エピローグ
「えーっ……籍は入れないの?」
式も終わった後、役所に行こうとしている雪奈にオレは入れないといった。
「ま、とりあえずお前が卒業するまではな」
「むぅ………後は持っていくだけなのに」
心奈さんや紘輔さんには式の前に書いてもらっていたので、本当に持って行くだけだ。
「別にもう、結婚を急ぐ必要ないからな」
もし、心奈さんが来てくれなければ、籍を入れるつもりだったけど。
「………やっぱり、お母さんが来てくれたのはお兄ちゃんのおかげなんだよね」
「一応、来てくれるようにがんばりはしたけどな」
本当にそれだけだ。来てくれたのは心奈さんのおかげ以外の何でもない。
「ありがとう。お兄ちゃん。私、お兄ちゃんを好きになってよかった。お兄ちゃんが私のお兄ちゃんになってくれてよかった」
「……それはオレの台詞だ」
雪奈がいたからオレは頑張れたんだから。
「……そういえばさ、お兄ちゃん、指輪はくれないの?」
「………ばれたか」
式で本当は渡すはずだったんだが、はっきり言うと忘れてた。
「むぅ………くれないの?」
「あ〜………婚約指輪としてでいいか?」
「いいよ。お兄ちゃんがくれるなら」
「じゃあ手を出せ」
左手をオレに差し出す雪奈。オレはその手を取り………
「どの指にいれればいいんだ?」
婚約指輪って。
「ん〜……薬指でいいんじゃないかな」
「まあ、もともとその大きさで作ってるしな」
軽口を叩きながら薬指にはめる。
「えへへ……これでもう別れられないね」
「……もともと別れる予定なんてかけらもない」
雪奈の想いに応えると決めたんだから。
「うん。私も」
甘ったるいなと思う。でも、これくらいは嬉しいくらいだ。
「……学校につけていくなよ」
でも、恥ずかしいので、いろいろと誤魔化した。
「いやだよ。みんなに見せ付けるんだ」
「お前、友達いないじゃん」
「うぐ………作るよ」
今の雪奈ならできるかもしれないとオレは思った――
夏休み明け
「うぅ……お兄ちゃん、指輪、先生に取られちゃった……」
「………当たり前だばか」
――のはきのせいだった。やっぱりまだ、雪奈にはオレが必要なんだろう。
まずは友達を作ってやらないとな
まだまだ、雪奈の兄としての役目は終わらない。
雪奈の幸せがずっと続きますように
少しだけ補足を。『歪んだレール』とこの作品の違いはこころがいるかいないか。正確には死んだか死んでいないかです。この補足でこころがなぜ雪奈にこだわるのか確信する人もいるかと思います。
てわけで、感想評価気軽にしてもらえるとうれしいです。