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蓮さま生誕祭!! その2



 「えっと、……昼の部は14時から15時半までで、夜の部は18時から19時半までね!」


 歩夢くんとのやり取りの後シャワーを浴び、あまり派手になり過ぎない様いつもより入念にメイクをして、白のニットにベージュのスカートとチェスターコートを羽織って少し早めに部屋を出る。


 会場まで電車を乗り継ぎ、最寄り駅の改札でゆみちゃんを待つ。少し早く着き過ぎちゃったかしら?



 「いづみちゃんお待たせっ♪」


 

 うわぁ、ゆみちゃん気合い入ってるわ! 


 派手なロックTシャツに黒のジャケット、そして黒ベースのミニスカートに網タイツにニーハイブーツ、どっからどー見てもバンドマンだわ。


 「やっぱり最前ドセンならライブで着てる服装で行った方が目立つでしょ? 配信もあるし!」


 ……あなた映る気満々ね。


 開演までまだ時間があるので近くのカフェで待機する。


 「なんか『バディーズ』凄い事になってるわね、ここ最近のアニメでこんな社会現象になったのって無いんじゃない?」

 「ですよねー、特に女子中高生の人気が凄いらしいですよ。やっぱり蓮さまと歩夢くんとかビジュ強の二人が声やってるからねー、いづみちゃん、歩夢くんますます人気出そうだね♪」


 「一つ代表作があるとこの先暫くはやって行けそうよね。この勢いなら二期、あるいは劇場版とかやるかもだしね。来年も主役級のアニメが続くみたいだし、上手く行って欲しいな」

 「ニシシ、上手く行って早く私を迎えに来てってか! 二人早く付き合っちゃえばいーのに!」


 「もうっ、ゆみちゃん何言ってんのよっ!!」




 ※




 会場入りし、意気揚々と最前列の真ん中に向かうゆみちゃんを見て、周りの人が次々と声を掛けてくる。 そりゃあれだけラジオで取り上げられたら有名にもなるわよ。


 「あっ、赤メッシュさんですよね?」

 「えへへ、よろしく〜、今日は楽しもうねー♪」


 隣の席の女の子に声をかけられ、笑顔で応えている。


 「……もしかしてあなたが、店長さんですか?」


 ひえっ、私にまでっ!? 


 「はっ、……はい。私が店長です」


 そう言うと、あっという間に周りの女の子達に取り囲まれた。えーっ、私だって歩夢くん最推しだけど、ずっと蓮さまの事追っかけてたのよ?


 「店長さん綺麗っ! 女の人だったんだー!」

 「いつもどうやって当ててるんですか?」

 「何かコツとかあるんですかー?」


 「えっ、あのっ、……ただ普通にポチッとしてるだけです」


 「「「「「いいなぁーー!!」」」」」


 その後もゆみちゃんと私を見る為に次々と女の子達がやって来た。もう今からこんな悪目立ちしてたら蓮さま来たら間違いなくちょっかい出されるわ、どーしよ?


 そしていよいよ開演時間になり、会場が暗転し、例年通りハッピーバースデーの音楽が鳴り、客席みんなで大合唱をする。


 ♪

 ハッピーバースデートゥユー

 ハッピーバースデートゥユー

 ハッピーバースデーディア、蓮さまー♡


 ハッピーバースデートゥユー ♪


 パチパチパチパチ パチパチパチパチ



 するとスポットライトが蓮さまを照らすと……、


 何故かバスローブ姿で、片手にワイングラス、もう片方に赤ワインのボトルを持った蓮さまが映し出された。ちっ、近いぃーーー♡


 キャーーーァッ、蓮さまぁーー♡

 おめでとーー!!


 客席からの観声が凄い! たしか去年は和装だったわよね?


 会場が明るくなりステージにはテーブルとソファーが置かれている。俺の部屋って設定かしら?


 「みんな今日はありがとう! 毎年の事だけど沢山の人達に祝福されて俺は幸せ者だよ、今日は楽しんでいってくれよな! あと配信のみんなも愛してるよ♡」


 パチパチパチパチ パチパチパチパチ

 おめでとーー!!


 

 「まぁ昼の部はおちゃらけて、バスローブ姿でみんなは俺の愛人だって設定でやるんだけど……、おいっ、野郎もいるよな? 周りは女の子ばっかりだけど楽しんでってくれよ!」


 『うおぉーーーっ!!』


 会場の一角から野太い声が聞こえて来た。ちゃんと男子専用エリア作ってたのね。


 「いきなりネタばらしするけど、夜の部はタキシードだからな。昼と夜の俺、……どっちが好き?」



 もうっ、そんな色気のある声で言われたら!


 「「「「「どっちも好きーーっ♡」」」」」


 んー、みんなわかってるわ♪


 「なんか今年は『バディーズ』の影響もあってか、倍率凄かったみたいだから落選して配信で見てる人には特別にプレゼントも用意したからな。詳しくは放送後告知があるから楽しみにしてくれ!」



 パチパチパチパチ パチパチパチパチ



 「早速最初のコーナーに行きたい所だけど、ごめん、突っ込まずに居られないわ! おい、赤メッシュ、お前最前じゃねーか! しかも俺のバミリ前とか! どんだけ強運なんだよ!」


 いきなり突っ込んで来た! 私は咄嗟に下を向いたが、ゆみちゃんはなんとその場で立ち上がり、客席に向かって満面の笑みで手を振り出した。何してるのもぉーっっ!!


 パチパチパチパチ パチパチパチパチ♪


 ゆみちゃん、すっかり蓮さまファンに受け入れられてるわ! やっぱりみんなラジオ聞いてるのね♪


 「いーよ、上がって来い! ラジオで俺が取り上げてから大反響だったからな!」


 蓮さまに手を差し伸べられて、ゆみちゃんは蓮さまの手を両手で掴みステージに上がった。嘘でしょ?


 「それじゃ配信もあるからみんなに自己紹介でもするか?」


 「はいっ、皆さんこんにちは! ハガキ職人で今は雑貨屋でバイトしながら『らふぃんどーるず』ってバンドでベースを弾いてます、赤メッシュこと蓮さま最推しのゆみです、宜しくお願いします!」


 な、なんでそんな物怖じせずスラスラと自己紹介出来るの? ……って、ゆみちゃん、最前の時点でこうなるの予想してたわね。いきなり手書きのボードを掲げてライブの告知までしてるわ!


 「さてはお前、俺がステージに上げるの予想してただろ? 準備万端じゃねーか!?」

 「えへへ、詳しくは私のSNSで!」

 

 カメラに向かってボードを掲げウインクしてる。ゆみちゃんやってるわね! 元々アイドルみたいな顔立ちで可愛いから興味がある人結構居るんじゃない?


 「……て事は、隣の君が歩夢に乗り換えた強運店長だな?」


 ひいぃっ、蓮さまが私の前でしゃがみ込んだっ!


 「おいで、……意地悪しないから♡」

 「はぃ……」


 こんな近くで見つめられて、甘い声を出された上に手を差し出されたら……、私はその手に磁石の様に引き寄せられ、気がつくとステージに上がっていた。もぅずるいわっ!!


 「はいみんな拍手〜! 自己紹介する?」

 「いえ、私は一般人ですので…………あの、店長です、宜しくお願いします」


 会場全体から拍手を受け、皆から羨望の眼差しを浴びた。


 「赤メッシュは勿論知ってたけど、俺、店長の事も前から知ってたぜ! だって君、俺が本当の駆け出しの頃から俺のお渡し会来てたよね?」


 認知されてたぁ〜っ! 恥ずかしいっ!!


 私はコクコクと頷くと、なんと蓮さまは私の頭をポンポンして、


 「ありがとう、ずっと応援してくれて♡」


 キャーーーァッッ!!!


 その瞬間、悲鳴の様な声が会場中に響いた。それを聞いて蓮さまはニヤニヤしながら、


 「そんな最古参の店長が歩夢に乗り換えたって、本当?」


 あー、公開処刑が始まったわ! どーしよ??


 「あ、でも、……今まで通り蓮さまの事も勿論好きです♡」


 恥ずかしい〜っ!! 顔から火が出る位熱くなってる。そこに更に追い打ちをかける蓮さま、もう許して!


 「でも、最推しは、……歩夢なんだろ?」

 

 私は縦に首を二回振ると、蓮さまは私の肩の上に優しく手を乗せ、誰にも聞こえない様小声で、


 「これからも歩夢の事、宜しくな」


 えっ!? 蓮さま??


 そして心臓が止まる様な言葉を発したのでした。


 「もう、しょうがねーな! おい歩夢っ、店長はお前にやるから取りに来いよ!」


 えーーーっっ!?

 

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