表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/102

紫帝の地獄訓練

心象結界の砂漠。


 三柱の悪魔たちは目を輝かせていた。


 魔猴、水蜥蜴、牛頭。


 三柱は紫帝ラックを見上げる。


「力が欲しいか?」


 その言葉に三柱は同時に叫んだ。


「欲しいです!」


「強くなりたいです!」


「将軍になりたいです! あと、モテたいです! 」


 ラックは満足そうに頷いた。


「よし。では修行だ。」


 三柱は安堵した。


 強力な魔術を授かれるのだろう。


 秘宝を貰えるのだろう。


 そう考えた。


 しかし次の瞬間。


 世界が変わった。


 砂漠が消えた。


 目の前には巨大な山脈。


 空は赤黒く染まっている。


「まず山頂まで走れ。」


 三柱は固まった。


「え?」


「え?」


「おもってたのと違う?」


 ラックは笑顔だった。


「走れ。」


 その一言だけだった。


 こうして地獄が始まった。



 一日目。


 三柱は山を登った。


 転び。


 滑り。


 落下し。


 死にかけた。


 しかし心象結界内では死なない。


 傷も再生する。


 だからラックは容赦しない。


「死なんから死んでも続けろ。」


 それだけだった。



 百日後。


 魔猴は岩を素手で砕けるようになった。


 水蜥蜴は百メートル級の滝を逆流して登れるようになった。


 牛頭は巨大な岩石を背負ったまま走れるようになった。


 しかしラックは首を横に振る。


「うそやろ?


国宝から出てきた悪魔ちゃうん? マジ弱い。」


 三柱は絶望した。



 さらに修行は続く。


 今度は雪山。


 猛吹雪。


 氷点下。


 悪魔である彼らですら凍える環境。


「精神力を鍛えろ。」


 ラックはそう言った。


 三柱は一年以上を吹雪の中で過ごした。


 怒り。


 苦しみ。


 恐怖。


 弱音。


 全てを乗り越えた。


無理やり乗り越えさせられたのだ。



 次に現れたのは大海原。


「泳げ。」


 三柱は泳いだ。


 何年も。


 何十年も。


 何百年も。


 時間の概念が存在しない世界だからこそ可能な修行。


 やがて水蜥蜴は海流を支配できるほどの能力を得た。


 魔猴は海上を走れるようになった。


 牛頭は海底を歩いて移動できるほどの怪力を得た。



 しかし。


 ラックが最も重視したのは戦闘ではなかった。


「将軍になるなら兵を率いろ。」


 そう言って心象結界に軍勢を作り出した。


 一万。


 十万。


 百万。


 無限の兵士。


 三柱は指揮を学ばされた。


 補給。


 統率。


 陣形。


 撤退。


 伏兵。


 陽動。


 外交。


 占領統治。


 ありとあらゆる戦争技術を叩き込まれた。


 失敗すれば全軍壊滅。


 そして最初からやり直し。


 何千回も。


 何万回も。


 繰り返した。



 やがて。


 三柱は変わり始めた。


 魔猴は知略を学んだ。


 短気だった性格は落ち着いた。


 水蜥蜴は冷静な判断力を身につけた。


 牛頭は恐怖を克服し勇気を得た。


 そしてある日。


 ラックは玉座に座りながら三柱を見下ろした。


「お前たちは何のために強くなる?」


 三柱は迷わなかった。


 魔猴が答える。


「仲間を守るためです。」


 水蜥蜴が続く。


「民を守るためです。」


 牛頭が拳を握る。


「陛下の理想を実現するためです。


あと、モテたいからです。」


 ラックは初めて満足そうに笑った。


「よし。」


 世界が揺れる。


 空が割れる。


 心象結界全体に紫の雷が走った。


 三柱の身体から膨大な魔力が噴き上がる。


 魔侯族は大猿王に匹敵する魔力を。


 水蜥蜴は上位水魔族に匹敵する力を。


 牛頭は魔将級の怪力を。


 それぞれ獲得していた。


 ラックは立ち上がる。


「これで最低限だ。」


 三柱は震えた。


 これだけの力を得ても。


 紫帝にとっては最低限。


 その事実に畏怖を覚える。


 ラックはニヤリと笑った。


「さて、第二段階に入るぞ。」


 三柱の顔から血の気が引いた。


「え?」


「まだあるんですか?」


「うそだろ……モー帰りたい……」


 ラックは笑顔のまま言った。


「当然だ。


っていうかまだまだ弱すぎッて気付けよ! 」


 こうして三柱の本当の地獄が始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ