20話 解き放たれた人格
「なぜそこに居る……」
俯いて居る私に龍斗が声を掛けた
「なぜソコに居る……」
「なぜソコに居ると聞いている……」
「聞いているんだ!! 泉!!!」
龍斗の怒号がこだまする
「……泉? 私の事??」
「…… あ」
「…… あは」
「アハハハハハハ!」
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!」
戻った……
私は戻った!
ココに!
ククク……
「プロテクト掛かってるとさ? 記憶が曖昧になるのよね」
私は言い、龍斗が次いで口を挟む
「プロテクト……? 記憶……? 何を言っている!?」
「まだ解らないの?」
私は顔を上げる
先程の龍斗のように、ウィンクしながら……
「泉…… その右眼、その眼は……」
彼のゴクリと飲み込む唾の音が聞こえそうだ
だが、少し気持ちを整えたのだろうか
彼は叫んだ
「なぜ紅い!?」
龍斗が後退る
「それに関して話す事、ある? 無駄でしょ? もう逝くのに? ……ククク」
笑いが止まらない
「でさ、なんの研究してたの? 加藤君、だっけ? どこ?」
「言う必要は無い……」
「あっそ……」
右手を龍斗に向けて、指をパチンと鳴らす
パン!
陳腐な音が、また響く
龍斗の【両腕】が消えた……
「え?」
龍斗は何が起きたか解っては居ないようだった
「解らない? 腕、消えたね♪ フフフッ……」
「そんな、バカな!? 痛みも無いのに!? 血も!?」
「痛み消してるよぉ! 話せなくなるじゃん♪ 血は止血してるよ♪ 聞きたい事、たーーくさんあるので♪」
「ふざけてるのか!!!!」
「ふざける? 何で? ふざけてないよ? 戻す? 痛覚……」
もう一度パチンと鳴らす
「グッッッギャアァァァァああぁぁあぁアアアァガアーー!!!!!!!!!!!!」
体育館に轟く絶叫
のたうち回る龍斗
くだらない……
とっとと話せよ……
ウゼェ……
「ったく…… でさぁ、何の研究?」
「ガァアァァァァァぐくっガアああぁぁあぁアアアァ……!!!!!!!」
うるせぇんだよ……
「はぁ…… 騒がしいなぁ、だから言ったじゃん……」
また指をパチン
「ゲホッ! ゲホッ! ガハッ…… ハァハァ……」
転がり回る彼の動きが止まる
大きく肩を上下させた龍斗に私は笑顔を向ける
「落ち着いた? で、何の研究? 加藤君は?」
「…… 学校の裏山の…… 横穴の奥にある…… ラボに… でも奴はまだ未完成だ…… もう少し、時間が掛かる……」
「ふーん…… で、研究は?」
「…… 世界を変える力を持つ人間の発掘……」
「なるほど♪ で、ラボには何人居るの?」
「…… 今は…… 成功したのは…… 加藤のみ…… だよ……」
「…… そっか…… 後さ、どーでもいい事なんだけど、なんで3人の女生徒を殺したの?」
「俺らの革命を笑われたから…… だよ…… 消さなかったのは…… 見せしめだ……」
「ふーーーん…… 自尊心強いんだ? アハハ!」
私は少し真面目な顔で聞く
「後さ、さっきの修の言葉もそうだし…… 藤田先生操ってたの、龍斗だよね」
「操っていたと何故解った!?」
「少し違和感があってね…… 龍斗…… 貴方と私、そして修は同じ方向に居た…… 藤田先生が変になった時にね……」
私は続ける
「そして、桜子は反対側に居た…… 藤田先生の腕を掴んで……」
「………」
「解るよね? 想像はつくけど改めて聞くね…… 貴方は危険かも知れない先生の前を横切った…… アンタは藤田先生が自分に危害が無い事を知ってたのよ♪ だから貴方がこの元凶だと解ったの」
「チッ…… なるほどな……」
「でさ、そうまでして桜子を追った…… なぜ?」
「………」
「また黙りか…… まぁいいや♪」
私は次いで確信に迫る
「桜子を覚醒させようとしたね?」
「何!? お前は…… どこまで……」
「フフフッ…… だから想像は付くでしょってば♪ そして桜子の覚醒が完成した場合、桜子を守る為に修も覚醒しようとするはず…… それを狙ったんだね? だからあの時、私が逃げようが逃げまいが、先生は桜子を追うはずだったんだ……」
私は続ける
「そして桜子の覚醒前に修が追ってきた…… コレでは覚醒させられない…… だから、もう必要無くなって藤田先生を消した…… その姿を修に見られた…… だから修は全部が龍斗の仕業だと思い、ラスボス…… と言った……」
更に続ける
「貴方は修の言葉で桜子が逝ったのを知った…… 全て水の泡…… だから修にも用は無くなった…… 桜子無しでは説得も出来ないと判断した…… 当たり?」
「くっ…… ああ……」
「やっぱりか…… そっか、ん! よし♪ 聞きたいことは全部聞けた♪」




