15話 違和感
逃げた
私達は逃げた
足音がする!?
後ろに着いて来たのは……
先生!?
いや、
修だ!
皆は?
龍斗、桜子……
まさか捕まってないよね!?
無我夢中で走り続け
階段を駆け上がり
自分の肺が潰れそうな感覚
そこで膝を着いて倒れ込んだ
膝が痛い
擦り剥いたようだ
膝よりも肺が痛い
走りすぎたようだ
すぐ後ろで修の激しい息遣いが聞こえる
「ハァハァ…… 修…… ハァハァ…… 何コレ…… 何コレ……」
「ハァハァ…… ゲホッゲホッ…… 解んねぇ…… ゲボッ…… 解んねぇよぉ……」
私達は息を整える
隣に修が座る
走りすぎた疲れか、頭がボーッとする
なんだろ
なんでこんな事に……
なんで?
なんでよ……
「冷静になれ……」
修が言う
私の顔を見て落ち着けようとしているのだろうか
「…… 解ってる…… 解ってるて……」
私は大きく息を吸い込み
そして、吐いた
一人なら不安しか無かっただろう
隣に人が……
友達が居てくれる
それだけが救われた
「あんね……? このペア…… ジャンケンの通りやね……」
二人でフフフッと少し、笑った
修が私の頭に手を置く
「考えんな、逃げよう……」
「でもどうやって? 昇降口、開かないんよ?!」
「解んねぇ、けど…… 陽が出れば変わるかも知れない…… 生徒も来る…… 明日は平日だからな……」
「何時間あると思ってるん!? 嫌や!!」
「しょうがねぇだろ!」
そして修は小声で言った
私に……
(逃げらんねぇんだから……)
と……
涙が出てきた
解ってた気がする
でも、言葉にされると……
どうしようも無く……
どうしようも無く……
状況を理解した……
修が立ち上がる
「とりま、そこの理科室に逃げ込もう……」
促されるまま、私達は直ぐ傍に見える理科室の奥に入った
研究資材だろうか?
この部屋には沢山ある
武器になる物は……
見当たりそうに無い……
そんな時だった
…………!!!
「ねぇ、修…… 今、何か聞こえんかった?」
それと共に
トゥルル……
携帯電話が鳴る
トゥルル……
「泉!! 電話だぞ! 出ろ! あいつらかも知れねぇ!!」
修が私に怒鳴る
トゥルル……
「出ろって! 早く!」
「待ってよ! 焦らせんといて!」
今はまだ出れない
トゥルル……
4コール目で出た
「もしもし!?」
ツーツーツー……
「…… 切れた…… 履歴は…… 桜子……」
「何やってんだ! 遅いぜ!! すぐかけ直せ!」
…!!…!!!!…
また声がする!?
間違いない、空耳では無い
振り向くと修は東棟三階、教室の辺りを見ていた
そして凄く、恐い形相だった
「ヤツだ、藤田だ…… 龍斗と桜子を追っている!!」
「え!?」
私も立ち上がり向かいの三階を見た
二人が走っている
そう見えた瞬間、背中から修の声が聞こえた
理科室の入り口で私に声を掛ける
いつの間に!?
「泉!! ここに居ろ!! 助けに行く!!」
そう言うと凄い速さで走って行った
こんな所に居られない!
一人なんて嫌や!
言葉よりも早く、私も走り出す……
瞬間!
ガシャーーーーーーン!!!
椅子につまずき、ソレは宙を舞った
私は実験台に乗るように宙を舞って激しく落ちる
ガハッ……
痛くて息も出来ない
でも……
一人は嫌だ!
しかし……
もう、修の足音が聞こえない
どうしよう……
冷静になれ、私!
さっき龍斗と桜子は東棟三階を北に走って行ってた!
私もこの西棟の北に向かえば合流できるかも……
恐いけど……
痛っ!!!!
体も痛いけど……
行くしか無い!!!
私は足を引きずりながら少しでも早く北階段に向かった
その時だ
妙な違和感にとらわれる
小さな違和感……
なぜ、【貴方】はアノ時その行動を取ったのだろう
なぜ、【貴方】はアノ時その行動に至ったのだろう
まさか……
いや
ただの疑問だ
不振では無い
でも……
それでも、そうだとしたら……
【あの人】が危ない!




