つきで、はっきりと言った。
それを聞いたノブオとジュンジも納得し、三人は顔を見合わせると、うんと頷いた。
そのまま外のベンチでおとなしく座って待っていると、講習を終えたお年寄りたちが中から続々と出てきた。
バスに乗る者、車で家族が迎えに来ている者、自ら運転して帰る者、各々が散り散りになる。
そうして、最後にさっきの婆様が出てきた。




