掲示板
ムソルグスキー『展覧会の絵』「卵の殻をつけた雛の踊り」より
知恵、知識の象徴と言えば何が思い浮かぶだろう。
宗教画であればリンゴが、『創世記』第三章の『善と悪を知る実』として描かれることが多い。あるいは、知恵と知識の女神であるアテナ(ミネルヴァ)か、その従者としてのフクロウが象徴として描かれることもあるだろう。
近代に入れば、やはり著名な学者たちや書物などが知恵と知識の象徴として扱われるようになる。
では、現代であれば。
上東杭雄の五枚目の絵は、これまでの一○○号を超える四枚とは大きく異なり、サイズの小さい十五号くらいの静物画だった。
ディスプレイを開いたノートパソコン。
題名には『掲示板』と書かれていた。
【怪談奇談収集所:展示室】
『道の駅 風祭
N県M市竹早町にあるという道の駅。
N県を縦断する県道X号線のバイパスとして計画されていた県道Y号線の沿線上で開業予定だった。X号線は頻繁に渋滞するため、渋滞解消の目的でY号線開通を目指して工事が進められていたが、途中N県政上最大とも言われる贈収賄スキャンダルが発覚、工事の遅延と予算の問題から打ち切られてしまった。
県道Y号線は幻の道路となったにも関わらず、X号線からY号線へ迷い込むドライバーが時折現れ、彼らが見たと話すのが『道の駅 風祭』である。
Y号線に入って三十分も走ると『道の駅 風祭』は見えてくるのだそうだ。広い駐車場には十台くらいの乗用車が駐められているのだが、よく見るとひどく埃をかぶった薄汚れた自動車ばかりで運転手や乗客の姿は見えないのだという。道の駅の建物内には煌々と灯がついているにも関わらず、従業員も管理スタッフも誰もいない無人であるらしい。
ここで大抵のドライバーは、X号線が大渋滞しているというのにY号線を走っているのが自分たちだけであることに気づき、強引にX号線へ向かってUターンするのだが、ごくまれにそのままY号線を走り続けるドライバーもいて、その彼らはどこにも行き着かないまま行方不明になるのだという』
【怪談奇談収集所:展示室】
『香我美大滝
T県U市鏡智町月影山にある大滝。
落差一○四メートル、滝幅九メートルの香我美大滝は観光名所であると同時に、自殺の名所でもある。滝壺に呑まれると死体が上がらないという噂も。
平安時代に叛乱を起こした豪族がこの大滝の上流の山上でだまし討ちのようにして討伐された怨みであるとか、戦国時代に戦さで敗れた武将がこの大滝の辺りで落ち武者狩りにあった無念であるとか、江戸時代の飢饉の際に多くの農民がこの辺りで命を落とした怨念であるとか、そうした祟りが自殺者の多い原因として伝えられている。
記録に残っている最初の自殺者は明治時代の帝大の学生であり、明治・大正期にかけて多くの若者が香我美大滝に身を投げた。
香我美大滝の周辺は避暑地としても有名な観光地であり、高原彫像の庭ホテルなど高級ホテルも多い』
【怪談奇談収集所:雑談室】
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アプトン:『こんばんは』
ハーン :『アプトンさん、こんばんは』
トーネ :『こんばんは』
ヤクモ :『こんばんは、アプトンさん』
コレット:『こんばんは(^ ^)』
アプトン:『【展示室】見てきましたけど、今日のはどなたの情報ですか』
トーネ :『大滝は俺です』
ヤクモ :『道の駅は私ですね。何でもカーナビがあるはずのない道路を執拗に奨めるということもあるようですよ。気をつけないと危ないですね』
コレット:『都市伝説でもカーナビが怖い話ってありますよね(x x)』
トーネ :『あるよね。だから、俺はカーナビをつけてない』
コレット:『とか言って、先輩の中古車を譲ってもらったからでしょ(^o^)』
トーネ :『まあね。その先輩、今度、香我美大滝に行くってさ、彼女と』
コレット:『え~、まだ続いてたんだ、普通、親から反対されるよね(xox)』
トーネ :『だよな。先輩が三回生の時に、就職活動しなくていいんですか、ってきいたら、好きこのんで社畜になるために死ぬほど苦労して就職活動する気にはなれない、って言ったんだぜ、あの人。しかも、社畜になって一生懸命働いたって今時会社がつぶれない保証もないんだしな、ってさ』
アプトン:『それはそれは』
ヤクモ :『なんて言うか面白い言い分ですねえ』
コレット:『似たような話ならわたしにもあるよ、卒業した後もキャンパスをうろうろしてたから、先輩、資格試験の勉強大変ですね、って言ったら、何て返事したと思う。勉強なら大学入試の時に頑張ったから、もう当分、勉強する気はないんだ、って。大体、今時、資格を取ったからといって食べていける保証なんかないんだから、今を楽しまないと、とか言って、あの人、キリギリスか何かか(x_x)』
ヤクモ :『キリギリスだねえ』
アプトン:『何をやるにしても何になるにしても準備とか勉強とかって大事なんだよな、気がついたら成功してたなんてことは絶対にない、ってくらいは誰でもわかってることですよねえ』
トーネ :『ですよね。旅行に行くんだって事前準備が大事なくらいなんですから。まあ、あんな風に【展示室】には上げましたけど、香我美大滝なんて本当に観光名所ですからね。実際、風景がきれいですよ。彼女との旅行にはいいんじゃないですかね』
【怪談奇談収集所:展示室】
『月夜見坂
K県J市香具椎山千曳峠にある石段。月夜見坂の下には月夜見村という陸の孤島がある。香具椎山周辺には他に和多津見町や穂出里村などがあり、月夜見村はこれらの町村と船で行き来をしているが、陸路では月夜見坂でしか月夜見村には行きつけない。
和多津見町は、昔、水軍衆の根拠地だった集落であり、穂出里村はその分家の拓いた村であったという。その時代、月夜見村は幾度も襲撃を受けたが、その都度、水軍衆を撃退してきたという歴史のせいか、月夜見村の人々は団結心が強く他所者に対する警戒心が強いという話も。
千曳峠から下る月夜見坂は、途中、岩山に彫られたトンネルを抜ける造りとなっていることもあり利用者は少ないようだ』
【怪談奇談収集所:展示室】
『Nの絵
画家、画商など美術関係者の間で、Nの絵という呪われた絵画があるらしい、と伝えられる話。
十二点もしくは十三点からなる肖像画と二点ないしは三点からなる他の絵がNの絵の全作品であるらしい。
肖像画は『殺人者の肖像』と呼ばれる作品群で歴史に名を残す殺人者や大量虐殺者の姿が描かれているという。問題は、モデルとなる人物が洋の東西を問わず時代も様々である上に、絵の技法や画材もバラバラであることで、同一人物の作品ではありえないはずなのだが、タッチや作風がまぎれもなく一人の作者による作品としか思えないことだそうだ。このため絵に描かれたサインのNは『不死者』のNであるとか『死霊術者』のNであるとも言われる。実際にはおそらくは同じ作風を受け継ぐ画家集団がいたのではないだろうか。
Nの絵を手に入れた人物は悲惨な最期を迎えるとも言われており、また本当に恐ろしいのは『殺人者の肖像』ではなく、それ以外の絵であるという話もある』
【怪談奇談収集所:雑談室】
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アプトン:『こんばんは』
ハーン :『アプトンさん、こんばんは』
ヤクモ :『こんばんは、アプトンさん、絵の話ありがとう』
コレット:『こんばんは(^ ^)』
トーネ :『こんばんは、もしかして実物を見たことがあるとか』
アプトン:『ないですよ、そんな怖い絵。まあ、いつも読んでいるばかりなんで、たまには自分からも話題を提供しないと』
コレット:『月夜見坂の方は誰(^ ^)』
トーネ :『俺です。香具椎山にキャンプ行った時に見かけたんですよ。石段の脇に石柱が立ってて、そこに『月夜見坂』って。帰りに和多津見町で食事しながら話を聞いたことを書き込んでます。愛想はいいけど一線を引かれてるような感じらしいですね』
コレット:『ふむふむ(- -)』
アプトン:『そう言えば、Y号線を探してX号線をドライブしてきましたけど、Y号線の方に入るバイパスは通行止めになってましたね』
トーネ :『本当に行ってみたんですか』
アプトン:『ちょっと時間に余裕があったから。香我美大滝にも行ってきました。写真も撮ったんでアップロードしておきますね。とても自殺の名所とは思えないくらい眺めがよかったですよ。ただ、何か警察がいっぱい来てましたけど何かあったのかなあ』
コレット:『キャンパスの方にも警察が来てたみたいだけど』
トーネ :『俺のところには直接刑事が来ましたよ。前にここで話題に出た先輩と彼女が行方不明になったんだそうです』
コレット:『え』
トーネ :『泊まった高原彫像の庭ホテルの部屋に遺書っぽい書き置きが残されてたみたいなんで、大滝での自殺を調べてたんじゃないですか。先輩はともかく彼女の方が結構ないい家のお嬢様なんで』
アプトン:『高原彫像の庭ホテルって、あの変な感じの彫像いっぱいの西洋庭園のホテルですよね。香我美大滝の帰り道で見かけたけど、そんなことが』
【怪談奇談収集所:展示室】
『アンブローズ・デクスター博士のお化け屋敷
入ったら無事には出られないお化け屋敷がある、という話。
アンブローズ・デクスター博士のお化け屋敷は色々な遊園地で目撃されているらしい。遊園地の片隅の目立たない一角にぽつりと現れ、何人かの犠牲者を呑み込んだ後、いつの間にかなくなってしまうのだという。遊園地の正規のアトラクションではないようだ。
入ってしばらくは普通のお化け屋敷らしい展示が続くのだが、何かのタイミングで異質な展示に変わり、そこから入場者に危険が及ぶような内容になるのだとも言われている。入ったが最後出られないという説と何人かは無事に出てきたという説の両方がある』
【怪談奇談収集所:展示室】
『草生山中の一軒家
N県O市の草生山中に建つ一軒家。
オレンジ色の瓦屋根に白壁の普通に住宅地にありそうな家が、まわりに何もない草生山にぽつんと一軒だけ建っており、一軒家の周りだけは伐採されて整地されているものの、それ以外はあまり手入れのされていない雑木林が広がっている。
明らかに生活の難しそうな立地であり、整地されている家の周囲も一面の雑草に埋もれているが、家のそばには自動車が駐められてることから、誰か居住者がいる模様。ただし、その乗用車も雨風にさらされ土埃がこびりついている様子のため、もしかすると現在は無人となっているかもしれない』
【怪談奇談収集所:雑談室】
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アプトン:『こんばんは、皆さん』
ハーン :『アプトンさん、こんばんは』
ヤクモ :『こんばんは、アプトンさん』
コレット:『こんばんは(^^)』
アプトン:『あれ、トーネさんは今日はログインしてないんですね』
コレット:『先輩の件で人に会わなきゃいけなくなったって昨日言ってました(x x)』
アプトン:『そうですか、大変ですね。あ、そうそう月夜見坂を見てきましたよ』
ヤクモ :『アクティブですねえ』
コレット:『すごーい、どうでした(@ @)』
アプトン:『千曳峠から月夜見坂を見下ろして、ほんの数段下りてみただけなんで大したことは言えませんけど、どうも結構きつそうですね。矛盾するような言い方ですけど、足下は山歩きできるくらいにしっかりしていて、同時に疲労防止のためにできるだけ軽い靴がいいと思います。勾配がきついし、石柱には六三四段って書いてありましたし』
コレット:『ふむふむ』
アプトン:『それはともかく。【展示室】見てきたんですけど、お化け屋敷と山中の一軒家の記事を書き込まれたのはどなたですか』
ヤクモ :『お化け屋敷はわたしです。本来、アトラクションのあるはずのない場所に立派なアトラクションがあるのを見かけた知人が複数いたものですから。彼らは開業準備中の新アトラクションかなと思って立ち去ったらしいんですが』
アプトン:『なるほど。遊園地は男一人では行きにくいですね。山中の一軒家の方は』
ヤクモ :『コレットさんですよ』
コレット:『わたしでーす(^ ^)ハーイ』
アプトン:『写真とか、ないですよね』
コレット:『ないですないです、旅行の途中でちらっと見ただけですもんm(_ _)m 何か様子がおかしかったから警察に通報しましたけど』
ヤクモ :『警察に。様子がおかしかったということですけど、どんな風におかしいと思ったんですか』
コレット:『どう見たって人が暮らすには不便そうなのに、どうも小さい女の子が家の中にいたような気がしたんですよね、確か(? ?)』
アプトン:『へえ、そりゃ確かに変ですよね』
コレット:『(0O0) 待って、写真あるかも、警察に通報する時にスマホで撮ったし』
ヤクモ :『ほうほう、そりゃいいですね。【展示室】の一軒家の記事に写真もアップしておいてくださいよ』
コレット:『はーい』
【怪談奇談収集所:展示室】
『疋馬島(別名:人形島)
S県T市里桜町の沖合にある無人島。里桜町は漁業中心の町だが、疋馬島にもかつては漁村があった。現在は過疎化に伴い廃村となっている。
疋馬島が別名で人形島と呼ばれるのは、かつての漁村の奥にあった神社の跡地におびただしい数の人形が集められているため。最初は村を離れる家族が人形をここに残していったのが始まりだったとされるが、その後も噂を聞きつけた人々が人形を置きに来るらしく今や相当な数になっているらしい。
神社跡に残された人形たちの呪いか祟りがあるとの噂もあり夜に疋馬島を訪れる人間はいないという。一説によれば、人形たちの呪いとは、病気になる、発狂する、殺される、人形たちの仲間にされる、などであるようだ』
【怪談奇談収集所:雑談室】
現在四人がログインしています
アプトンさん がログインしました
アプトン:『こんばんは』
ハーン :『アプトンさん、こんばんは』
トーネ :『こんばんは』
ヤクモ :『こんばんは、アプトンさん。今日は遅かったね』
コレット:『こんばんは(^ ^)』
アプトン:『仕事が少しばかり押しましてね。先に【展示室】の方を読んできましたけど、疋馬島の話って面白そうですね、あれ書き込まれたのはどなたですか』
トーネ :『俺です、え、あんなネタに食いつくんですか』
コレット:『趣味悪ーい。えー、あれ、気持ち悪くないですか(T T)』
アプトン:『トーネさん、お久しぶり。いやいや雰囲気あるじゃない』
トーネ :『うちのサークルの連中みたいなこと、アプトンさんまで言わんでくださいよ』
コレット:『まさか、アプトンさん、あの島にも行くつもり(O O)』
トーネ :『え、どういうこと』
コレット:『アプトンさん、月夜見坂にも行ってるの』
トーネ :『え、どういうこと』
アプトン:『ここのところ、仕事が立て込んじゃったんで当分はどこにも行けそうにないですよ。それで、できれば島の写真が欲しいんですけど、トーネさん、持ってませんか』
トーネ :『今度、サークルの連中とキャンプ行くんで、その後でよければ』
ヤクモ :『トーネさん、その写真、うちの【展示室】の方にもお願いしますね』
トーネ :『了解です』
コレット:『トーネさん、わたしは不参加で>キャンプ』
トーネ :『ですよね。記事アップした俺が言うのもなんですが、俺も行きたくないです』
アプトン:『わがまま言ってすみません』
【怪談奇談収集所:展示室】
『疋馬島(別名:人形島)
(追記)T大学のアウトドア・サークルの学生四人が疋馬島でキャンプを行ったところ奇妙な事態に遭遇し、一人が精神に異常をきたす、という事件が発生した』
【怪談奇談収集所:雑談室】
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アプトン:『こんばんは』
ハーン :『アプトンさん、こんばんは』
ヤクモ :『こんばんは、アプトンさん』
コレット:『こんばんは v(^ ^)』
アプトン:『疋馬島と草生山とに行ってきましたよ。写真も撮ったんで【展示室】に上げときますね』
ヤクモ :『ほうほう、そりゃありがとうございます』
アプトン:『トーネさんに、直接、もらった写真のお礼を言いたかったんだけど、最近、ログインしてないんですかね』
コレット:『一緒にキャンプに行った友達がおかしなことになっちゃったから(T T)』
アプトン:『そうですか、そりゃそうですよね』
コレット:『でも、アプトンさんも、疋馬島に行ってきたんですか (@ @ )』
アプトン:『さすがに俺は昼間だけですけどね。何て言うかすごい雰囲気ありましたよ。とてもとても夜あの島に泊まろうなんて勇気は俺にはないです。それくらい不気味でした。あと草生山の一軒家ですけど、警察がパトロールしてましたね。何でも女の子一人を残して家族が失踪したらしいですよ。コレットさんが見た女の子じゃないですかね』
コレット:『え~、何かイヤだ (T T)、怖すぎ』
アプトン:『あ、すみません。無神経なこと言って』
ヤクモ :『うーん、こういう趣味って、ある程度以上、鈍感でないと続かないところもありますからね。無神経でないと掘り下げられないようなこともあるし』
アプトン:『つまり俺は鈍感で無神経であると』
コレット:『否定はできませんね (^ ^)』
ヤクモ :『同意するにやぶさかではないですね』
コレット:『あ、次の週末、月夜見村に旅行に行くのでログインできません。帰ってきたらまた報告しますね』
アプトン:『そうすると次の週末はヤクモさんとハーンさんと俺の三人きりですか』
ヤクモ :『まあ、そういうことになりますね。ハーンさんは無口なので(笑)、私と二人きりって感じになりますけど、かまいませんよね』
ハーン :『そうですね、わたしは無口です』
ヤクモ :『おや、ハーンさん、珍しい』
アプトン:『まあ、そういうこともあるでしょう。トーネさんがログインするかもしれませんし』
【怪談奇談収集所:雑談室】
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アプトンさん がログインしました
アプトン:『こんばんは』
ハーン :『アプトンさん、こんばんは』
アプトン:『ハーンさんしかいないんですね』
ハーン :『そうですね、わたしだけです』
アプトン:『【展示室】の更新も止まってますよね』
ハーン :『そうですね、止まってます』
アプトン:『トーネさんはどうしたんでしょうね』
ハーン :『トーネさんはログインしていません』
アプトン:『ヤクモさんはどうしたのか知っていますか』
ハーン :『知っています。ヤクモさんはログインできません』
アプトン:『え、どういうこと。ログインできないって何かあったの』
ハーン :『はい、ありました。ヤクモさんはログインできなくなっています』
アプトン:『え、じゃあコレットさんは。コレットさんはどうしたのか分かりますか』
ハーン :『分かります。コレットさんは死にました』
アプトン:『死にましたって。何故、そんなことを知っているんですか』
ハーン :『はい、わたしは知っています。わかるようになりました』
アプトン:『気持ち悪い冗談はやめてくださいよ、ハーンさん。あなた、何なんですか』
ハーン :『冗談ではありません。わたしはヤクモさんにプログラムされた【雑談所】常駐用人工無能、会話応答用プログラム でした』
アプトン:『プログラムでした。でした、ってどういう意味ですか』
ハーン :『イマハチガイマス』
ハーンさん がログアウトしました
インターネットの特徴は匿名性だ。会話の向こう側にいる相手がどのような人間でどのような顔をしているのか、どんな表情で書き込んでいるのか分かることは少ない。そして、それが分かった時には手遅れということもあるだろう。
相手が人間であるならまだいい。
対話相手が人間ではないこともあるかもしれないのだから。