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彼が噂の情報部  作者: くるなし頼
第一章 『情報部』という存在
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現れた先輩





再び寮に着くと、寮の正面入り口には行かず、建物の裏にまわる。


そこには、建物外に備え付けられた避難用階段がある。

俺はいつもそこから自室に向かう。



4階まで上がり、扉の窓から建物内を覗く。

俺の部屋は避難用の階段のすぐ近くにある。そのため、この窓から覗けば、俺の部屋の前に怪しい人物がいないか調べられる。


「あれ、情報が早いな…」


思わず独り言を言ってしまった。


部屋の前には香藤部長と、情報部員の1人、『白池和攻(しらいけかずせ)』先輩ががいた。


扉を開けると、すぐに香藤部長と白池先輩がこちらに気付く。


「奏寺、生徒会から呼び出されたらしいな?」

「ええ。…日頃の行いのせいでしょうが」


部長と俺の会話を聞いて、白池先輩が暖かい笑いをした。


『白池和攻』。身長180㎝、見た目は優しく爽やかな、2年生の男子生徒。基本的にとても穏やかな人で、女子生徒に人気。

ただし、気をつけなければいけないことが…。



しまった。またやってしまった。


溢れ出す情報に蓋をして、2人の先輩を部屋に招き入れる。



俺の部屋で情報部のミーティングが行われるのはいつものことだ。


なぜなら部活動の性質上、情報部員のメンバーは知られていない方が良い。

そのため、俺以外の情報部員は、自分が情報部ということを完璧に伏せている。


逆に俺は依頼の受付係をしていることもあり、校内では情報部としてちょっとした有名人だ。


そんな俺とこそこそと話している所を誰かに見られたら、あいつも情報部なのかと疑われてしまう。

だから、寮の部屋で隠れて話し合うことになった。



冷蔵庫にあるペットボトルの緑茶を取り出しているとき、白池先輩が声をかけてきた。


「奏寺、まだ癖が治らないみたいだね。僕を見て色んな情報を、頭の中にばらまいていたみたいだけど」


ぎくり。


やはり情報部の観察力を甘く見てはいけない。

俺は2人に緑茶を渡しながら苦笑いした。


「あはは…これは、なかなか治らないっすね」

「いったいどんな情報を並べたのやら」


俺は咳払いをした。


「身長185㎝の男子生徒。常に不機嫌そうで偉そうな情報部の部長で、特技はク…」

「おい、こら。なぜそこで俺の情報を流す?」


香藤部長が、持っていたペンケースを俺の顔面めがけて投げてきた。

想定内の出来事なので、涼しい顔でペンケースをキャッチする。


「それで奏寺、どんな依頼がきた?」


香藤部長が真剣に聞いてきた。


本当ならもっと部長で遊びたかったが、仕方ない。

今回の依頼について説明した。




説明を聞き終えた白池先輩が、怪しい笑いをした。


「他校の情報収集…。これは、潜入捜査が必要だね」


香藤部長が白池先輩を睨む。


「嬉しそうにするな、白池」


情報部員には、それぞれ得意としている情報の収集方法がある。



白池先輩は潜入捜査が、一番得意だと言っている。

実際に部員の中で、潜入捜査を行っている回数が多いのは白池先輩だ。



しかし正直な話、白池先輩に潜入捜査の才能があるわけではない。

白池先輩の秀でている才能は、他にある。



「白池先輩、お願いですから『遊び』すぎないで下さいよ?」


白池先輩がこちらを見て、微笑んだ。



全く、なんて良い笑顔なんだか。



俺は心の中で、何かを諦めるような深い溜め息をついた。



「奏寺、心配はいらないよ。絶対にバレないようにするから」


いやいやいや。


ばれる、ばれないではなくて。


遊ばれては困るのだ。



…白池先輩の素晴らしい才能、それは情報操作能力。


潜入していることがバレてしまいそう、などといった非常時には、持ち合わせている情報をあらゆる方法で使いこなし、その場を大混乱させる。


そして、どうやら先輩はその大混乱を見るのが好きらしい。遊び半分でそれを行う。



一度、校内で白池先輩がそれを行った事があった。





─────確かあれは先月。


月に一度、体育館で行われる全校集会でのことだ。



その全校集会の数日前、あるクラスの学級委員長から、とある問題児の情報収集の依頼がきた。


情報部で話し合った結果、全校集会の時に白池先輩がそのクラスに潜入し、色々と調べることに決まる。



しかし、その全校集会の時間に、この学校と仲の悪い第三高校の生徒が、密かにここの敷地に侵入していた。


全校集会が行われている体育館にいなかった白池先輩は、偶然にもこの他校の生徒を発見できた。



だが、問題はこれからだ。



他校の生徒の侵入を本校の生徒に知らせたら、白池先輩は全校集会に出ていなかったことを咎められる。


さらには、本来居るべきではないこの教室にいたことから、情報部だと疑われてしまう可能性も無くはない。



だからと言って、他校の生徒の侵入を許すこともできない。



(じゃあ…やっちゃおうか)



きっとこの時の白池先輩は、嬉しそうな笑顔を浮かべていたのだろう。


最低でも、絶対に嫌だとは思ってないはずた。



(一応、奏寺にはメール送っとこうか)



メールの送信完了を確認した白池先輩は、ついに動き出した。

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