第十五話 村正、グリッドランド城へ
土曜に遅刻したので日曜に更新です。
次回更新予定は月曜日……予定。
第十五話 村正、グリッドランド城へ
グリッター本部へ着くと、村正はすぐに執務室へと向かった。
ノックをして入るとアルマンディンは書類に追われていた。
「どうした?仕事か?」
山積みの書類から顔を上げるとアルマンディンは立ち上がり迎えてくれた。
「忙しい所すみません、早速なんですが使命が来ました」
「聞かせてくれるのか」
「ええ、グリッターにとっても他人事では無いと思いますので」
おおまかにシルフィエから教えられた事を伝えるとアルマンディンは顎に手を当てて唸った。
「国家転覆を目論む輩がいる……が誰かは分からないしいつ来るかもどこに来るかも何を狙ってくるのかも分からない……となるとな」
「まぁ……そうですよね」
自分でも言いながら何ともふわふわした情報しか持ち合わせていないことを再確認してしまう。
「まぁ何も知らないまま動かれるよりは断然いい、この国を破壊で転覆させるならばやはりここ、グリッターを潰すか王を亡き者にするか……だろうな」
「やはりそうなりますよね、その他にこの国を大きく支えているものといえば……農商業とかでしょうか」
「いや、我が国の農商業は強い、歴史上数度突然に現れた脅威で甚大な被害が出てもその度に協力して復旧してきたのだ」
「一挙に転覆させるとしたら農商業の線は薄いということですか」
「そうなるだろう、何にしてももう少し情報があればいいのだが」
何にしてもおおよその見当が付いた、王城かグリッター本部かが守られればいいとも考えられる。
「王城の方の警護もグリッターが?」
「そうだな、王城は一般兵ではなくグリッターの王城守護隊が受け持っている」
「だと守護隊の方にも脅威の可能性を伝えたほうがいいでしょうか」
「そうなるな……よしムラマサ、一度王城へ行くか」
「王城へ……いいんですか、部外者とか身分のないものが入っても」
「基本的には入れないが緊急時はグリッドランド市民を受け入れる施設がある、それにいざというときにムラマサが入れないようでは使命が守れないのではないか?」
アルマンディンの信頼あっての話に頭が下がる。
もちろん断る理由もない、王城の情報をなるべく集めておくべきだろう。
「よろしくお願いします」
アルマンディンの書類生理がある程度片付いた後、王城へと向かう。
グリッドランド城は少しだけ小高い丘の上にあり、城の中に水を汲み上げる何かがあるのか、城から複数の方向へと川が流れ出ている。
その川が国の多くの地域へと流れているため、自然だけではおおよそ賄えない部分にまで潤沢に水が行き渡ることでこの国の広域を農業区域として利用することができているとも言える。
逆に言えばココを絶ったり、毒でも流そうものならそれはそれで甚大な被害が出る事になる。
王城自体は大きな塀で囲まれているものの、当然ドーム型になど出来るわけもないので上空からの攻めに対する守りはほぼ無いに等しい。
見れば見るほどに攻めやすい城に感じてしまう。
主な戦争の手段と言えば白兵戦と魔法の打ち合いであるそうだ。
当然そうなると基本的な守りは塀があれば十分となってしまう。
『相手がモンスターを召喚するとなるとこんなの守りのうちに入らないと思うんだけどな』
『そう?どうして?』
回りに聞こえないようにシルフィエと会話をする。同化して意思疎通が出来るのはファンタジックな便利さだ。
『モンスターが攻めてくると考えたら飛行できるモンスターなら塀は役に立たないし、水を自由に移動できるモンスターなら川を登ってくればそのまま侵入できてしまう』
『ふんふん、なるほどね』
『守らなきゃいけない箇所が多すぎるぞ……』
そうシルフィエと会話をしながら城内を見て回る。
アルマンディンは解説をしながら城内を見回る守護隊に挨拶をされては報告などを受けている。
小さめの会議室のような場所に来ても守備隊がやってきては報告をするのでやはりグリッター幹部と言うだけの位と人望があるのだなと見ていて感心する。
ふと自分の父もそんな後ろ姿を見せていたな……と思うと少しだけ帰ることが出来ないということに寂しい物を感じる。
『ムラマサには私がいるでしょ?』
慰めるようなシルフィエの声に少し驚き、微笑む。
『これもダダ漏れだったか……隠し事はできないな』
『もう二度と会えないっていうのが寂しいのは私もわかるけどね』
『よろしく頼むよ』
『もちろん!』
話が終わったのかアルマンディンが振り返る。
「待たせたな」
「いえ」
ある程度の城の内部構造は分かったが中にどんな施設があってどこで何をするのかが全くわからない。
当然村正はこの国の人間ではないため、機密であることは話せない。
それだけにどこが転覆するのに狙われやすいのかの想像がつかないのだ。
「おおまかな城の構造はこんなところだな、何か思うところはあるか?」
「ええ、この城はテロに対する対策がほぼ無いに等しいですね」
それを聞いたアルマンディンは神妙な顔つきになる、また後ろで聞いていた守護隊の一員が怒りだした。
「貴様、この城の守護のどこに穴があるというんだ」
「待てトゥエン、まずは話を聞け」
そう制されて一応は収まりを見せたものの、トゥエンと呼ばれた守護隊員はいつでも切り捨てるぞと言わんばかりの視線を送ってくる。
(どうしてこう気の短い奴が多いんだろうなぁ……)
「まず事前の情報筋からの話で、おそらく何らかの襲撃はモンスターの召喚を伴うものという情報が入っています。
それとグリッター本部でのテロ行為を考えると、何らかの方法で召喚に必要な触媒をこの敷地内に入れさえすればそこにモンスターを召喚することが出来るでしょう。
そうなるとこの城には侵入可能場所が多すぎるんですよ、飛行出来るモンスターに対する守備は?
触媒を外から投げ入れられたり空から落とされたりしたら?水路や川を辿られたらどうするんですか?」
そう言うとアルマンディンもトゥエンも押し黙る。
「正直この城の何が狙われると国が傾くのかを考えて守備を配置するのが一番なんですが、人まずは侵入経路をある程度絞らせるということを考えたほうがいいかもしれませんね」
「具体的にはどうする?」
「まずは水路ですが、金網か何かを複数配置しましょう、金網には鈴や紐を付けることで大きく動いた時に察知出来ます」
「なるほど、トゥエン」
アルマンディンが声をかけると既にトゥエンはどこからとも無くメモ帳のようなものを取り出して記入している。
「続けてくれ」
促されて続きを話す。
例えば、と前置きをして空からの襲撃に対する対策、内部に侵入された時にどうするか
など、自分の考えうる知識を話した。
「目から鱗ですね」
トゥエンが素直に関心したように頷く。
結局のところそういう攻め方をされたことがないというのが一番問題だ。
敵側にもそういう発想がないのならそれはそれで安心なのだが……
その後しばらくして場所を移動することになった。
一体どこへ連れて行かれるというのだろう?そう思いながら大きめの扉をくぐるとそこには30人ほどの屈強な男たちが綺麗に隊列を組んで立っていた。
「あの、ここは……?」
「作戦会議室のようなものだ、ムラマサには先程の話をもう一度してもらいたい」
いきなりそんなことを言われても
「何、皆で文句を言おうというのではないんだ。先ほどの話を踏まえて一度守護隊の活動を見直すべきだと思ったまでの話よ」
村正の使命とはまた別に意識改革をするべきだとは考えていた。とアルマンディンは言う。
そういうことなら、と村正も引き受けた。




