表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

62/229

第62話 ファースト・コンタクト

 未確認生物は、ロボットだった。


 アルターホールが鎮座していた跡地は直径が五十メートルくらいのエリアに草が繁茂しているだけで、高い木々はその外周から広がっていた。

 ついさっきまで、チームカガリはその端っこの樹木と草地の間あたりで、楽しそうな激戦を繰り広げていた。


「警報!」

 ペティが異変に気づいて、二人に警戒を呼びかけると、三人は樹木の陰に隠れた。


 そして、対岸から現れたのが、二足歩行、全身が黒光りする金属で覆われた体長一六〇センチ前後の人型。中世のプレートメールアーマーを纏った騎士のような装甲板に身を固めていて、頭部は黒いガラス張りで、ちらちらと、赤いランプが点滅していた。


「……おねえさま、あの者から気配がありません」

 リズは目標が呼吸をしていないことを喚起した。


「つまりさ……あれは無機物の塊ってことだよね? 鎧着ているヒトじゃない。アンドロイド?」

「捕獲でいいんだよな? アネゴ」

「うん。 ロボットだから鹵獲になるのかな。方針に変更はないよ」


 目標が逃げる様子はなかった。

 むしろこちらに向かってきている。


「腕に武器を装備してるね。飛び道具かな? ユリっちが言ってたレールガンかも」

 射撃ユニットというのだろうか、チキンを丸焼きにしたようなボディに、四角柱状の銃口が手の甲のあたりまで伸びていて、色違いの二対の金属が四角柱の面を囲っている


「レールガンだと弾体は高熱だから”透過”は難しいかもだね。リズ。弾着に備えて」

水壁ウォーター・ウォール!」

 リズの詠唱でチームカガリの眼前に水の壁が現れた。直方体の巨大な水槽のようだった。

 水の壁が出現した瞬間、目標は銃口を向けて「バスッ、バスッ、バスッ」と三発の弾丸を放った。

 射線上に火花を散らして、水の壁にゴポゴポと側面から空気が入った。弾丸を止めることができたようだけれど、水中のどこにも弾が見つからなかった。水壁が完成したことで、三人は木陰から出て目標を見据えた。

「アネゴ、あっちはやる気だ!」

「弾が液状化してるんだネ。あれはやっぱりレールガンだよ」

 目標が走り始める。動きはそんなに速くはない。


「ペティ、足止め!」

「レッド・サイドワインダー!」

 ペティが両腕を広げると手のひらから二つの炎が伸びた。炎は意思を持っているかのように素早く蛇行し、リズの水壁を迂回して目標へと向かっていく。


 ペティの炎が目標の脚部に直撃したけれど、ひるむ様子はない。

「だめだ、ゼンゼン効いてないぜ」

「やっぱロボだよ、あの子。リズ、水壁もう一個造れる?」

「できます!」

「あの子を閉じこめて!」


水壁ウォーター・ウォール!」

 リズは今度は走ってくる目標の足下に水壁を造った。

凍れ(フリーズ)!」

 水中で目標の動きが緩慢になったところで、リズがさらに魔法を付加した。目標を閉じこめた水壁に氷が張った。

 氷はさらに水壁の内部に浸食していき、目標は氷付けになった。


「やったな! リズ」

「あんがとね!」

「ふぅ。ちょっと疲れてしまいました」


「これでショートしてくれるとイイんだけど……森で活動してるンならきっと完全防水だよね」

 チームカガリは接近することなく、警戒態勢を維持したまま目標を観察した。


 氷の一部が「バリリリ!!」と音を立てて割れた。

「嘘ぉ?!」

 カガリさんもさすがに驚いている。


 レールガンの射線部分の氷が粉々になって蒸発した。

「銃口まで水浸しになっても使えるって? ユリっち喜びそうだね! ちょっと笑えないかな」

 リズの手のひらが防弾用の水壁にふれると、壁から水球が独立して飛んでいき、目標が空けた穴を塞いだ。


「凍らせなくていいからね」

「わかってます」

 これでレールガンを撃っても水で勢いを殺せる。

「弾切れになってくれればいいんだけどね。……ユリっち言ってたっけな”使える環境が限られていて運用は難しいけど、弾体はパチンコ玉でもいいし、弾のコストと装弾数はかなり優秀なのよ、レールガン”って。あの子、あと何発撃てるのかな……」


 射線に詰め込まれていた水が弾け飛んだ。

 チームに緊張が走る。


 射線から突き出ていたのは、細く、青白い紐状の光だった。

 紐状の光が目標を閉じこめていた氷塊に巻き付き、締めてつけて、氷を粉々に砕くまでは一瞬だった。

「アネゴ! 魔法鞭マジックウィップだ」

無機物ロボが魔法を使った!?」


 バスッ、バスッ、バスッ

「キャァ!」

 リズが被弾した。

「「リズ!!」」


 目標が放ったレールガンが、防弾用水壁の全く同じ箇所に三発の弾を放ち、力任せに貫通させていた。

 弾はリズの腹部を貫いて、背後の樹木に穴を空けていた。リズの集中が切れたことで、水壁が消える。

 直後に魔法鞭マジックウィップがカガリさんに伸びていた。僅差きんさでカガリさんがこれをかわす。


「えっ?!」

 鞭はもう一本あった。目標の左手から伸びる魔法鞭がカガリさんの足首に巻きついて、そのままカガリさんを転倒させ、引きずりだした。


 透過ができないならばこれは魔法だ! 僕はカガリさんを引きずる鞭に手を触れた。

 鞭がマナとなって拡散する。


「ウォ……高圧水刃ウォーターカッター!」

 倒れたリズが半身をおこし、鋼鉄を切断する水圧を放った。

 しかし、距離が離れすぎていた。切断こそ叶わなかったけれど、目標を後方へと押し離した。


炎壁ファイアーウォール!」

 ペティがカガリさんと目標の間に炎の壁を造った。


「退くよ! ペティ」

「了解!」


 カガリさんがリズを抱えると、ペティと共に木々の奥深くに入って行った。


「リズ、無事?」

「おねえ……さま」

「しっかりして、リズ!」

「ワタクシ、おねえさまに抱かれてけるなら!」

 リズがカガリさんの首に腕を絡ませてギュゥっとかき抱いた。


 すでに自分に治癒魔法ヒールをかけていていたようで、傷口はすっかりふさがっていた。

 カガリさんの首に巻き付けついたリズの両手を、カガリさんが”透過”で抜けた。


「おねえさまのイケズぅ!」

「元気でよかったよ!」

「アネゴ、どうしましょうか」

「捕まえるのは無理だね。あのロボは、破壊する」

「このまま野放しにもできねぇもんな」

「トンファーの電撃も有効かわからない。手榴弾で爆破させたいところだね。射撃があんなに正確なら、遠くから投げても撃ち落とされるかも。……なんとか接近しないと」


[あの、カガリさん]

「お、さっきはあんがとね。エアっち」

[いえいえ。それより、ロボの様子見てこようか?]

「うん、たのむよ。リズはちょっと隠れて休んでて」

「おねえさまの腕の中がいいです」

「だめ、動きにくい」

 カガリさんがリズを高く放りなげて、リズが樹木に手を触れて同化するのを横目に、僕は来た道を戻った。


 足が遅いから距離はだいぶ引き離したかと思ったけれど、いつまでたっても遭遇することなく、ついには元来た場所へ戻ってしまった。


 目標はさっきと同じ位置に突っ立ったまま、あたりをキョロキョロしていた。ペティが放った魔法の炎はすっかり消えているものの、目標の目前には、魔法の熱で草木に引火した低い炎が上がっていた。

 目標と”目”があった。特になにもしてこなかった。僕は取るに足らないってことだろうか。


 僕は後をつけられないように迂回しながら、カガリさんのところへ戻った。追ってくる様子はなかった。その奇妙な光景を報告し、カガリさんは少し考えると、一つの答えを出した。


「熱探知、かも」


 目標が人工知能(AI)だとすると、熱探知で、植物と自分たちを見極めているのかもしれない、と。


 攻勢に出るべく、リズをその場に待機させ、僕たちは来た道を引き返した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ