表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RPGの世界で生き残れ! 恋愛下手のバトルフィールド  作者: 甘人カナメ
第五章 見たことのない明日へ、いってきます
96/132

96.聖女からの報告



 まずエマちゃんが報告をする。

 ほぼゲーム通りに進んだこと、回復魔術の力が強まったこと。


「ただ、復活魔術などの強力なものはまだ分かりません。どう確認すればいいのか……」


 私もブレーンに丸投げした問題だ。

 わざと瀕死の人間を作り出すのも問題だし、HP0がゲーム通りの描写だとは限らないし、本当に回復させられるかも分からない。


「出来ると断言できないから、ラルドやケインと一緒にシャイン様の所へ行くのも怖くて」


 さっきも出た話だけれど、『青い鳥』を馴染ませるためには時間がかかる。とにかくできるだけ早く受け取って邪神戦へ備えたい。

 だけど、『青い鳥』を受け取る際には二人に大きな負荷がかかる。エマちゃんが魔術でサポートしないと危険なのだ。

 ラルドの命を助けられる。けれど本当に上手く行くのか分からない。

 エマちゃんは二つの思いで揺れている。


「あ、それなんだけどね」


 両手を握り合わせて手元へ視線が落ちていたエマちゃんが、紫音の言葉で顔を上げる。


「神様曰く、ばっちり出来るようになってるって」


 昨日メモしまくった紙の束をヒラヒラ揺らしながら、綺麗に笑う紫音。


「次はあたしが報告しまーす」


 呑気な声の紫音とは反対に、場の空気が引き締まった。




 ******




「まず、大前提。私は神様とお話が出来ます。

 ティアラを使うと、エマちゃんは強い回復魔術が使えるようになりました。復活レベルの強力なものも、広範囲に亘る回復も、それから邪神に効く『浄化』も使えるって、神様からの連絡です」


 出席者の面々は筆記速度がバラバラだから、大部分が追いつくまで言葉を切って待ってくれている。私? 日本語で書いてるよ。


 紫音の報告は続く。


 神との対話が出来るのは紫音だけ。その代わり、エマちゃんは対話できないし、紫音は回復魔術は使えない。

 対話をする際は、こちらから呼びかけ、質問をしないと答えてもらえない。

 質問はいつでもユタル神殿で受け付けてもらえる。


「なるほど、こちらの知りたいことをいつでも尋ねられるのは大きいな」

「しかも神直々の言葉ですからね」

「ですが、情報統制しないと厄介なことになりますな。神の言葉が分かるとなると、聖女殿の奪い合いともなりかねない」


 フェイファーのトップ3だか4だかのおじさんが口元に手をやっている。


「確かに情報はセーブしないとダメでしょうけど。身柄の安全に関しては、そのための水魔術と土魔術だそうです。……ま、気休め程度らしいですけど」


 火のように飛び火してくるものではなく、風や雷のように関係ない広範囲にまで被害が及ぶものでもなく、多少なりとも自衛が可能な魔術。それを授けてくれたらしい。

 水魔術は氷を作ることもできるからピンポイントで攻撃できるし、いざという時の飲み水にもなる。土魔術は岩を作って攻撃ができるし、どこかに閉じ込められても壁が木や岩ならある程度操作もできる。そうか、そんな理由が。


「それらは授けられたのに、回復魔術が授けられなかった理由は?」

「まーまー、順番に話しますから。えっと……まずは、邪神の倒し方について」




 簡単に言うと、邪神とは神のアンデッドのようなもの。

 邪神が存在することで魔物が発生する。邪神復活の時に魔物が増えるのは瘴気が増えるせい。邪神や魔物によって世界がメチャクチャにされるから、神は邪神を何とかしたい。

 ただ神は直接手が出せない。双方が反発し合うせいで、邪神から神への干渉がない代わりに、神からの干渉も出来ない。

 だから人にやってもらうことにした。丁度良く、神と契約したいという男が現れた。だから聖女を遣わせた。

 けれど、その時の契約者と聖女では邪神を倒せなかった。仕方なく封印という形で手を打った。


「え、封印って代案だったの?」

「そうらしいよ。とにかく神様は邪神を消したいんだって」


 ゲームと同じ……なのか、これは?


「我々では倒せない、封印しかできない、と伝わっていたのだがね」


 そうそう、レオナルド様は最初にそうやって説明してくれた。


「失敗した人たちが言い訳に使ってたみたいなんですよ。

 あと、聖女さんには毎回『倒してね』って言っていたけれど、それが『封印してね』の意味に取られることもあったって」

「ええぇ……」


 思わず声に出てしまった。皆も同じように複雑な顔をしている。

 ここは現実とゲームで違う情報だったけれど、ゲームが正しかったのか。


「だから前回までは全て失敗扱い。で、そのせいで、あたしや美和ちゃんが呼ばれたわけです」


 いきなりの話題にどくんと心臓が跳ねた。そのままドキドキと鼓動が大きくなり、息をするのを忘れていたら、隣のロイに頬を突かれた。

 あ、うん、皆の前でその行動はどうかと思うの。

 恥ずかしさで正気に戻った。


「失敗した理由は、ザックリ言っちゃうと、神様の準備不足。敵が強すぎたとも言えるかな。

 さてさて、それは後に置いといて、邪神を倒す方法の説明に戻りますね」


 紫音や私のトリップの原因も気になるけれど、もっと大事なのはそこだよね。

 両手を擦り合わせて手汗を散らせ、改めてペンを握った。




 邪神の中心は『コア』とでもいうべき物体がある。――ま、コアって核って意味だからね。要は邪神の中心、本体ってことか。心臓みたいな物なんだろうか。

 コアだけになると力をなくして活動停止。今まではここで終わっていた。

 本当はコアを破壊して邪神を消滅させたい。コアの破壊ができるのが王杖。


「えーと、ゲームの表現とは一部違うね。

 最初に一体目を『浄化』、その後二体目を斃す。これだと失敗扱いってことになるのかな?」

「多分そう。片方が生きているともう片方も復活しちゃうんだって。どっちも消さないとダメらしいよ」


 私と紫音の会話に、シヴァが待ったをかける。


「ゲーム通りではない、とも言えない。数百年後のことは語られていないのだろう?」


 あ、そっか、ゲームでは「斃せた、めでたしめでたし」の表現だけど、また後々復活する可能性はあるのか。


「とにかく、今回の目標は、両方を倒すこと。どっちもコアを破壊するのが目指すところなのね。

 そこで出てくるのが『浄化』って魔術」


 エマちゃんが背筋を伸ばした。


 聖女の使う『浄化』とは、コア周辺を綺麗にする魔術のこと。――そういえば、邪神は神のアンデッド、って説明があった。まさにそのための手段なのか。

 ただし単に『浄化』をかけるだけではさすがに邪神の外殻を除けない。だからあらかじめ攻撃を仕掛けて、外側を破壊していく。ある程度まで削れたら『浄化』でコアを剥き出しにする。

 そこでようやく王杖の攻撃がコアに届くようになる。


「ゲームではフェイファー邪神の段階で王杖がなかったから、封印しかできなかった……」

「そういうことになるな」


 レオナルド様が頷いてくれる。ゲームでもとりあえず筋は通っていたのか。


「では、これを前提に、過去の失敗について説明します」


 過去の失敗。それによって私や紫音がトリップした。

 そろそろ自分の話題が出てきそう。一際大きく深呼吸した。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ