15.
あれから。試しに付き合い始めはしたが、ディリアは私を気遣ってであろう、彼は私に友人として接してくれていた。
授業の時はいつも通り、それで移動時に人通りに少ない廊下で手をつなぐ程度だった。
しかしながら、一緒に過ごす時間は以前よりも更に増えていた。元々ペアを組んでいるから一日に数回は顔を合わせていたが、今は授業以外の時間は殆どの時間でディリアが会いに来るようになった。これに関しては正直、ゼルクに囲まれる前に彼が守ってくれるということもあって、有難かった。なにせ顔を合わせる前に、私からゼルクを遠ざけてくれていたのだ。心に平穏が常にある日々だった。
だから甘えていた。甘えすぎていた、のかもしれない。
「やっと捕まえた、テレスタシア」
授業終わり。今日はディリアは教授に呼び出されているらしく、久々に一人だ。ディリアには真っすぐ寄り道せずに寮に帰れと言われている。過保護すぎると思った。
そうして寮に帰るために歩いていると、急に横から腕を引かれ、空き教室に連れ込まれる。
正面から彼と向き合う。久々にまともに顔を見たゼルクはなんだかやつれているように見えた。目の下に隈が住み着いていて、頬も少しこけている。痩せたかもしれない。
「……何の用ですか?」
「ここ暫く、お前に避けられて気付いたんだ。俺はテレスタシア、お前に避けられるのが辛い。それにお前があの男……ディリアと一緒にいると、自分でも抑えられないくらいにイライラするんだ」
「……うん?何が言いたいのですか??」
本気で意味が分からなかった。
私はゼルクには幼馴染以上には特に思われていないと思っていたから。だって私に避けられるのが辛いだなんて、他の男といるとイライラするだなんて、まるで私のことが――。
「俺はテレスタシアのことが好きだ」
思いもがけない幼馴染の心の吐露に私は固まった。
そしてゼルクが近づいてきて、私の手を握ろうとしてきたと思った瞬間、教室の扉が開いた。
「何してんだ、てめえ!」
「……フェリクス」
「ごめーん、ゼル。任務失敗ー。彼女の場所を言わないと、殺すって脅されちゃってさ」
現れたのは、ディリアと彼に首根っこを掴まれながら歩くフェリクスだった。
しかも、ディリアの方はものすごく怒っている。ヘラヘラとしているフェリクスとは対照的だった。
「邪魔が入ったな。魔導祭のパーティー前、この教室、この場所で待っている。お前が俺を選んでくれるなら、ここに来てくれ」
それだけ言い残して、ゼルクは出て行ったのだった。気まずくなる私とディリアを残して――。
「告白でもされたのか?」
「……うん。私のことが好きだって。知らなかった」
「そう、か。魔導祭の日、俺との約束、先にしていたからって気を遣うなよ。テッサが好きな方を選べ。俺は当日、闘技場で待っている」
そうしてディリアの方も教室から出て行ってしまった。ただひたすら困惑する私だけをここに残して。




