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第4話:路地裏の野良犬と、電子の迷子 ②サイバーパンク・SF編『ジャンク街のハッカーたち』

激しい酸性雨が、巨大都市「メガロポリス」の最下層、通称ジャンク街のネオンを滲ませていた。

全身を戦闘用サイバーパーツで武装したサイボーグの男・クロウは、大企業の陰謀が隠された極秘データを懐に、激しい息を吐きながら路地裏を疾走していた。背後からは企業の手先である無人暗殺ドローンの駆動音が迫っている。


(チッ、このままじゃ拉致があかないな……)


クロウが物陰に身を潜めた、その時だった。 すぐ近くのゴミ集積所の陰から、バチバチと不穏な電磁火花が散り、子供たちの短い悲鳴が聞こえた。


覗き見ると、そこには10代半ばほどの、薄汚れたホログラフィック・ゴーグルをかけた少年少女が3人、床にへたり込んでいた。彼らの前には、企業の私設治安維持部隊コープ・セクの兵士たちが、無慈悲にエレクトロ・スタンガンを構えて立っている。


「ジャンクの密売に、企業のネットワークへの不正アクセス。野良犬どもの分際で調子に乗りすぎだ。脳を焼き切って廃棄処分にしてやる」

兵士が冷酷に引き金に指をかける。少年たちは怯え、互いに身を寄せ合って震えていた。彼らはジャンクパーツを拾い集めてサイバー空間をハッキングし、日銭を稼いでいた孤児たち――いわゆる「野良犬ハッカー」だった。


クロウの脳内の危険予測アラートが赤く点滅する。 (おいおい、今は自分の逃走ルートを確保するのが最優先だろ。巻き込まれてる暇なんてない)

しかし、恐怖に目を見開きながらも、必死にキーボードを叩いて仲間の前に立ちはだかろうとするリーダー格の少年の姿が、かつて孤児だった自分自身の過去と重なった。


「……ハッ、俺も焼きが回ったな」


クロウは自嘲気味に呟くと、駆動モーターを限界まで唸らせてコンクリートの地面を蹴り飛ばした。


「おい、そこ退きな。そいつらは俺の獲物だ」

「誰だ――ッ!?」

兵士が振り向く間もなく、クロウの超振動ブレードが兵士の銃を真っ二つに両断した。間髪入れずに強化脚の回し蹴りを叩き込み、重武装の兵士を壁まで吹き飛ばす。


「ギャウ!」 追ってきた暗殺ドローンが迫る。クロウは背中で少年たちを庇いながら、内蔵されたガトリング砲を乱射してドローンを次々とスクラップに変えていった。だが、企業の増援シグナルが周囲に鳴り響く。もう時間がない。


クロウは背後の少年たちを乱暴に引っ張り上げると、近くの地下ダストシュートのハッチを蹴り開けた。

「ここに飛び込め! ここからなら下水処理層へ逃げられる!」

「あ、あんたは……!? なんで僕たちを……」 リーダーの少年が、ゴーグルの奥の目を丸くしてクロウを見上げる。


「いいから行け! ガキがこんなところで脳みそ焼かれてんじゃねえ。……強くなりたきゃ、電子の海の泳ぎ方を叩き込みな」


クロウは少年たちの背中を押し、ダストシュートへ滑り落とした。そして迫り来る追手の光を睨みつけ、自らは囮となるために反対方向の闇へと駆け出していく。

これが、のちに世界を震撼させる「伝説のサイボーグ」と、電子の海の底で牙を研ぎ続けた「神童ハッカーたち」の、泥にまみれた出会いだった。


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