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彼を放置していた(後悔はない)

ゼルクが此方の魔導院に帰ってきてから数日。既に魔導院での授業は始まっていたが、初日以降彼と会う事は殆どなかった。


なにせ今の私と彼ではクラスが違う。私は魔術師で彼は魔導士。5年前は私も同じ魔導士だったから授業は全部同じだったが、私が魔術師に転向した今となっては顔を見ることすらほとんどない。

それくらいに魔導士と魔術師は授業内容が違うのだ……特に私達は高等部の人間といえどまだ一年生だ。授業のカリキュラムは専門的なもので組まれているが、まだ実践は少ない。だから#ある授業以外__・__#は接点すらないのだ。



そもそも魔法と言うのは独りで使うことができない代物である。特殊な魔道具などがあるなら別だが、基本的には魔法を生成するのと行使するのは概念的に真逆だ。しかしその二つは同じ体内の”魔動器”という器官で作る。


けれども、並の人間では魔動器で魔法式を組み立てた後にそれを自分の中で維持して放出というのができない。


それは何故か。魔法の組み立てから放出までを独りでやるとなると魔動器の機能の切り替えをしなければならない。簡潔に言ってしまうと、その切り替えの部分で不具合が起こるのだ。詳しいことはよく知らないが、魔法式を組み立てた後に放出するために魔動器の切り替えをしようとすると魔力の質が変わってしまい、組み立てた魔法式の魔力を維持できないらしい。



魔法と言うのは基本的に魔術師が作った術式を魔導士が実現するというようなイメージで作り出される。


しかし魔法を組み立てて作る側と放出して行使する側。その原理は真逆だ。だから魔術師と魔導士ではやることが全然違う。


まず魔術師は魔法式の作り方は勿論、属性の組み立て方と割合いによる効果、魔導士に送る魔法の伝送式の効率化や伝送時に入るノイズのようなものの影響の大きさの計算、それに対する処置などを学ぶ。


その逆に魔導士は魔術師から送られた式をどのように自分の身一つで実現するかや作成された魔法式の逆分析をして効率的な実現の仕方などを学ぶ。あとは魔導士の方が体を鍛えるカリキュラムが多いというのも特徴の内の一つだ。



強靭な魔力は強靭な肉体と精神にこそ宿る。

魔導士は大きな魔力の制御をする必要があるので、強靭な肉体が必要なのだ。


逆に私達魔術師は、魔力の清浄化のカリキュラムが入る。

清廉なノイズのない魔力は美しい肉体と精神に宿るのだ。


まあいうなれば魔術師と魔導士では求められる魔力の質が違うということだ。

だから、皆どんなに才能が有っても片方に絞る。両方を取得するなんて無理だ……普通は。

でも私は実は元魔導士。事情があって魔導士は既にやめて、魔術師をしているが、元々は魔導士なのだ。だから本当は独りでもそれなりに魔法は使えたりする。


これは普通じゃないので出来るだけ隠してはいるが。

平穏な暮らしをしたいじゃない?

……まあ、とは言っても両方に元々適性がある人間ならできるという理論上の可能性はあるのだが。

ゼルクも予測だが、簡単なものなら出来ると思う。なにせ彼は私の昔からの唯一無二のライバルだ。出来なかったとしても、開発した魔道具とやらでいくらでもなんとかして見せるだろう。アイツはそういうやつなのだ。


とにかく、普通に暮らしていると魔導士と魔術師は会う事はない。……ある時を除いては。


会うとしたら、授業の合間の移動くらいだと思う。でも見かけても私は無視を決め込むことしている。だって関わっても面倒そうだ。私はボランティア精神が昔から皆無なのだ。


現に廊下でゼルクを何度か見掛けたが、沢山の女の子に囲まれていて滅茶苦茶機嫌が悪そうだったので、敢えて遠目にみて無視していた。

だって止めたら女の子たちからの反感を買って面倒だし、何よりも止めた後の機嫌が悪いゼルクの相手をしなくちゃならなくなる。正直色々面倒だしやりたくない。だから基本、放置していた……後悔はない。

なんだかゼルクが囲まれている姿を見るだけで気分が落ちるので、見ないふりは楽だった。

……あんなやつ、精々女の子たちに囲まれて困っていればいい。

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