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獣人の街で流行りのカフェは、推しからファンサが貰えるようです。  作者: 大木悠樹


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聞いてない!

今回はタイガくん視点です!

店長の子どもが、無事に生まれたという連絡が、仕事のlimeグループで届いた。


お祝いのメッセージが一通り送られたあと、店長の出勤時間が26日からしばらくの間は、朝からランチタイム終わりの13時出勤になることが伝えられた。


元々29日~1月3日は年末休みで、店長が午後いなくなっても大丈夫な様に、ナポリタンとオムライスの研修が始まる予定だった。


しかし、子どもが思っていたより、3週間早く生まれてしまった為、26日から俺の研修が始まることになった。


ビーフシチューを温めるだけから、やっと卒業できる!

俺はこの時を楽しみにしていた。


26日、普段は店長だけが8時半に出勤して、仕込みを始めてきたが、今日からは俺も8時半出勤だ。


気合いをいれて出勤すると、そこには店長ともう一人白髪の70代位の男性がいた。

始めて見る人だ。


「初めまして、マモル=ステインといいます。今日から、ピーニャで働くことになりました。よろしくお願いします」


「……よ、よろしくお願いします」


あれ?ステインって確か……。


「こちらのマモルさんは、外国で長年、創作料理店をやっていた大ベテランの料理人さんだよ!本当は2日後からの出勤だったんだけれど、早めにきてもらったんだ!11時から16時までのピンチヒッターではいってもらうよ!それと、モナちゃんのおじいちゃんだよ!」


やっぱり、ステインって、モナちゃんのステインか……。

モナちゃんのおじいちゃんが、同じ職場に入るなんて聞いてないけれど!


「もう年を取って、息子に任せていましたから、こちらに引っ越してきて、久しぶりにお客様への料理を作ります。長年料理には携わっていましたが、ここの職場は始めてですから、お手柔らかに。孫がいつもお世話になっています」


にこやかに微笑んでくれているが、孫がいつもお世話になっていますって、俺達の関係を知っているのか!?

それとも、ただの挨拶なのか!?


モナちゃんから聞くまで、下手なことは言えない。

俺はもう一度、よろしくお願いしますと頭を下げると、早速店長の研修が始まった。


マモルさんが気になって、料理に集中できない!

いや、余計なことを考えている、俺が悪いんだけれども。

両手で頬を、ばしんと叩く。

気合いを入れろ。


飲み物やデザートは、普段からホール担当も俺も盛り付けをやっていたから、今は省略で、後から俺がマモルさんに教えることになった。


今教わるのは、メインメニューのうち2つ。

ナポリタンとオムライスだ。

仕込みは、変わらず店長がするそうなので、俺とマモルさんは、ナポリタンを炒める工程や、オムライスの火入れを教わる。


店長の腕は凄い。

いつも食い入るように見ているが、メモを片手に、じっくり見させてもらうと、鍋を振るうのにも、確かな技術があることがわかる。


「一度見てもらったから、それぞれにやってみてもらおうかな」


俺とマモルさんは、まずナポリタンを作ることになった。

ソースは仕込んであるので、具材を見本と同じ大きさに切る。

見本と同じ火加減で炒め、ソースや調味料で味をつける。


基本はこれだけなのに、店長、俺、マモルさんが作った物を比べると、全然違った。

店長とマモルさんは見た目に、ほぼ違いがない。

俺は具材が不揃いなのが、目に見えてわかる。


こんなに違うのか……。


「じゃあ、味見してみるね!うーん、タイガくんは初めてにしては良いと思うけれど、お客様にはまだだせないね。練習あるのみかな!マモルさんは、ほぼ完璧!ただもう少し、焦げ目を意識してもらえれば、もっと良くなると思います。2人も、3つをそれぞれ味見してみて!」


俺とマモルさんも、店長のナポリタンから順番に味見する。


「ほんとだ……。同じ味付けなはずなのに、全然違う」


「なるほど。焦げ目も味付けの一つということですね」


「そうそう!レシピも後で紙で渡すし、完成品の写真も渡すね!じゃあ、オムライスで同じことをするよ!」


オムライスこそ、料理人の腕が物を言う。

うちのカフェのオムライスは、ドレスドオムライス。

見た目が美しいのも大事だ。


店長のオムライスは、完璧な仕上がり。

俺のオムライスは、穴が空いた。

マモルさんは、ドレスドオムライスを見たことも作ったこともなかったようで、店長のを見ながら感心していた。

少し不恰好になったが、ほぼ完璧だった。


「卵の量もチキンライスもソースのビーフシチューも同じだから、味は2人ともお店の味だね!オムライスは、見た目が完璧ならお客様におだしできるよ!」


その見た目を美しくするのがどれだけ大変か、俺はコツを掴むまで、かなりかかると思う。


店長が他の仕込みをする横で、マモルさんはナポリタンを、俺はオムライスを順番で作り続けた。

途中で、ナポリタンのソースの作り方、チキンライスの作り方の分量も聞いたから、これで店長がいなくても練習ができる。


時間が過ぎるのが早い。

黙々と作業すると、あっという間に、他のスタッフの出勤時間になる。


マモルさんは、モナちゃん以外、全員に驚かれていた。


「あれ?言ってなかっけー?ごめんねー。サプライズってことでー!」


店長の、ゆるい笑い声が聞こえる。

俺達が作ったものは、スタッフの賄いになった。


13時を過ぎ、店長が帰った。

ナポリタンは、焦げ目を上手く作れるようになったマモルさんが作り、オムライスは今日の分は、提供終了ということになった。


俺が美しく作れれば、提供できるのに。

最初よりは上手くなっているが、まだまだ美しくできない。

頑張らないと。


悔しい気持ちを抑えながら、ビーフシチューをかき回す。


ランチタイムが終わり、少し余裕が出来たので、マモルさんに、飲み物やデザートの作り方を教えた。

種類が多いから、混乱しているようだった。


「覚えることが多いから、大変ですよね」


「年を取ってから、覚えることが大変になってきてね……。何度も聞いてしまって、すまないね」


「いえ、俺もナポリタンやオムライスは、まだまだなんで。お互い様ですよ」


16時を過ぎ、マモルさんも帰ったので、ナポリタンも提供終了になった。


お客様から、ナポリタンとオムライスを楽しみにしていたのにと言う声も聞こえた。

悔しい。


19時を過ぎ、閉店後、俺は鍋を振るっていた。

マモルさんは、16時までだから、ラストまでいる俺が、ナポリタンもオムライスも作れるようにならなきゃ。


ふと、時計を見ると21時だ。

しまった。

この大量のナポリタンやオムライス、どうしようか。


「タイガさん」


ホールから声がした。


「モナちゃん?こんな時間までいてくれたの?」


「タイガさんに声をかけても、反応がなかったので、宿題をして待っていました!」


「気付かなくてごめん!もう遅いし、送るよ」


店には、俺とモナちゃんの2人だけだった。 ナポリタンとオムライスは、分けて持ち帰ることにした。

明日の朝ごはんまで、十分な量がある。


俺は、タクシーを呼ぶ間、モナちゃんと話すと、それだけで、焦っていた心が、癒されたのを感じた。


「……あの、タイガさん。実はおじいちゃんには、タイガさんとお付き合いしていること、まだ伝えられていなくて……」


「そんな気はしてたよ。大丈夫、タイミングが来たら伝えよう」


モナちゃんは、安心して頷くと、タクシーに乗って帰っていった。


やっぱり、伝えてないよな……。

自分で言っといてあれだけど、タイミングっていつだよ……。

料理も恋愛も難しすぎる……。


俺は、もやもやとした気持ちを抱えながら、家へと帰った。


実は、これまでの投稿してきたものが、余りに拙く読みづらかったので、改行したり、描写を追加したりしました。

大きな変更点は、モナちゃんにセクハラした件で、店長がモナちゃんにしっかり謝った所を追加した位だと思います。

いつも読んで頂き、ありがとうございます!

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