10話 紅葉
ウチが桜子の手を引き走り出した瞬間だった
「待て待て! ククク……」
ニヤニヤ笑いながら修が行く手を遮る
ウチは修の腕を掴んでは揺さぶった
「アレって! アレって!! アレ!!!!」
頭が、思考が働かない
自分自身、何を言いたいのか解らない
つか、むしろ何笑ってんだ! このバカは!?
そう思った時、修がウチの両肩に手を置き、
「まず待てって! そしてよく見てみろ♪」
そう言い、肩に手を乗せて回れ右をさせた
クルリと体を回されたウチは、少々の違和感を感じる
ん?
これは……?
冷静な男共が居るお陰なのか、僅かばかりの平常心が取り戻せた私
よく見るとそれは
「サンド…… バッグ……?」
ウィッグ、つまりカツラ……
それを被せた、サンドバッグが吊されてあった
頭に血が上る
苛立ちが止められない
起きた事を即座に理解した
思いっきり引っぱたくつもりで私は振りかぶる
その刹那
バッッチーーーーーン!!
もういっちょ!
バッッチーーーーーン!!
激しい音が夜中の校内へと響いた
叩いたのは、ウチじゃ無い
桜子だった
仰け反る男達
「ってぇーーー……」
「つぅぅーー……」
彼らは引っぱたかれた左頬を強く擦って居た
ウチは桜子に目を向けた
こんな表情の桜子は見た事が無い
怒り心頭とはこの表情を指すのだろう
「アンタらねぇ! 妙にニヤニヤしてるからオカシイと思ったけど、コレね!?」
ちょっと待てと男どもは両手を前で何度も振る
「ちょ、まっ!!! 少しエキサイティングじゃ無いと面白くないだろ!?」
「舐めんな!!!!」
手を大きく振りかぶる桜子を止めたのはウチだった
「まぁまぁ、桜子…… なんてーか…… 冷静に、ね?」
桜子のあまりの剣幕に、むしろウチが冷静になれた
「泉ぃ-! でもさ、こんなのってある!?」
「ん、無い…… せやね、引っぱたこぅ♪」
男どもの顔が青ざめる
「ちょ、待てって!!」
私と桜子は顔を見合わせ
「はぁぁ!?!?」
「はぁぁ!?!?」
と威嚇する私達
そして萎縮する男達の姿
「すいませんした……」
「許されるわけないやろ!!」
謝れば済むと思っているその感じ……
立て直したはずの私の冷静が音を立てて崩れる
男ども2人の両方の頬に【紅葉型】の模様がクッキリと付いたのだった
「あーー、痛ぇ……」
男共が両手で両ほっぺたを擦る
自業自得だ、反省しろ……
ウチと桜子は、無言で睨んでそっぽ向いた
たまらず龍斗が両手を合わせて懇願してきた
「ホントごめん! 許してくれよー……」
ギスギスしてるのも疲れる
桜子と視線を交わし、軽く頷く
そして伝えた
「次は無いよ……」
「は、はい……」
「は、はい……」
「よろしい!」
ま、こんなもんで許してやる
ウチは、ウチ達は、寛容だ
寛容だよね?
この程度で済ませてあげたんだから♪




