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とりあえず、1日は経ったと思う。
薄暗くてよくわかんないんだけど・・・体内時計だけでは少々無理な感じだ。
見張りの人(ドラゴン亜人型=顔はドラゴン、身体は人間)が教えてくれたんだけど、城に来たセイランが私のことを解放してやって欲しいと嘆願してくれたみたいだ。
思えば、勝手に城から出てきた私が悪かった。
セイランと一緒に来ていれば状況は変わったかもしれないのに。
まあ、ドラゴンの王は聞く耳持たずってことで私への待遇は変わっていない。
岩から染み出る水を舐めるなんていう、一種サバイバルなこともしつつ、命を繫げている私。
捕まって2日目、そろそろ固形の物が食べたいな。
思い出すのは、ドラゴンの王様。
目なんか血走っちゃってさ。
何か正常じゃない気配がプンプン。
この国で、いや、この世界で何が起こっているのかなんて興味はなかったんだけど、がっつり、巻き込まれてるよね・・・。
私の中いるはずのエルアは今絶賛不貞腐れ中。
閉じ込められている状態であること、私が何もしなくていい、とりあえず落ち着け。
そう言ったことが重なって、少々不機嫌。
中にいるなぁってのは、分かるけど、声掛けにもうなずいている程度。
目を閉じるとちっちゃいエルアが腕組んで目を閉じているのが見える。
何してんのって尋ねても答えてくれないし・・・。
ドラゴン族の姫様の裁量でこの後のことが決まるらしい私だけど、今のところ何もされてない。
岩牢に戻っただけだ。
彼等が言うには、黒の魔法使いの力を宿した私を害することで、彼の本体に何らかの影響が出るかもしれないから様子を見ているとのことだった。
だったら、連れてきた時の私への所業はどう説明するんだ!と食ってかかる気力もなく・・・。
2日目の夜に初めて出た食事っぽいもの。
喰えと言われたから食べ物だ!!と勢い良く噛み付いたら、骨が砕けるかと思うほどに硬かった。
ドラゴン用か?牙なんてないぞ?
見張りの人が私の様子に鼻で笑う。
くそーっ!
私は、そのバカ硬いものを岩牢にぶつけて、砕けた破片を醒めたスープらしき液体に浸して、ある程度柔らかくなるのを待って食べることにした。
なんて、ひもじいのかしら。
これ、本当にドラゴン用?
何の味もしないけど・・・そう思ってたら、見張りの人が、これは、ドラゴンの民が家畜として買っているソウリュウという動物に与える簡易フードだと教えてくれた。
食べて毒になるものではないとは言われたけどね!
ソウリュウってのを見たことないから分からないけど、ドラゴンの民にとって、何か必要なものを生み出す動物らしい。
ちなみに、人はそのソウリュウから齎されたものには、まず口をつけないらしい。
貧しくて、本当に何も食べるものがない人だけが、非常食的に食べるのだそうで・・・。
かと言って、ドラゴン達にとっても御馳走ではないらしい。
何かを作る時の素材的ものを生み出すんだと。
よーわからんけど、今はこれが私に与えられたものなんだと納得しながらそれを食べた。
つづく




