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ポンコツ公爵令嬢は変人たちから愛されている  作者: 大鳳葵生
第3章 ポンコツしかできないこと
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32話 猿園解放作戦開始

 私達が準備を整えている間に、オーロフが数人の騎士を引き連れてきてくださりました。


 そしてオルガお義姉様が連れてきてくださった二人のご老人。きっと強いのですよね?


「あら?」


 青い髪の長い槍を持った女騎士。見覚えしかないその騎士はこちらに向かって歩いてきましたわ。


「お嬢様? まさかお逃げになっていましたとは思いませんでした」


「マリア。久しぶり」


 そう、私の護衛のマリア。ナダルに置いてきたせいかかなり怒っている様子。


「いくら婚活の時間の邪魔とはいえ、お嬢様の護衛が私の仕事なのですよ!?」


「え? 怒り返していい?」


 確かに婚活の邪魔しかなりませんが、働き次第では紹介も考えましたのに。


「他の騎士の皆様もよろしくお願い致します」


 マリア他5名の騎士達。よく見ればジバジデオ王国に入国した際に出会ったバルトローメスもいらっしゃいます。


「では参りましょうか」


 今宵。襲撃を仕掛けましょう。正面突破で行きましょう。こんな場所で時間を使いすぎてしまいましたわ。増援を呼ぶのに五日も経過してしまい、グレイ様の生誕祭まであと百七日。


 最初は二百日近くあったはずでしたのにもう半分も時が過ぎてしまったのですね。これはいけませんわ。


 ですが、ここでお兄様を見捨てるという選択肢は私の一生の不幸となるでしょう。


 そして作戦開始の夜までの間。それぞれ四チームに分かれて王宮にある東西南北の四つの門から攻め込み、中央にある中庭猿園にたどり着いたら煙を焚き退散。


 まずは東門チーム。私、エミリアさん。


 西門チーム。エレナ、グレイ様、お義姉様、オーロフ、マリア、その他騎士一名。


 南門チーム。ジェスカ。


 北門チーム。その他の協力者の方々。バルトローメスもここです。


「ちょっと待ってくれ姫さん」


「何かしら?」


 チーム分けを聞いて不満そうなジェスカ。何か問題でもあるのでしょうか?


「何かしら? じゃなくだな。なんで俺だけお一人様なんだよ」


「……そうね。理由があるわ」


「理由?」


「チーム分けはエミリアさんにダーツで決めて貰いました! 私も後悔しているわ!」


 だって東門チームからおかしいじゃない!


 狙って投げすぎでしょ!?


 ですが、ジェスカの文句もよくわかります。これではあまりにジェスカが可哀そうですし、もっとみんな私を心配して欲しい。


 そう、戦力も何もわからないから運任せにダーツでチーム分けしたのが失敗だったわね。せめて私が投げて……私が投げて的にあたるかしら?


「何故くじにしなかったんだい?」


「……そうね。世の中、そういうものもありましたわね」


 ああ、違いますの。そのダーツで決めるって思いついた時にですね。これは面白そう! ってね。はい、反省しています。


「仕切り直しにクジでやりましょうか!」


「もう宵ですお嬢様。チームはダーツ通りで行きましょう」


「エレナ!?」


 ちょっと待ちなさいよ。私、ドMと二人?


 美女と珍獣になっちゃうじゃない。そもそもエレナのいる西門チームはグレイ様にお義姉様に騎士三名。ちょっと一人こちらに下さらない?


「ですがまあ、ジェスカ様もお一人はお可哀そうですので私がついていきます」


 いや、西門チームからエレナが南門チームに移ったところでって話じゃない。


 しかし、どなたも東門チームに来てくださると仰ってくださりません。


「グレイ様?」


「良い表情だよ?」


「くたばれ」


 どうやらグレイ様もこの状況を楽しんでいらっしゃる様子。しかし、ここで負けるわけにはいきません。


「あの、えっとほら! ほら!」


 え? この王子って何を言えば私に付いて来てくださるのかしら?


 なんだかわからないことを考えながら身振り手振りで話す私は、不思議な踊りをしているようにも見えるでしょう。


 私は真剣に焦っているのですけどね!


「何も言うことが思いついていないね。焦ってていい表情だよ」


 この変態をかどわかすのは不可能。常人と思考回路が逸脱しすぎているわ。


 そう思っていましたが、グレイ様はすっと私の前来てくださりましたわ。


「他の男が来るくらいなら、君のことは僕が守ろう。いいよねディートリヒ嬢」


「チッ……はい、問題ありませんわ」


 舌打ち、聞こえていますわよエミリアさん。ええ、まあ正直メンツは不服なのですけど、グレイ様とエミリアさんがいるのは、とても心強いですわね。


 エミリアさんって確か普通の貴族令嬢でしたね。心強さの根拠は何かもう珍獣感からだと思います。


 そしてそれぞれの東西南北の門に分かれて作戦開始となりましたわ。


 東門はどうやら兵士二名。グレイ様が先行しようとしたところで、エミリアさんがそれを制止します。


「王子殿下、ここは私にお任せください」


「そうかい? じゃあ頼むよ」


 エミリアさんは、私達から大きく離れた位置の木を、音もたてずに登り始めます。見たことありませんけど、猿でももう少し賑やかですよ?


「これは驚いた」


「今更ですけれどね」


「いや、スカートでも登るんだなって」


「今まで奇抜すぎて見落としていましたが、彼女は常にスカートでしたね」


 スカートで飛び回るだなんてはしたない。いえ、もうはしたないとかそういう次元じゃないから誰も何も言わなかったんですよね。


 枝に乗ったエミリアさんは今度はスリングを準備し、投石を開始する。


 私達から見て左側にいた兵士の頭部にヒット。右側にいた兵士がそれに気付き、投石された方向に走り去っていきましたわ。


 東門の前はがら空きとなりました。


「行こうか」


「え? ですが?」


 そういえばエミリアさんはわざわざ私達から遠くの位置にある木に登って……


「まさか囮に!?」


「いえ、もう脱出してきました」


 私の死角から突然声をかけてくるエミリアさん。普通に怖い。


「えぇ……でしたら行きましょうか」


 一人で囮となってくださるのかと思えば、まさかの脱出済み。投石と一緒に飛んできていませんか?


 若干ホラーなエミリアさんとご一緒にグレイ様についていって東門を潜り抜けました。果たして皆さま、ご無事でいらっしゃるのでしょうか?


 ジバジデオ王国の王宮内。赤黒いレンガ造りの壁が、窓の外から差し込む篝火かがりびに照らされています。


「ここからは慎重に行こうか。なるべく早く奥に行って猿園にたどり着きたいのはわかるけど、捕まっては元も子もないからね」


 そこからは索敵の練習をし続け、様々な守備を潜り抜けられるまで熟練を重ねたエミリアさんを筆頭に……この能力もすべて私のベッドに入る為って考えると悍ましいわね。


 周囲の音を敏感にとらえ、的確に人のいない道を選んで進むことができましたので、ひとまず感謝することにしましょうか。


「お姉様、王子殿下。限界ですね。左右どちらも人がいます」


「そうかいご苦労」


 どちらに行っても戦闘となれば騒ぎで人が集まりかねませんわね。そういえば、未だに王宮内は静寂を保っていますが、まさか他の皆様は侵入失敗してしまったのでしょうか?


 しばらくしますと、兵士たちが騒ぎ始め、南門の方から侵入者だという声をだし、左側の通路の兵士たちがいなくなりましたわ。


「左側に人がいなくなったね。行こうか」


 南門。ジェスカとエレナの二人でしたね。どうやら無事侵入することができたみたいね。


 ひとまずの安心と、侵入がバレ増援に行った兵士たちと戦うことになるジェスカたちを心配しつつも、目的の為中庭に向かい走り……いえ、私はグレイ様に横抱きにされていますね。


 とにかく、私達は急いで中庭に向かいましたわ。


 途中、複数の兵士たちと出会いましたが、そこはエミリアさんとグレイ様。危うい様子もなく先制しつつも、切り抜けていきましたわ。


「中庭も近いね。急ごうか」


 そして中庭までたどり着くと、そこには聞いた通りの光景が広がっていましたわ。


 広い広い鉄柵に入れられた複数人の全裸にされた人々。看板には大きくアルデマグラ猿の文字。


「そうでしたわ。お兄様はきっとこの中に」


 しかし、中庭が想像以上に広く、全裸にされた人々も数十人を超える人数。中には女性や子供。赤子までいらっしゃいます。


 あの子はきっと、ここで生まれたのよね。


「グレイ様、これってお兄様を助けて解決とは言えませんよね」


「君がそう思うなら、そうじゃないかな?」


 乗りかかった船です。全員まとめて解放しちゃいましょう!

久しぶりに更新しました。


待ってたって言ってくださる方がいらっしゃるとうれしいですね。


今回もありがとうございました。

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