笑顔
――――戦うしかないのさ、君にはそれしかないんだから
俺は戦いたいと思って戦ったことはない、と思う。敵がいるから。戦う力があったから。戦う理由があったから。でも戦わなくても済むなら戦いなんてしたくない。
もう一度考えてみたんだ。戦う意味を。
俺は何のために戦うんだろう。
――――イリア・アーデルト、君はこの世界が好きかい?
どうしてあいつの言動がこんなに脳裏に焼き付けられているのだろう。
「ねえ、聞いてる?」
「え」
ハッとして顔を上げる。ユウナはパスタをくるくる巻きながら頬杖をしている。不機嫌そうだ。多分、パスタが美味しいとか、そういう話をしていたんだろうけど、ほとんど聞いていなかった。俺が頼んだトマトパスタも、機械的に口に運んでいるだけで、あまり味を楽しんでいない。
さっきの怪しいやつが頭から離れなくて、目の前のことを蔑ろにしていたみたいだ。
「ああ、聞いてるよ」
「じゃあ、どっちなの?」
「何が?」
「やっぱり、聞いてないんじゃない。朝はご飯かパンかって」
「私はご飯」
「お。同じだね、私もご飯。イリアは?」
「俺は、、」
「どうしたのイリア?」
ユウナは機嫌悪そうに続ける。流石にこれ以上は良くないと思って、俺は自分の気持ちを整理しながら、答えた。
「……実は、ここに来る前に、変なやつにあってさ」
「何それ」
「詩人だとか言ってたけど、とにかくおかしな奴で」
「ふーん」
「不吉なことばっか言ってさ。根拠もないから無視すればいいんだけど」
「ほうほう」
「でも何か気になるっていうか、引っかかるっていうか」
「なるほどー」
俺が真剣に話せば話すほど、ユウナの返事は適当になっていく。さっきまでの俺への当てつけだろう。だとしたら反論は出来ないが、ちょっと…
「……露骨だな」
「何が?」
「いや、いいけど」
「イリアの真似よ」
「そんなアホっぽくはなかっただろ」
「えーそんなことぉないよぉー」
な・ん・だその喋り方は。お前には猫なで声は似合いません!
「ったく」
こっちは、結構悩んでたんだけどな。茶化されると微妙にイラッとする。お陰で、気ぃ逸れたけど。
ちょっと強めにパスタにフォークを突き刺し、救い上げる。……めっちゃ美味いな。。半分くらいを適当に食べてしまったことを後悔した。美味しさに驚いて顔を上げるとユウナと目が合った。ユウナは小首をかしげて不思議そうに俺のことを見てきた。
「………」
「嬉しそう」
「俺が?」
「ううん、ユウナが」
「え、私?」
「イリアが元気になったから?」
「え」
「ん?」
思わずユウナを見てしまう。
「………」
目が合うや否や顔を伏せるユウナ。白状してるみたいなもんだけどな、それ。
「違うから」
「……おう」
そこからは何となく気まずくて、話が弾まなかったけど、俺のせいなんだろうか。




