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【IOF_27.log】トメのスウェットスーツ

「分かりました。城取主任、留置場からトメのスウェットスーツを一着出してきてください。サイズは一番小さいもので」

「了解しました」

 フクハラ様から用件を言いつかった「シロトリシュニン」様が、なにやら嬉しそうなお顔で席を離れていかれました。

「ローレル様、更衣室にご案内します。普段は当番責任者、まあ私のような立場の者が仮眠に使っている部屋があります。そちらでお召し替えをしてください」

 フクハラ様に連れられて更衣室に移ります。もちろんマーガレットも一緒です。

「本当に小部屋といった趣ですのね」

 更衣室に入った私は、その狭さに驚きを禁じ得ませんでした。

「そうですね。人が一人寝られるだけの広さで作られていますから、本当に狭いです。あ、この段になっているところの手前で履物を脱いで上がってください」

 お部屋の中で靴を脱ぐというのは斬新ですわ。


「代理、お待たせしました」

「ありがとうございます。受け取ります」

 フクハラ様がシロトリシュニン様からスウェットスーツを受け取りました。もこもことした生地で肌触りはよさそうに見えます。

「先ほど写真で見ていただいた通り、上着とズボンに分かれています。慣れない服で違和感があると思いますが、ご容赦ください。脱いだドレスは、この袋に入れてください。お屋敷までお運びします。私は部屋の前で待っていますから、何かあれば呼んでください」

 マーガレットにスウェットスーツを渡したフクハラ様は、更衣室を出て静かに扉をお閉めになりました。扉の開閉にフクハラ様の育ちの良さのようなものを感じますわ。


 マーガレット、お願いするわ。

「仰せのままに」

 靴を脱いで部屋に上がったマーガレットがドレスを脱がせてくれました。

「お嬢様、コルセットはいかがなさいますか」

 この際だから脱いでしまおうかしら。スウェットスーツはたっぷりとしたデザインなのでウェストを絞る必要もございませんでしょう。

「かしこまりました。それでは失礼して」

 コルセットを外してスウェットスーツを着用いたしました。

 こ、これは楽ちんでございます!

 体の締め付けがなく、動きを邪魔いたしません。

 リリヤ様があのだらしないお顔になるのも無理からぬことですわ。

 ひょっとして、わたくしもだらしない顔になっているかしら?

「多少緩んでいらっしゃいますが許容範囲かと」

 マーガレットの許しが出たので問題ないと判断いたしますわ。


 上着の胸とズボンのお尻部分に○留という聖なる紋様が描かれております。


 だらしなく見せながら、実は神聖な法衣だったりするのでしょうか。

 そうであればリリヤ様が好んでお召しになっているのも納得ですわ。


 着替えが済むと、フクハラ様の案内で奥の部屋に通され、豪華なソファを勧められました。腰を下ろした瞬間、体が深く沈み込み驚きましたわ。ここから立ち上がれるのか少々心配になるくらいですの。

 わたくしたちの正面には、リリヤ様とフクハラ様が並んでお座りになっております。神々しいことこの上なしでございます。

「お昼ごはんもまだ召し上がっていらっしゃらないと思います。いま、ここではガスも使えないため、たいしたおもてなしもできませんが、非常食の備蓄からカップラーメンをご提供いたします。お口に合うとよいのですが」

 フクハラ様がおっしゃったタイミングで若い女性の方がトレイに取っ手のない大き目なカップのようなものを4個乗せて部屋に入って参りました。

「あの、フクハラ様。カップラーメンとガスという言葉が分かりかねるのですが……」

 マーガレット、いい質問よ! 褒めてつかわします。

「恐縮です」

 マーガレットが無表情ながらどやっている気配を漂わせておりますわ。ちょろいですわね。


「いまお持ちしたのがカップラーメンです。味付きの麺を油で揚げて水分を抜き、カップに入れて長期保存ができるようにしたものです。食べるときに熱湯を注いで麺を元の状態に戻します。そろそろ食べられる時間ですね」

 フクハラ様がカップを覆っていた薄い蓋を取り除きます。

 ほわっと白い湯気が立ち上り、なんともいえない香ばしい香りが漂います。急におなかが空いて参りました。

「私とリリヤさんは箸というこの2本の細い棒を使って食べます。お二人には難しいと思いますのでフォークをご用意しました。濃い味が底の方にたまっていますので、よく混ぜてから召し上がってください。混ぜるときは、カップを手で支えて中のスープをこぼさないように気を付けてください。あと、熱いのでやけどに注意です」

 そう言うとフクハラ様は「ハシ」をお使いになり、上手にメンなるものを混ぜて見せてくださいました。リリヤ様もハシの使い方がとてもお上手だとお見受けいたします。

 リリヤ様が、ハシでメンを取り上げお顔の前に掲げたかと思いきや、お口から息を吹きかけていらっしゃいます。あれは、熱いものを冷ます際の動作に違いありません。

 そこから、おもむろにメンをお口にお運びになり、すごい勢いですすられました。


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