11話 ジャンケン
突然だった
「え!?」
「え!?」
「え!?」
「え!?」
同じ言葉を発し、ビクリとそれぞれの体が揺れた
足音が聞こえる!?
耳を澄ます
段々近寄る足音
誰……!?
左右を向いては視線を見合わせる
ドクン…… ドクン……
鼓動が聞こえる
コレは私の鼓動か……
そう思った瞬間、目に飛び込んで来たのは……
私達に向けた激しい光!?
あまりの眩しさに私達は光の方向に手をかざす
「お前ら、何してんだ?」
逆光で見えないが……
コレは、藤田先生の声!?
光を受けた中で眼鏡が光る
声と云い、眼鏡を掛けた教員と云い……
間違い無く、藤田先生だ
向けた光は、懐中電灯!?
暗闇に慣れすぎたようだ
いまだに向けられた光を直視出来ない
「あ、いや、ちょっと……」
誰とも解らない一人が声を出す
それを聞いた先生は言った
「勘弁してくれよー…… 面倒事が起きると俺が責任負うんだぞ!? 早く帰れし!」
皆声を合わせ、
「はぁーーーーい……」
「はぁーーーーい……」
「はぁーーーーい……」
「はぁーーーーい……」
と頷く
「全く最近の若いもんは……」
そう捨てセリフを放つと藤田先生は職員室側に戻って行った
ウチは皆に視線を向ける
「さて、で?」
取り敢えずサンドバッグを下ろし、どこにコレを戻すのか聞く
「とりま、教室の三階から降りてくる?」
「そーだな、そーするか♪」
龍斗が切り出し、修も続く
いやいや待て待て!!
「帰るんじゃなく!?」
藤田先生に見つかったばかりだ
なぜ帰る選択肢がない!?
だが、龍斗と修は声を揃え、
「え? ここからでしょ?」
そう、目を丸くして言った
こいつら、ホントのバカだ……
溜息をつき、もう行くっきゃない……
そう、腹をくくる
「どーせならジャンケンでもして、二手に分かれよーゼ!」
またバカな提案するのは修
そしてニヤニヤしながら龍斗と小声で話していた
ふと桜子を見た私は、彼女の眼が少し変わったのを感じた
その直後、
(泉、何も聞かずに、グー、チョキ、パーの順で出してね)
と、小声で囁く
え?!
理由を聞くよりも早く、龍斗と修がこちらに向き直った
どーゆーことやろ?
何か考えがある事は理解している
だが、もうジャンケンの姿を取っている状態で聞く事は出来ない
「最初はグー…… ジャーンケーン……」
皆が出したのはグー
「あいーこーでー……」
皆が出したのはチョキ
「あいーこーでー……」
皆が出したのはパー
それが、2巡した……
さすがに作為的に感じるのは否めない
桜子、そーゆー事ね……
男どもは冷や汗をかいて居た
その姿を見ながら口を開いたのは桜子だった
「おーさーむー…… アンタ、私ら組ませてまた驚かそうとしたね?」
さ、桜子……
顔、怖い……
そして続けざまに彼女は言った
「修は昔からグー、チョキ、パーの順じゃ無いと落ち着かないもんねぇ…… それに龍斗を合わせさせたね?」
「い、いえ…… そんなことは決して……」
「ほぅ……」
桜子が怖い……
暗いから尚怖い……
それに割って入ったのは龍斗だ
「桜子、違うって! 修はその癖を知ってるから、そうすれば自分が桜子と組めるって耳打ちしたんだよ」
なるほど!
「りゅーーとーーー、あんたバカ? 龍斗と同じ手出したら、私と修、組めないじゃん!」
確かに!!!
龍斗の罠に、てか、屁理屈に納得した自分が恥ずかしい……
冷や汗が凄い龍斗は素早く切り替えし、
「もう一回ちゃんとジャンケンしよーぜ!」
平静を装い、そう言った
は?
【ちゃんと】?
語るに落ちたな……
まあ、いいか……
ジャンケンの結果はウチと修
そして桜子と龍斗だった
お互い東棟、西棟に別れるはずだったのだが、懐中電灯の光がチラチラ見える為、無駄なジャンケンに終わった
ただ、龍斗がホンキで結果に満足していない顔を見ただけ……
こんなウチのどこが良いのだろう?




