↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
33/84

特別話②『星降る宿屋の一日』

朝。


星降る宿屋は、

焼き立てパンの香りで始まる。


「リア、パン焼けました」


「はーい!」


まだ少し眠そうなリアが、

階段を降りてくる。


暖炉には小さな火。


窓から差し込む朝の光。


静かな時間だった。


「……いい匂いです」


ミアが少し嬉しそうに笑う。


最近、

パン作りが少しずつ上達してきた。


するとセリアが大きく伸びをした。


「朝飯まだー?」


「起きて最初がそれですか!?」


リアがツッコむ。


そんなやり取りをしながら、

レインは自然に朝食を仕上げていく。


昼。


冒険者たちが帰ってくる時間になると、

宿は一気に賑やかになる。


「リアちゃーん! 飯!」

「ミア、水お願い!」

「……シチュー」


暖炉前には、

いつもの常連席。


ガルド。

ユーリ。

ディオ。


最近では、

誰もそこを取ろうとしない。


完全に定位置だった。


午後。


カラン、と扉が鳴る。


「……こんにちは」


ミリアだった。


仕事前らしく、

少し疲れた顔をしている。


「ミリアさん!」


リアがぱっと笑顔になる。


すると。


「今日は甘めの紅茶にしてます」


レインが自然にカップを置いた。


「……なんでまだ何も言ってないのにわかるんですか?」


「疲れてそうだったので」


「ほんと不思議な人ですね……」


ミリアは苦笑しながら紅茶を飲む。


そして小さく息を吐いた。


夕方。


宿は一番賑やかになる。


笑い声。


料理の匂い。


暖炉の火。


誰かの「おかえり」。


少し前まで、

静かだった宿。


でも今は違う。


誰かが帰ってきて。


安心して。


笑っている。


夜。


最後の客を見送った後。


「お疲れ様でしたぁ……」


リアがカウンターへ突っ伏した。


ミアは静かに食器を片付け、

セリアは暖炉前でくつろいでいる。


すると。


「どうぞ」


レインが自然に全員分の紅茶を置いた。


「……なんかいいですね」


ミアが小さく呟く。


暖炉の火が揺れる。


穏やかな空気。


安心できる時間。


リアは静かに笑った。


「うん。私もそう思う」


星降る宿屋。


それは今日も、

誰かが帰ってくる優しい場所だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。