言わなければいけないこと
本当に亀を通り越してカタツムリ更新に
なっているのに見ていただいてありがとうございます
車に揺られながら外の景色を見て
ため息をつく
車の中の沈黙を破るよう
私はイチに話し掛けた
「何歳?」
私と同じように窓の外を見ていたイチは
今頃か?という微妙な顔をしてこちらを見てくる
「18…いや、19か…?」
いや、私に聞かれても分からないけど
まず驚いた
だってそんなに若いとは思わなかったもの
もっと20代かと思ってた
まぁ、とりあえず
目線で運転席にいる遠山に
どうすれば良いの、と訴える
身体年齢16歳特権の
「オトナに訴えるの技」発動
バックミラーで私の視線を感じ取った遠山は
イチに
「覚えてらっしゃらないのですか?」
と、聞いてくれた
うん、シンプルイズベスト
イチは一瞬こちらを見て笑って
「忘れた」
と一言言ったっきり口を閉じた
訳ありな男だとは思ったが
今の話題はダメだったのだろうか
……めんどくさい
若い方にしとこう
その方が後々都合が良いし
「じゃあ、あなたの名前はイチ
歳は18で良いわね?」
一応疑問形にしといたが
ほぼ確認のようになってしまった
「あぁ、それでいい」
よし、本人にオッケーをもらった事だし
やっと一通り聞けたい事が聞けた
…誕生日とか血液型は後で聞けばいいし、
なんであそこにいたとか
名字とか、地雷になるような事は
出来るだけ聞きたくないから
これぐらいしかないのよね
再び訪れた沈黙のなか
「この車は今私の家に向かっているの」
ポツリと言う
「へーそうか」
…思ったよりも薄い反応だ
窓の方を向いているイチを何故か
こちらに向かせたくて
さらに言葉を重ねる
「…家に行ったら父に会わなければならないわ」
これでどうだ
「だろうな」
え
「私の父よ、本当に分かってる?」
あの父に会うって知ったとたん
私の婚約者になるはずだった人達は
顔を真っ青にして逃げていったのに…
さすがイチだわ
私が惚れただけの男ね
妙にキラキラした目でイチを見ていたら
何かを感じ取ったようで
「…そんなにヤバい人なのか」
と笑った
え←2回目
「あぁ、イチの名前は聞いたけど
私の名前は言っていなかったわね」
大失態だわ…
大切な事を言っていなかったとは
しかし
イチもなんで聞いてくれなかったのかしら
「私の名前は石田アーシャ
歳は17よ…」
やっとこちらに目を向けてけれた
イチが石田…と呟く
少し思い出すように遠くを見た後に
「石田…あの無表情なのに
ユーモアに溢れてる人か」
と言った
「え、父と話した事があるの!?」
父は周りの人に裏で
冷人とか血が青いとか冷酷無慈悲とか
言われてるけど
本当は家族大好きな優しくてユーモアに溢れる
良い人だ
もちろん厳しい所もあるが
尊敬出来る人なのに…
表情筋のせいで誤解を受けている
だから
言っていて心が痛むけれど
本来の父を知るのは相当仲が良い人だけだ
実はイチ良い所の御曹司…?
「まぁとりあえず
その父に会いに行くから
心の準備をしとくのよ」
父に怖がらず話が出来る人材って貴重だわ
「わかった」
返事をしたイチを見て思う
確実に引きずり込まなければ、と
家の大きな門はすぐそこに見えてきた
結局、攻略対象者はずいぶんと先になってしまった…