58折れる
「申し訳ありません。まさかそこまでそちらにご迷惑を御掛けしているとは……。
商人組合にも、慰謝料の支払いをさせて頂きたいのと、署名されている武器防具職人達に、直接私の方から謝罪をさせて頂きたいのですが……。」
呆然としながらメリダはそう口にした。
「『加害者側の冒険者達を野放しにしたまま、
謝罪して理解を求める』と?」
と、イシス。
「いえ、始めは冒険者同士のいざこざという解釈でしたが。
そもそもそこに誤りが有りました。
こちらの処罰としては加害者全て銅ランクに格下げにいたします。」
「鍛冶師ヨシアは首謀者四名の冒険者組合の除籍を求めています。」
「それは………それを行うと四名を街から追放することになります。」
と、メリダ。
ん?どういう事?
「すみません。それはどういう事でしょう?」
「ああ、ヨシアさんはこの国の事をあまりご存知無いのでしたね。
この国は平民は何かしらの組合に所属しないとならないのです。
今は商人組合と冒険者組合、あと、魔術師組合の3つです。
先程の話の四名は、商人組合に加入する資格はありません。魔法の素養も無い。そうなると自然に冒険者組合で生計を立てなければならない。
その冒険者組合を除名されたら、この国には居られなくなるのです。」
イシスが説明してくれた。
さすがにそれは可哀想か………。
「わかりました。それなら降格で良いです。」
「わかりました。『鍛冶師ヨシア』がその四名の処分に了承したので、それで構いません。
ただ、商人組合、特に武器防具職人達はそれでは納得しません。
彼らが納得しないと売り手の組合員が生活に困窮するのです。
そこで私たちは商人組合としては、メリダさん本人に『武器防具職人達が納得する形』での、
責任を取って頂きたいと考えております。」
「具体的にはどのような?」
「メリダさん。あなたにはヨシアさんの奴隷になって頂きたいと考えております。」
「イシスさん。
僕、いらないです。マジで。」
と、俺本気で言いました。
メリダさんはムッとした顔してますが、
『嫌なもの』は嫌です。
「ヨシアさん、申し訳ないんですが、期限付きで何とか了承して頂きたいのです。」
「え~っ?どうしてもですか?」
本当に嫌です。
「お願いします。
おそらく、これが『商人』『冒険者』各組合の軋轢を生まない最適な落とし所かと思います。
武器防具職人は、『誇りや矜持』を貶められた事に憤りを覚えています。
これは嫌な表現ですが、相手の『誇りや矜持』を、ある程度貶め返せば、腹の虫も収まるかと。」
「あー…。だから組合長を被害者の鍛冶師の奴隷にすれば……。」
「ええ、武器防具職人達も『あいつらは頭を下げた』と、解釈するでしょうし、こちらとしても、説明しやすいです。」
……これだけ自分を助けてくれた、イシスさんに頭を下げられたら何も言えない。
「わかりました。メリダを俺の奴隷にします。」
「ちょっと待って下さい!
わ、私の気持ちはどうなるんですか!?
私は奴隷になるなんて言ってません。」
チッ!分かってねぇなクソ女。
「はっきり申し上げて、今回貴方の責任は大変重いです!
『鍛冶師を失念していた』と仰ってましたが、相手の首に何枚のタグが付いてるかの確認も怠り、ここまで問題を大きくしたのは、他でもない貴方自身です。
それに今回、私たち商人組合は一切の金銭等の要求はしていません。
ここまで譲歩して、それでも納得して頂けないなら、それなりの対応をせざるを得ないのですが、本当に宜しいですか?」
「……。わかりました。奴隷になります。」
メリダはやっと折れた。




