16.
ゼルクとディリア。
幼馴染として幼少期から一緒にいたゼルク。研究バカで、魔法に対しては誰よりも強い関心を持つ男。正直、私は彼の優秀さにずっと憧れていたのだと思う。
憧れていた?いや、なんだか違う気がする。私はずっとゼルクに……酷く頭が痛むが、ここでこの違和感の原因を突き止めるのを諦めたらダメな気がする。私は今までゼルクのことをどう思っていた?
ただの幼馴染?違う、だったら私は彼の留学中にずっと手紙を書くなんて面倒なことをしない。違和感があるのはここだった。ところどころ、ゼルクへしていたことや彼へ向けていた感情、彼との間にあった出来事を忘れているのだ。
もしかすると。
少し前にディリアに使ってもらった精神操作系の魔法。私自身が何故これを使ってもらったのかは覚えていないが、なんとなく彼に頼み込んだのは覚えている。
だからまずはこれを解かなければならない。精神操作系の魔法を解くのは簡単だ。特に自分のものであれば。
その方法とは、魔力を枯渇直前まで使い続けて精神に限界まで負担をかければいいのだ。精神操作系の魔法で持続性のあるものは、魔法がかけられている者自身の魔力を使用して、継続し続けるという特性を持っている。だから、これが一番簡単な方法だ。限界を迎えれば、精神のリミッターが自動的に外れて、魔法も解除される。
「知りたい……私が何を忘れてしまったのか」
それが今回の答えを出すためにも必要なことだと思うから。
そうして私はその夜、魔力を全力で身体から放出し続けた――。
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「そっか、私が忘れていたのは、この気持ちだったんだ」
早朝。深刻な魔力切れで気を失いそうになりながらも、私は忘れていた全てを思い出す。
そして魔導祭の発表を何食わぬ顔で終えた後に、約束の場所へと向かった――。
「来てくれたんだな……テッサ」
魔導祭が終わった。私とディリアのペアが発表した魔法は発表時の段階でも既に高評価を貰い、結果発表時も期待できそうな出来だった。
そして結局、私が選択したのは闘技場。ディリアの方だった。
新たな魔法、そしてレポートの完成など中々に忙しく、どちらとも私的な会話は殆ど交わさなかったものの、私は記憶を思い出す前――二人から同時に誘われた時点で、既に答えが決まっていたのかも知れない。
確かに私はゼルクのことが好きだった。今も好きか嫌いかと言われれば、正直なところ嫌いだとは言えない。それにゼルクから私へ向けられていた感情が嫌悪ではなく好意だと知った今は、馬鹿なすれ違いをしていたなと思う。思われていたのがうれしいとも思う。
でも、私はゼルクと大喧嘩した後、ずっと隣に居てくれたディリアを大切にしたいと今は思っているのだ。
私にとって、彼が今まで与えてくれていた優しさが、恋心を忘れる魔法をかけられた後に私を気遣って、そのうえで私を守って、好きだと伝えてくれた彼の気持ちが、一番心に残っていた。
「俺を選んでくれたってことで良いんだよな?」
「ええ。一緒にパーティーに行きましょう。……恋人として」
「ああ。改めて、これからよろしく頼む」
私は確かにゼルクのことが好きだった。
けれど魔法にかかっていたせいだろうか、今はその感情はまるで過去の思い出となったように感情も薄くなっている。
それよりも、今はずっと隣に居て支えてくれたディリアの気持ちに報いたいと思ったのだ。
今日でゼルクへの気持ちは全て捨てる。これからはディリアと向き合って生きていく。その気持ちを込めて、少しだけ背伸びをしてディリアの首裏に手を伸ばす。
何をしたいのか察したのだろう。ディリアが屈んで、唇を寄せてきた。
「んっ」
優しく降ってくる口付け。
腰を支える手からも、私のことを大切に思っているのだという気持ちが伝わってきた。
「私こそよろしくね」
恥ずかしさもあったが、何よりもこれから先の未来が楽しみで、私たちは二人で微笑みあった。
少し速足になったところもありますが、熱いメッセージを込めた作品でした。
苦しい恋愛なんか、相手が酷い恋愛なんか逃げてしまえ!貴方は素敵な人だから、好きになってくれる人なんて別にたくさんいる!新しい幸せな恋愛に進もう!!という想いです。訳:クソ男(女)は捨てよう
傷が中々癒えないとしても、時間や新しい恋が割となんとかしてくれます。
別で作品、たくさん上げているので、お時間ありましたらどうぞ!
アルファポリスの方で完結後に、続き(番外編)を書いて欲しいとの声があったので、そのうち投稿する予定です。




