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рассвет  作者:
これはただの女子高生だった私がストーカーと『英雄』に出会った頃のお話
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これはただの女子高生だった私がストーカーと『英雄』に出会った頃のお話:DATA 4

 そんなこんなで(どんなこんなで?)妙な生活が始まった。

 あの後私と両親は瀬戸さんと共に警察署へ。

 本人を交えてしっかりとした手続き。

 瀬戸さんの紹介の弁護士さんがいたからか手続きは円滑だった。

 その後合流した瀬戸さんのお仲間さんと共に夜まで普通に家で過ごし、夜中にお引越しを行った。

 あくまでも通常の日常を生きていると相手に思わせることが大事なのだという。

 夜中、最低限の荷物を持ち(私にとってゲーム環境全般はマジで最低限だった)引っ越した。

 とはいえ色々なものもあったのでそこそこな量に放ったがそれでもいったい何者なのか、一切の物音を立てずに引っ越しは終わった。(車のエンジン音はさすがにした)

 軍人と言うには、あまりにもエキスパート過ぎるとも思う。

 姿は、あまり思い出せない。

 何というか、視界から外れる立ち回りをされている感じで、全体を捕らえられていない。

 三時間くらいは、一緒にいたはずなのに。

 ともあれ、今はその翌日だった。

 絶賛私は負傷中だった。

 昨日のお引越しでばたばたとゲーム環境を運んだものだから見事に全身筋肉痛。

 昨日あれほど普通に過ごせと言われたばかりなのにだ。

 あまりにもこう、あれだ。

 用意された新品のベッドにうつ伏せになり、動けなくなる私。

 ゲームをしようかと手を伸ばすが届かないしさすがにどうも、やりにくい。

 うーん。

 好きに過ごせと瀬戸さんは言ってくれた。

 しかし、好きに過ごせと言ってくれるのと渡曽が無遠慮に過ごすのとでは全く意味が違う。

 悩ましい話だ。

 スマホで不登校高校生が異世界召喚されて死んだり死に戻ったりするラノベのweb版を見て過ごす。

 しかしおなかがすいたなと考える。

 両親は瀬戸さんの指示通りに朝早くに家に戻り、いつも通りの時間に出勤をしている、はずだ。

 朝私も見送ったが、不安そうな顔をしていた。

 そりゃ初めての所に娘を置いていくのは不安だろう。

 しかしまあさすがにここを件の男が把握するにはさすがに早すぎる。

 少なくとも今は、安心していいはずだ。

 何とか体を起こす。

 筋肉が悲鳴を上げていやがるぜ!

 ……頑張ります。

 立ち上がり、何とか扉の前へ。

 ガチャリと扉を開ける。

 扉の前に、瀬戸さんが立っていた。

 正確には扉の向こうの壁、私から見て扉から顔を出したときに右側に見える壁に寄り掛かって立っていた。


「うぎゃい!」


 そんな悲鳴を上げて私は尻餅をついた。

 そして襲う筋肉痛。

 私は悶えてしまった。


「何をしている」


 瀬戸さんの声だ。

 呆れた声。

 見上げるとまた眼球だけを動かした目で私を見下ろしている。

 背は(私と比較すると全てが高いが)そこまで高くないのになんだか、すごく上から見られている感じがする目だ。

 怖いなあ。

 瀬戸さんは目を瞑って鼻を鳴らす。


「尻餅ばかりついているなお前は。まあ、コケるってことは立っていた証拠だわな」


 言って彼はいつの間に近づいたのか私の首根っこを掴んで起こした。

 人を、軽く、持ち上げた?

 こいつ、人間じゃあねえ!

 ……思ったより力はあるようで。


「で、なんだ? 飯か? 筋肉痛だろ? 部屋にいろ。コンビニ弁当なら買ってある」


 ……意外と優しいのかな。

 いやでも初対面があれだしな……。

 失礼だけど。


「いえ、お水も飲みたいので」


「そうか。なら、こっちで食え」


 瀬戸さんは扉を開けてリビングへ入る。

 私もそこへ入る。


「あの、どうしてここに? てっきり今日は私しかいないものだと」


「お前自分が何でここにいるかわかってんのか?」


 ぎろりと睨む瀬戸さん。

 それだけで全身の肌が逆立つようになるのを感じた。

 委縮する私。

 瀬戸さんはため息を吐いた。

 彼は歩いて行って、カーテンを閉めた。

 外からの視界を遮るようにだ。

 ここは四階建てのマンションだ。

 見た感じかなりの富裕層が住まいそうな感じだ。

 だから外の視界など気にすることなどない。目の前には街並みが広がっているが少し、一歩下がっているような距離感だ。

 なので目が合うような建物はない。

 恐らく、瀬戸さんなりの気遣いなのだろう。

 電気の明るさを調整して、テレビをつける瀬戸さん。

 私はまだ委縮が抜けない。

 水を飲む手が震えている。

 それを見たのか瀬戸さんはもう一度ため息を吐いた。


「……さっきのはそういう意味の質問じゃねえってのはわかってる。悪かった」


「え?」


「言い出した俺が、他所にいるってのはおかしいと思ってな。少なくとも何度か会話した俺の方が初対面をぞろぞろ連れてくるよりはいいと思っただけだ」


 あ、この人は、確かに怖いけれど、悪い人では、多分ない。

 それを伝えることが極端に苦手なのだ。

 だからきっと、この人は……


「はよ飯食え。煙草吸いたいんだよ」


 なんだこの人。

 ジト目でめんどくさそうに見てくる瀬戸さん。

 落差が。

 胸キュン展開はなさそうである。

 お弁当を温める。

 ていうか、ベランダに出て吸えばいいのに。

 あ、そうか。

 窓からの視線を極力減らしたいのか。

 だから瀬戸さんは外で煙草が吸えないのか。

 う~ん。

 やはり、悪い人ではないのだろうが。

 温めたお弁当を持ってリビングの卓へ。

 座っていただきますと手を合わせるとその横に炭酸飲料のペットボトルがどんと置かれる。


「起き抜けの飯だ、先に多めに水分を取れ」


 あ、いい人だ。

 会釈して受け取り、ふたを開ける。

 瞬間、ぶしっ!と音を立てて蓋の隙間から炭酸飲料が噴き出した。


「……」


 絶望。

 筋肉痛で動きたくないのに着替えねばならぬ。


「ふん」


 鼻で笑い飛ばす瀬戸さん。

 わざと……!?

 実は悪戯好き?

 そんな属性なんていらないよ!


「昨日そのまま寝たろ。風呂入れよ。口実出来たろ」


 ああ、そういうわざと、ね。

 瀬戸さんがティッシュの箱を頭に置いてくる。

 何故そこに置くのか。

 手に取って体と机を拭いていく。

 ある程度拭いて、食べ始める。

 瀬戸さんは向かい斜めの椅子に座ってて、背もたれに腕を掛けてテレビを見始めた。

 不良っぽいなあ。

 そうしながら瀬戸さんはこちらを見ずに行ってくる。


「ま、言ったからには解決するまでは面倒見てやるよ」


「ありがとうございます。何から何まで」


「ふん。守ってやるって言ったからな」


 ……言ったか?

 言われたっけ?

 いや失礼だ、思い出さねば。


「言ってない気がする」


 瀬戸さんが自ら思い出したらしくそう言った。

 なんだこの人。

 私は少し考えて何も言わずにご飯を食べるのを再開。

 数分それを続ける。

 ふと気になり、私は聞いた。


「何歳か聞いてもいいですか?」


「あ? 十九歳」


「え?」


「あ?」


 瀬戸さんがこちらを見た。

 いつ外したのか眼帯を着けていないのを今気づいた。

 確かに、すごく幼い顔をしている。

 顔の傷を脳内で補完すると、同い年でも通じるかもしれない。

 しかし待て?

 十九歳?

 ん?

 ロシア特殊任務警察支隊(OMON)は、そんな年齢で入れる部隊か?

 んん?

 待て、この人。

 本当は何者だ?

 あの眼帯、その裏の傷。

 ただ者ではない。

 しかし、彼が名乗っている部隊は恐らく、少なくとも私が知る限りの警察支隊は、特殊部隊だ。

 それでは入れない。

 自衛隊で言えば十九歳は二士の年齢だ。

 どれだけ優秀でもそれは、厳しいのではないか?

 しかしバッジも持っている。

 あれは偽物には見えなかった。

 そもそもそれを名乗る理由もない。

 この人は、一体……?


「実は同い年くらいなんじゃないか?みたいな顔をしているが俺からしたらお前は八歳くらいにしか見えん。娘と同じか少し上くらいだ」


 なんだこの人。


「……女呼んでくる」

 そう言って瀬戸さんは部屋から出ていった。

 ていうか既婚者なんだ。

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