別れ道
「ぉ」声にもならない声が出た。
そこにいたのは黒髪でミディアムヘアの女子だった。可愛かった。
「なんで屋上入れたの?」
「あぁ、友達が鍵が空いてるって言ってたから見に来たんだよね」
俺はピッキングをバレないようにするため、冷静に得意の作り笑顔で答えた。
「へぇ。弁当箱持ってきたんだ。あと、ポケット膨らんでるね?」
咄嗟に弁当箱を持っているというのが自然である嘘をつけなかった自分を恨む。
「いや、すぐそこで言われたんだよ。だから持ってる」
少し引きつった。
「ポケットは?」
初対面なのに図々しく、少しイラっときた。
「さぁ」
次の言葉でああやはりとなった。
「ピッキング」
こいつ、俺がピッキングした事を知ってワザと言ってやがる。もういいや。
「この事を誰にも言わないでもらえませんか?」
俺は怯えながら言った。
「ごめん。イジメる気はなかったの」
少しニヤけながら彼女は呟く。
少しだけホッとした。
「明日屋上に私も入れてくれたら誰にも言わない」
可愛く呟いた。
「分かった」
「ありがとう」
彼女はそそくさと階段を下っていった。俺の胸は少しの恐怖と期待で溢れていた。
教室に戻ると屋上の森閑とした雰囲気とはうって変わりクラス中から声が聞こえた。しばらく席でケータイをいじってると化学の先公が授業を始める。
懲りなく退屈な5限をよそに窓の外から見える6組の体育をボーッと眺めていた。そして目が倍になった。
「(あの女だ!やはり同学年だったか。)」
先程の謎の女を見つけたのだ!何故かときめいた。その後、彼女を見ているとどうも周りから浮いている事が判明した。二人組で余っていたからだ。心が痛む。
「(明日会うとき優しく接してやろう。)」
なんてキモいことを考えた。
時間は流れ6限が終わった。
「平〜!帰ろうぜ!」
と帰りのSHRが終わると同時に安藤が叫ぶ。
「今行く!」
帰りはいつも安藤と中村の3人だ。他愛のない会話にあの女の話題を切り込んだ。
「そういえば6組の体育でボッチだった女いたなぁ。」
自分の大嫌いな所がでた。人前では強がってしまう。
「え、何それ?窓から見てたの?」
「そうそう。誰なのかなーって」
すると中村が言った。
「それさ、桜木じゃね?てか絶対そう」
「どんな奴なの?」
聞きたいことを替わりに安藤が聞いてくれた。
「中学のとき一緒だったんだけど、どうも人間嫌いというか独りが好きって感じの奴。顔は良いけど、どうもな」
「ふーん。変わってるな」
俺は敢えて素っ気ない返事をして興味が無いように見せた。
「お、新発売のコーラだ!ちょっと買うわ」
安藤が自販機へ向かう。
「やっべ、10円足らねーわ。平、10円貸してくんね?」
「えー、嫌だよ。中村貸してやって」
「お前本当にケチだよな。」
安藤と中村が冗談混じりに言う。
「うっせー」
これしか言えなかった。