第10話 運命の陽だまりの中で
第10話 運命の陽だまりの中で
一年後の春、ローデンベルク伯爵邸では、日の出前から家中の者が走り回っていた。廊下には磨き終えた靴、花を入れた籠、神殿へ運ぶ焼き菓子の箱が並び、通り道は普段より狭くなっている。厨房では鶏肉と茸のパイが焼かれ、溶かしたバターと胡椒の匂いが二階の寝室まで届いていた。料理人は味見と称して三切れも食べた下働きの少年を追いかけ、木の匙を持ったまま裏庭へ飛び出した。
エレナの部屋にも、薄い朝日が差し込んでいた。寝台の上には純白の花嫁衣装が広げられ、袖と裾には小さな樫の葉の刺繍が施されている。豪華な真珠や宝石を並べるのではなく、薬草園で育てた花を布へ写し、母と侍女たちが一年かけて縫い上げたものだった。胸元には銀狼を所有の印としてではなく、ローデンベルク家の樫と並んで歩く姿として刺繍してある。
「お嬢様、片方の靴が見つかりません」
侍女のクララは花嫁衣装の裾を踏まないよう両手で持ち上げ、寝台の下をのぞいた。昨夜、左右そろえて箱へ入れたはずの白い靴が、片方だけ消えている。飼い猫が長いリボンを気に入って引き出したらしく、廊下には白い布が細く伸びていた。クララと若い侍女二人がその跡を追い、洗濯籠の中から靴を発見した。
「またこの子が持っていったのですね。去年は髪留め、その前はお父様の靴下でした」
エレナは窓辺へ座り、猫の鼻先へ指を近づけた。猫は悪びれずに喉を鳴らし、花嫁衣装の裾へ乗ろうと前脚を伸ばす。クララが慌てて抱き上げると、今度は前掛けへ爪を立てて離れなくなった。婚礼の日にも家の中はいつもと変わらず、なくし物を捜し、猫を追い、誰かが朝食をつまみ食いしていた。
母は淡い紫色の礼装を着て、エレナの髪へ白い花を一輪ずつ挿した。香りの強い花は獣人の感覚に負担となるため、選んだのは匂いの淡い春霞草である。薄いベールを留めると、母は左右の長さが同じか確かめ、右を直してから、今度は左を直した。何度繰り返しても納得できず、最後には最初の位置へ戻っていた。
「お母様、もう十分です。動けば、どちらにしても少しずれます」
「一度しかない日なのだから、少しくらい時間をかけてもよいでしょう」
母はそう答えたが、声の最後が掠れた。エレナは鏡の中で母と目を合わせ、黙って手を差し出した。母の指は朝から何度も髪飾りを直していたため冷たく、爪の脇には白い糸が一本ついている。エレナがそれを取ると、母は急に窓の外を見て、今日はよく晴れたと話題を変えた。
一年前、大神殿で番判定の儀が行われた日も、朝まで雨が降っていた。あの日のエレナは濃い青色のドレスを着て、神具が何を示すのかも分からないまま両親の後ろへ控えていた。今は自分で選んだ花嫁衣装をまとい、自分の言葉でリュカとの婚姻を誓うために神殿へ向かおうとしている。エレナは鏡の前で指輪に触れ、金色の石がきちんと収まっていることを確かめた。
「準備はできたかね」
扉の外から父の声が聞こえ、母が返事をする前に顔だけが部屋へのぞいた。父は濃紺の礼服を着ていたが、案の定、胸元の釦を一つ掛け違えている。母に指摘されると、父は今度は間違っていないと思ったのだがと首を傾げた。エレナが直そうと近づくと、父は娘の花嫁姿を初めて正面から見て、口を開いたまま動かなくなった。
「お父様、釦を直しますね」
エレナは掛け違えた釦を外し、上から順番に留め直した。父の礼服からは、今朝飲んだ珈琲と、愛用している革の帳面の匂いがした。胸ポケットには白いハンカチが入っているはずだったが、端に小さな犬の刺繍が見える。帳簿へいつも犬の絵を描く父のため、母が内緒で縫ったものだった。
「本当に、嫁に行ってしまうのか」
父が尋ねると、母は今さら何を言っているのかと横から口を挟んだ。ヴァルフェン侯爵邸は馬車で半刻の距離にあり、週に一度は夕食へ来ると約束している。父も婚約期間中、リュカへ領地経営の帳面を何冊も渡し、婿として扱ってきた。それでも父は、娘の手を取って神殿へ入るまでは実感がなかったらしい。
「住む家が変わっても、私はお父様とお母様の娘です。帳面の計算が合わないときは、これまでどおり呼んでください」
「計算は合っている。犬を描いているうちに、どこまで数えたか分からなくなるだけだ」
父が答えると、母はそれを計算が合わないと言うのだと指摘した。エレナは白い手袋をはめ、両親とともに部屋を出た。廊下ではクララが洗濯籠から見つけた靴を布で磨き、猫は取り上げられたリボンを捜して別の箱へ頭を突っ込んでいた。
同じ頃、ヴァルフェン侯爵邸では、リュカが鏡の前で銀色の飾り紐を結び直していた。濃紺の礼装には騎士団の紋章がつき、胸元にはエレナと同じ樫の葉が銀糸で刺繍されている。いつもなら数分で身支度を終える男が、今日だけは襟の角度を何度も確かめ、手袋をはめては外していた。朝食として用意されたチーズ入りオムレツは半分以上残り、薬草茶もすっかり冷めていた。
「坊ちゃま、これで飾り紐を結び直すのは七度目です。八度目で急に美しくなるものではございません」
老執事のベルトランは、寝台の上へ脱ぎ捨てられた手袋を拾いながら言った。黒い礼服の胸ポケットには、式次第、予備の指輪、胃薬、裁縫道具、角砂糖まで詰め込んでいる。リュカがなぜ角砂糖を持っているのか尋ねると、緊張で倒れたときに舐めさせるためだと答えた。本人より執事のほうが、倒れることを確信しているようだった。
「俺は魔獣の討伐で倒れたこともない」
「魔獣は、誓いの途中で返事を待ちません。花嫁のお父上も、討伐対象の熊より厳しい顔で坊ちゃまをご覧になります」
ベルトランの言葉に、リュカは鏡の中の自分を見た。魔獣の群れへ入るときは、剣を握り、部下へ指示を出せばよい。今日は剣を持たず、大勢の前で自分の言葉を口にしなければならなかった。求婚を受け入れてもらったあとも、婚礼の日になってエレナの考えが変わる可能性を、心のどこかで考えていた。
「エレナ様は、ご自分の意思で今日を迎えられました。坊ちゃまが一人で余計な結末を考えても、何の役にも立ちません」
ベルトランはリュカの襟を直し、背中を一度叩いた。幼い頃から熱を出した日も、初めて剣を持った日も、騎士団へ入った日も、この手で送り出してきた。リュカは何か礼を言おうとしたが、老執事は花婿を時間どおり神殿へ運ぶのが今日の仕事だと告げ、食べ残したオムレツをパンへ挟み始めた。移動中に腹を空かせたら食べられるよう、布へ包んで持たせるつもりだった。
大神殿の前庭には、白、黄、淡い青の春の花が飾られていた。門から大聖堂まで続く道には樫の若葉が敷かれ、風が吹くたびに柔らかな青い匂いが立ち上る。参列者たちは明るい色の礼装をまとい、用意された林檎酒や小さな焼き菓子を手にしていた。騎士団の若者たちは礼装のまま菓子を何個食べられるか競い、アルフレッドに見つかると、そろって皿を背中へ隠した。
「隠しても口の周りに砂糖がついている。式が終わるまで一人一つにしろ」
アルフレッドは若い騎士たちを注意し、自分の礼装にも焼き菓子の粉が落ちていることへ気づかなかった。去年、彼の袖についたインクを教えられなかった騎士が、今度こそ伝えようと口を開く。だが、アルフレッドが振り返る直前、春風が粉を吹き飛ばした。若い騎士は結局何も言えず、食べかけの菓子を一口で飲み込んだ。
大聖堂の控え室で待つリュカは、扉が開くたびに顔を上げていた。左胸の内側には、ベルトランが持たせたオムレツ入りのパンが入っている。布に包まれていても、狼獣人の鼻にはチーズと卵の匂いがはっきり届いた。緊張して食べられないと言ったのに持たされ、返す時間もないまま神殿へ来てしまった。
「隊長、先ほどから絨毯の同じ場所を何度踏めば気が済むのですか」
アルフレッドが声をかけると、リュカは足元を見た。赤い絨毯の毛並みが、自分の靴の形に何度も倒れている。剣を持っていない左手が落ち着かず、腰へ触れては何もないことを確かめていた。アルフレッドはそんな主人を見ながら、表情を変えずに襟元の飾りを直した。
「魔獣の群れより手強そうですね」
「魔獣なら、何頭いても対処できる」
「では、花嫁一人に対処できないのですか」
リュカは答えようとして口を開いたが、適切な言葉が見つからなかった。アルフレッドは、花嫁は敵ではないから対処する必要もないと自分で話を締めくくる。リュカはからかわれたと気づき、珍しく何も言い返せなかった。そのとき大聖堂の鐘が鳴り、参列者たちの話し声が静まった。
祭壇には、番判定の儀で使われた水晶球が置かれていなかった。代わりに二人が署名する婚姻証書と、互いへ渡す指輪だけが並んでいる。最高司祭オルランドは金の縁取りがある白い法衣を着て、去年と同じ杖を手にしていた。傍らには、判定の儀で腹を鳴らした若い司祭も立っていたが、この日は朝食の豆のスープを二杯飲み、念のためポケットに干し林檎を三切れ入れていた。
音楽が始まり、大聖堂の扉が開いた。父に手を取られたエレナが、白い花嫁衣装をまとって入ってくる。薄いベールの下から見える頬には朝の光が差し、胸元の銀狼と樫の刺繍が歩くたびに揺れた。強い香油は使わず、髪に挿した春霞草と、家で使っているラベンダーの石鹸の匂いだけをまとっていた。
リュカは息をすることを忘れ、祭壇の前で立ち尽くした。エレナの父が娘の手を渡すため目の前へ来ても、すぐには右手を出せなかった。父は娘を返すのなら今だという顔で一歩引きかける。アルフレッドが背後から小さく咳払いし、リュカはようやく手を差し出した。
「エレナを頼む。だが、毎週の夕食には必ず連れてくるように」
父は小声で言い、娘の手をリュカへ預けた。リュカが必ず約束すると答えると、父はそれだけでは足りないという顔をした。母が参列席から夫の袖を引き、式を止めないよう座らせる。エレナはベールの下で笑い、リュカの手へ自分の指を重ねた。
「今日は、逃げずに来てくださいましたね」
「俺が逃げると思っていたのか」
「アルフレッド様から、控え室の絨毯が一部だけ薄くなったと伺いました」
リュカが後ろを振り返ると、アルフレッドは何も話していない顔で正面を見ていた。参列席の騎士たちは肩を揺らし、老執事ベルトランも口元を手袋で隠している。リュカは戻ったら副官と話をしようと考えたが、目の前のエレナが笑っているため、すぐにどうでもよくなった。最高司祭が杖を床へ打ち、二人へ祭壇の前を向くよう促した。
「一年前、ここで神具は二人の魂が共鳴していることを示した。しかし、今日ここで結ばれる婚姻は、神具の結果によるものではない」
最高司祭は参列者を見渡し、二人が自ら望み、話し合い、互いを生涯の伴侶として選んだことを確認する。番は身体と魔力の結びつきであって、相手を所有する資格ではない。共鳴が強くても、日々の言葉と行動を怠れば、二人の生活は成り立たない。反対に、互いを尊重して選び続けるなら、運命は鎖ではなく支えになると告げた。
「リュカ・ヴァルフェン。あなたはエレナ・ローデンベルクを妻とし、病める日も健やかな日も、相手の声を聞き、ともに歩むことを誓うか」
「誓います。彼女の答えを勝手に決めず、分からないときには尋ね、意見が違うときには話し合います」
リュカの声は最初こそ少し硬かったが、エレナを見ながら続けるうちに落ち着いた。守るという言葉だけで彼女を閉じ込めず、一人で背負わず、食事を抜いて心配をかけないことまで誓う。最後の項目はベルトランが式次第へ勝手に書き足したものだったが、最高司祭はそのまま読み上げた。参列席から笑いが起こり、リュカは老執事のほうを見たものの、誓いを取り消さなかった。
「エレナ・ローデンベルク。あなたはリュカ・ヴァルフェンを夫とし、病める日も健やかな日も、相手の声を聞き、ともに歩むことを誓うか」
「誓います。何も言わずに我慢することを思いやりだと思い込まず、自分の望みもきちんと言葉にします」
エレナは、運命を理由に彼を縛らず、同時に運命を恐れて自分の思いから逃げないと続けた。帰宅が遅い日には先に食事をしても、スープは残しておくことも約束する。人参を皿の端へよけたときは、見なかったふりをせず、少なくとも一切れは食べるよう勧めると言った。リュカは小声で、二切れでも食べられると訂正した。
二人は互いの指へ結婚指輪をはめた。エレナの指輪には求婚のときと同じ樫の葉と狼が刻まれ、リュカの指輪にも同じ模様が彫られている。手が重なった瞬間、淡い黄金の光が二人の指の間へ生まれた。だが大聖堂に神具はなく、司祭も共鳴の強さを測ろうとはしなかった。
「婚姻の誓いは、今ここで一度述べれば終わるものではない。これからの生活の中で、何度でも選び直しなさい」
最高司祭が告げ、二人の婚姻成立を宣言した。大聖堂に拍手が広がり、外では鐘が鳴り始める。エレナの父は白いハンカチを取り出したが、犬の刺繍を参列者へ見られ、慌てて裏返した。母は夫の手からハンカチを取り、自分の目元へも一度当てた。
式が終わると、参列者たちは神殿の庭園へ移った。春の日差しが白い卓布へ落ち、庭には焼いた魚、鳥肉のパイ、根菜のサラダ、蜂蜜菓子、春苺を載せた小さなタルトが並んでいる。騎士団の若者たちは式前に菓子を制限された反動で皿を山盛りにし、アルフレッドからほかの客の分も残すよう注意された。若い司祭は朝食を二杯食べたにもかかわらず、干し林檎をポケットへ入れたまま苺のタルトを二つ取っていた。
「副官殿、今日は焼き菓子が一人一つとは言いませんよね」
若い騎士が尋ねると、アルフレッドは式が終わったから好きなだけ食べてよいと答えた。ただし腹を壊して明日の訓練を休めば、食べた個数だけ訓練場を走らせるという。騎士たちは皿の菓子を数え、二つだけ戻した。戻された菓子をベルトランが素早く回収し、リュカとエレナのために別の皿へ置いた。
庭園の端には、ローデンベルク家の料理人が作った豆と鶏肉の煮込みも用意されていた。一年前、番判定の儀の夜に二人が一緒に食べた料理である。大鍋には人参、蕪、豆、鶏肉がたっぷり入り、胡椒と月桂樹の香りが湯気に混じっていた。リュカの皿には料理人が気を利かせたつもりで、人参がほかの客より多く盛られている。
「これは、試されているのだろうか」
リュカは皿を見ながら尋ねた。エレナは妻として最初の役目かもしれないと答え、自分の皿から鶏肉を一切れ彼へ分けた。代わりに人参を一つ受け取ろうとしたが、リュカは渡さず、自分で口へ運ぶ。近くで見ていたアルフレッドが、隊長はこの一年で人参を七割ほど克服したと報告した。
「残り三割は、これから一緒に暮らしながらですね」
エレナが言うと、リュカは人参だけで一年を測らないでほしいと返した。二人は同じ卓で煮込みを食べ、途中でベルトランが持ってきた焼き菓子を半分に分けた。仔狼の形をした菓子は、今度は耳も尻尾も折れていない。エレナがどちらから食べるか迷っていると、リュカは頭から食べ、老執事から情緒がないと叱られた。
食事のあと、二人は人々の輪を離れ、庭園の奥にある回廊へ歩いた。白い薔薇の蕾がつき始め、石壁には春蔦の新しい葉が広がっている。噴水のそばには参列した子供たちが落とした花びらと、食べかけの苺が一つ転がっていた。エレナが拾おうとすると、庭師があとで片づけるから花嫁衣装を汚さないよう止めた。
回廊を抜けると、陽光の差し込む小さな庭へ出た。大聖堂から流れてくる音楽と人々の話し声が、石壁を隔てて柔らかく聞こえる。エレナはベールを外し、風で乱れた髪を耳へ掛けた。リュカは彼女の白い手袋へ自分の指を重ね、指輪が並ぶ様子を確かめた。
「運命が君を選んだことより、君が俺を選んでくれたことがうれしい」
リュカはエレナの額へ口づけた。彼の礼装からは、式前に持たされたオムレツ入りのパンの匂いが微かにする。エレナが胸元を見つめると、リュカは食べる機会を失ったまま、内ポケットへ入れていたことを白状した。布包みを取り出すと、パンは礼装に押されて平たくなり、チーズが端から少しはみ出していた。
「せっかくですから、ここで食べましょうか」
「結婚式の日に、冷めたオムレツのパンを花嫁へ食べさせるのか」
「今日食べなければ捨てることになります。ベルトランさんが朝から用意してくださったのでしょう?」
エレナはパンを半分に割り、形の崩れたほうを自分で取った。冷めた卵には少し固い部分があり、パンの端は内ポケットの中で乾いていた。それでも二人で食べると、朝から何も口にできなかったリュカの腹がようやく落ち着いた。エレナは白い手袋についたパン屑を払い、彼の言葉へ答えた。
「それなら、これからも毎日選びます。明日も、その次の日も」
「意見が合わない日もか」
「その日は、話し合ったあとでもう一度選びます。人参を残した日も同じです」
リュカは人参の話から離れてほしいと言ったが、エレナの手を放さなかった。二人の指が自然に絡み、淡い黄金の光が足元へ広がった。光は神殿全体を照らすほど強くなく、春蔦の葉と、食べ終えたパンを包む布と、二人の靴先を穏やかに照らした。誰かへ本物だと証明するためではなく、互いの身体と魔力が相手の存在を受け入れたときに生まれる、暮らしの中の光だった。
庭園から二人を呼ぶ声が聞こえ、父が記念の肖像画を描く時間だと手を振っていた。母は夫の礼服の釦がまた一つ外れていることに気づき、その場で直そうとしている。アルフレッドは菓子を食べすぎた騎士たちを整列させ、ベルトランは花婿と花嫁の分の煮込みを容器へ詰めていた。明日の朝、二人が食べるために侯爵邸へ持ち帰るつもりらしい。
「行こう。皆が待っている」
リュカが言うと、エレナは白い花嫁衣装の裾を片手で持ち上げた。彼は歩幅を小さくし、彼女も急がず隣へ並ぶ。運命が先に決めた道を歩かされるのではなく、相手の速さを確かめながら、今日の一歩を自分たちで選んでいく。二人は陽光の中で手をつなぎ、家族と仲間たちの待つ庭園へ、同じ歩幅で歩き始めた。




