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рассвет  作者:
これはただの女子高生だった私が軍人になるまでの話
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これはただの女子高生だった私が軍人になるまでの話:DATA 15

 時間は飛んで一週間後。

 バイト初日です。

 動きやすく、汚れても濡れても良い、派手ではない格好を無難に選び初出勤です。

 タイムカードの説明を受けます。


「漏れを少なくするために手入力にしています。社員番号、忘れないでね。ここに番号を入力して、出勤ってクリックしてね」


 なるほど。

 確かによくイメージする「ぴっ」って奴だとうっかりがありそうだ。

 これでもうっかりがあったらどうするんだろう?

 言われたとおりに入力してクリックする。


「退勤も同じ。君はお昼には上がりだから他の人とは被らないね。聞ける人がいないと思うからメモしておいて」


 私は返事をしてメモに書く。

 念のためにあいぽんにもメモしておく。


「じゃあ、厨房に行こう」


 あまり広いとは言えない事務所を出てすぐ目の前にホールがあった。

 丸いカウンターの周りに椅子が並べられているカウンター席。

 その反対側には五つほどの四人席。

 割と大き目な店舗だ。

 そこを通って暖簾を潜る。

 木目調の床から一転、石造りになる。

 機械の「かたん、かたん」という小さな音が鳴っている。

 その音の方へ店長さんが進む。

 私をもついていく。


「カンダ君。今日から入る新人さん。カワサキさんね」


 声を掛けられたカンダさんなる人は声に反応してこちらを振り返った。

 頭に頭巾をかぶっている。

 そういえば私もかぶっている。


「あ、オッケーです。よろしくね。俺大学生」


「よろしくお願いします!」


「新鮮~。これが若さ」


「三歳しか変わらないよ」


 カンダさんと店長さんのやり取りは和やかだった。

 店長さんと交代したカンダさんは私に手招きをする。


「改めましてカンダです。今日は早朝シフト俺だから俺が教えるね。これは寿司のごはん部分を作る機械ね。ご飯部分の事は「リカ」って言うから「リカなくなりそ~」って言われたらこれを作ればいいよ。説明するね。ちなみにここが洗い場」


 カンダさんは隣の大きな炊飯器らしきものから大きな袋に入った湯気を放つお米を持ってくる。


「これには酢がもう入ってるけど次からはカワサキさん?に入れてもらうことになるから。それはその時説明するね配分とか」


 私は返事をする。


「難しいこと何もないから。このご飯を両手の掌で持てるだけ持って入れるだけ。あとは機械が勝手にやってくれます。時々ごはんが少なくなっちゃって形崩れたりしてるのが出るからそれは弾いちゃって。こういうのだね」


 横に薄黄色のパレットが並んでいる。その上に崩れた「リカ」なるものが無数に並んでいて、逆に、少し離れた台にはきれいな形をした「リカ」が並べられた同色のパレットがあった。

 なるほど。

 あの崩れた方はどうするんだろ。


「パレットの最後まで行ったらまた最初の方からリカが勝手に積みあがっちゃうからそこは人間の手作業でパレット変えてね。回転物だから怖かったらスイッチ止めてもいいから」


 私はメモをする。

 カンダさんはメモを取り始めた私がわかりやすいように一連の流れを無言で再現し始めた。

 お米、酢入れる。

 炊く。

 炊けた。

 持ってくる。

 機械に両掌分入れる。

 リカが出てくる。

 パレットに並んでいく。

 いっぱいになったらパレットを交換する。

 形悪いものは除ける。

 繰り返す。

 身振りだけでよくここまで伝えられるものだと感心してしまう。

 カンダさんは私のメモが一通り済んだのを確認して、そのメモを見せてと言ってきた。

 それが問題ないものと判断し彼は頷く。


「じゃあまずはこれをしてもらおうかな。俺は後ろでアラ汁の仕込み始めるから不安になったら声かけてね」


 返事をして、私はリカ作成に徹する。

 非効率的だとは分かっているがパレットがいっぱいになったら機械は止めてパレットを交換する。

 カンダさんもそれを咎めはしない。

 1パレットが出来上がるまで約3分ほどだ。

 慣れればこの間別の事が出来るようにもなるのだろうか?

 今はただ眺めているだけだ。

 積極的に仕事を取りに行くべきなのかもしれないが、まだすることを把握できていない。

 ある程度までは指示あるまでは動かないようにしよう。

 一時間と少し。

 リカのパレットが出来上がった。


「うん。オッケー。一日でこれを大体二回か三回はするかな? カワサキさんは……基本午前中希望? ならこの一回だけかな。あとでこれはカウンターに持っていくから。じゃあ次はアラ汁の仕込み」


 言いながら彼はリカの機械の反対を指さす。

 コールドテーブルを開けてそこから銀色のバットを取り出す。

 ヒレが付いたままの魚の切り身があった。

 それをコールドテーブルの上に置いて、その横に少し位置を下げた所にある電子ヒーターの上にある細長い鍋の蓋を開けた。

 味噌汁のようだった。


「仕込みと言ってもこれに入れるだけ。カウンターからアラ汁何個ーって言ってくるからそれに従えばいいよ。器はこれ。一杯に付き大き目の切り身が二枚、小さいのを一枚入れる。これだけ。結構これは注文入るから覚えててほしいかな」


 私は聞きながらメモをしていたものをもう一度カンダさんに確認してもらう。

 問題なさそうだったので次に行く。


「これで最後。茶碗蒸し。こっちに来て」


 洗い場を出て左へ。先ほど入って来た暖簾の前でまた左に折れると目の前には重そうな扉。

 ここだけ温度感が違う。

 冷たい。

 冷蔵庫だ。

 レバーを引いてロックが解除された事で重い扉が開いた。

 ……引き戸だったようだ。

 カンダさんはその中に入っていく。

 私も着いていく。

 すぐそこの棚をカンダさんは指さした。


「卵ね。あと白だし。あ、酢もここにあるから」


 言いながら手に取ったカンダさんは冷蔵庫を出る。

 私も出る。

 これはどう閉めるんだろ?

 私が迷っているとカンダさんが肘で押すようにする。

 それで扉のロックが解除されたようでまた閉まっていった。

 なるほどなあ。

 卵のパックは二十個入りの大きい奴だ。

 洗い場に戻ってそれをまたコールドテーブルに置いていく。

 棚からボールを取り出し軽く洗い流し消毒する。


「二十個一度に全部使うから少し大変かも」


 彼は言いながら卵を割っていく。

 慣れているのか片手でどんどん割っていく。

 あっという間に二十個だ。

 それに白だしを入れていく。


「次はかまぼことタケノコ。一切れと一つまみを入れて」


 カンダさんは小さい、湯飲みの小さい版みたいなものにかまぼこ一切れとタケノコを一つまみ入れてから卵をお玉で掬って流し込む。

 それをバットに並べていく。

 大体十五個くらいのようだ。

 それをコールドテーブルの横にある棚のような機械を開けて入れ込む。

 開けた途端そこから蒸気が溢れ出た。

 蒸し器のようだ。


「ゆっくり蒸らすから三十分くらい。暑いから取り出す時は手袋付けてね」


 蒸し器の横には厚手の手袋があった。

 もう一度メモを確認してもらって、カンダさんは頷いた。


「大体これだけかな朝の仕込みは。あと十分くらいで開店だから大体これくらいの時間までに全部終わってたら大丈夫。終わらないなって思ったら茶碗蒸しだけは優先してねやってね。蒸し時間があるから。リカとかアラ汁は間に合わない時は最悪一つずつ用意しちゃうことも出来るから」


 なるほど確かに。

 カンダさんは言いながらコールドテーブルに腰を当てて楽な姿勢になる。


「ところでカワサキさんは何でバイト? 何か欲しいものとかあるの」


 おお世間話だ。

 コミュ力凄いな。

 私はここに来てずっと「はい」しか話していない。

 それでもかなり気合を入れてやっている。

 その「はい」だって大体先頭に「あ」を付けてしまっている。

 この質問に対しても謎に「ㇴ」という形容しがたい声を漏らしてしまった。

 なんだ「ㇴ」って。

 ヌじゃなくてㇴ。


「え、あ、バイク、免許、えと」


 何を言っているんだ私は。


「ああバイクの免許取るんだ。てことは、中型?」


「そ、そそそうです」


「何乗りたいの?」


「ニンジャ…の」


「ふ~ん。いいね」


 あ、この口ぶり、乗ってる人だな。

 何に乗っているんだろ。

 ま、聞けませんけどね。

 その時に店内の有線からチャイムが鳴った。


「開店だ。最初は静かだけど、三十分くらいで洗い物が来始めるから。初日頑張ろうね」


 私はそれに返事をする。

 私の初労働、スタートです。

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