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守護獣様は苦労性  作者: 丸メガネ
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 俺たちの戦いはこれからだ! 的な打ち切り雰囲気で城に帰ったわけなんだが、思ってた通り――というよりも、思ってた以上に大騒ぎになっていた。


 まずは王城に帰る途中の城下町。

 俺が本来の姿である狐になって城下の上を通過したことにより人目に触れてしまい、滅多に見られない俺を見れたということで喜ぶ者や騒ぐ者、果てには崇める者まで現れてしまって、お祭り騒ぎの乱痴気騒ぎまでに発展してしまったのだ。


 これは完全に俺の不注意だ。気が急いていてそこまで気が回らなかった。

 まあでも、これはこれで娯楽(サプライズ)として認識されたし経済効果も見込めるので特に問題ではなかった。


 問題は城に着いてから。

 王太子であるアルバートが魔獣の発見された『享楽の森』に行ったと知られてしまっていて、城内はてんやわんやのてんてこ舞い。

 すぐに応援を差し向けようとしていたのだが、なにせ第一、第二騎士団でも仕留めきれなかった魔獣だ。中途半端な者を送り込んでも意味がない。なので誰を出すかで揉めに揉めていた。

 ここで王妃が、守護獣である俺が既に向かったと伝えてくれれば簡単だったのだが……。

 あのアマ、伝えるどころか宰相と結託して、そのことを黙っていやがった。

 なんでも『緊急時における対応や反応を見るため』とか大義名分を掲げてたが、あの二人のことだ、絶対に楽しんでいやがった。

 報告に来た近衛の口も封じてたことからその本気度がうかがえる。


 おかげで魔獣を仕留めきれなかった騎士団が責任を感じてしまい、密かに決死隊を編成してあわやという事態にまでなっていた。

 そこに俺が問題児四人と魔獣を連れて帰ってきたものだから…………もう、ね。おかげで大変だったよ。

 狐である俺は鶴のような一声は出せないし、守護獣である俺は表立って口を出すこともできない。

 結局は事情説明に時間を取られてしまい、何度も同じ話をする羽目になってしまった。


 それから魔獣を≪緑の帝国≫に送ったり、王妃、宰相、問題児四人を正座させての説教をしたりで大忙しだ。

 説教の時に、王妃と宰相がやけに嬉しそうなのが腹立たしかった。なんで説教されて喜んでんだよ。

 それに加えてもう一つ気がかりなのが、問題児の一人でもあるリトワール侯爵家令嬢であるルナフォード嬢だ。

 なんだかルナの視線が、俺の口元や毛皮を熱心に見つめ、なんていうか、こう、獲物を狙うような妖しい目つきになっていたのだ。

 王妃や宰相のようにならないで欲しいと切に願う。


 そんなこんなで全部の処理が終わったのが日も暮れて夜の帳が落ちた時分。城下のお祭り状態が収まる頃だった。


 なんかもう、ほんと疲れた。


 こういう妻や家臣の対処は王がやれよマジで。俺をいいように使うなよ。

 魔獣の口上を今度は俺が言っちゃうよ?

 俺があくせく働いているのをニヤニヤしながら眺めていたときは殺意が沸いたね。いやマジで。

 今度のいたずらは覚悟しておけよ。

 お前の寝室に王妃とは別の、女物の香水を振りまいてやる。

 せいぜい嫉妬深い王妃に問い詰めらるんだな。


「んん~~~~! やっぱり城よりも城下の方が気楽だなぁ~」


 そんな魔獣の一件から三日が過ぎ、事後始末を含めて落ち着きを取り戻した今日この頃。

 働き者のコン吉さんは城下町へと散策に出ているのだった。


「おっ、コンさんじゃねーか」「コンさーん!」「あらコンさん、お久しぶりね」「元気そうでなによりだ」

「皆さんもお変わりなく。元気そうで安心しました」


 ちなみに今日の装いは珍しく女性型。旅人コンラリアンが守護獣コン吉だとアルとルナにバレてしまったので、時折営業している魔法薬店を営む美人亭主コンマトリエールとして繰り出していた。

 この姿はなぜか王が嫌がるのであまりしないのだが、今日は久しぶりに魔法薬店を開けようと思っているので特別だ。


 その理由は単純にして明解。

 ぶっちゃけ金がない。細々と貯金していたお小遣いが尽きてしまったのだ。

 まあ最近は飲みに行ったりして散財したから仕方がないのだが、こうしてお小遣いが足りなくなったときは王に催促などはせず、自分で遊ぶ金を稼いだりしているのだ。


 俺はなんて健気な狐だろう。

 童話であった月のウサギと比べても勝るとも劣らない健気さだ。


「コンさん、コンさん! どうだいこの油揚げ。今日仕入れたばかりで新鮮だよ!」「いやいやウチの油揚げにしときなよ! ウチのは他のよりも活きがいいよ!」「新しい油揚げを使ったデザートがあるんだけどお一つどうだい?」


「ごめんなさい今日はあまり持ち合わせがなくて……。また今度寄らせてもらいますね」


「そんなの気にしないで良いって!」「そうだよ、お金がないならコンさんは特別だ。タダで持ってきな!」「可憐だ……」


 この姿になるのは大抵お金がないときだからね。女性姿だとやたらと店の亭主がサービスしてくれるので重宝している。


 ……わざわざ男の人が店番をしているところに足が向くのは偶然だ。いやほんと。


 男を誑し込むのは狐の役目ともいえるし、ちょこっと好意を物品でもらってるだけなので影響は少ないだろう。

 誑かしているわけではないから別にいいよね? ね?


 男を手玉に取れる小悪魔。俺はそんな狐なのだ。


「こんなに沢山……ありがとうございます。代わりと言っては何なんですけど、後でお店を開けるので、よかったら皆さんも来てくださいね。いっぱいサービスしますから」


 抜かりのない俺は慎ましやかにお礼言いながらついでに呼び込みもしておく。

 そこに微笑みを添えてやれば男たちは顔を真っ赤にさせて何度も頷いてくれる。どうやら今日も稼げそうだ。


「ふふっ、約束ですよ? 皆さんが来てくれるのを待っていますからね?」


「行きます行きます絶対に行きます!」「店をたたんでも行くので待っててください!」「可憐だ……」


 まるで亮介が増えたみたいだ。ちょっと苦笑してしまう。

 そんな苦笑にもだらしなく顔を緩めて反応するのだから、男って単純だなと思ってしまう。


「では皆さん、また後ほど」


 そろそろ後ろで奥様方が鬼の形相で睨んでいるのに気づいた方がいいよ?

 狡猾な俺は恨まれないように、奥様方にも頭を下げて愛想を振りまいておく。

 こういうのはやり過ぎてしまうと女性を敵に回してしまうので要注意だ。俺はケンカを売りたいわけでも反感を買いたいわけでもない。どちらかというと媚びを売って人柄を買われたい。


 異性を手玉に取るときは用法容量を守って正しく魅了しようね。狐さんとの約束だ。



今日は私の誕生日。

でも一人なのはなんででしょう(´・ω・`)?

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